おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

優駿 ORACION

2023-05-10 07:29:25 | 映画
「ゆ」は2020/6/4の「誘拐」から「誘拐報道」「勇気ある追跡」「友罪」「ユージュアル・サスペクツ」「夕凪の街 桜の国」「夕陽のガンマン」「雪に願うこと」「夢」「夢売るふたり」「EUREKA ユリイカ」「許されざる者」「許されざる者」「ゆれる」「湯を沸かすほどの熱い愛」と2021/12/22に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」、12/23に「夢二」を掲載していますので、今回は少ないです。

「優駿 ORACION」 1988年 日本


監督 杉田成道
出演 斉藤由貴 緒形直人 吉岡秀隆 加賀まりこ 吉行和子 林美智子
   平幹二朗 石坂浩二 石橋凌 下絛正巳 田中邦衛 三木のり平
   緒形拳 仲代達矢

ストーリー
北海道・静内の牧場主・渡海千造と息子・博正の夢は、名馬をつくりダービーを制覇することだった。
そして伝説の名馬ゴドルフィンの血をひく仔馬オラシオンが無事産まれた。
和具工業社長の平八郎は二つの悩みを抱えていた。
一つは会社の危機で、もう一つは娘の久美子も知らない腹違いの弟・誠の存在だった。
しかも腎不全で、父親の腎臓移植が必要なほど重病だった。
和具はオラシオンを3千万円で買い、夢を託すことにした。
一方、久美子はオラシオンの馬主となり、弟と知らされた誠の見舞いに通った。
やがてオラシオンは博正の手を離れ、大牧場へと移され本格的な調教を受けることとなる。
和具平八郎、久美子、誠、渡海父子、それぞれの夢がオラシオンに託されていた。
そしてオラシオンは見事デビュー戦で優勝。
誠はこの晴れ姿を見られずに死に和具は会社を買収され、渡海も胃ガンでダービー直前に息を引きとった。
ケガの後遺症が心配だったオラシオンだが、ダービーで優勝、和具は久美子、博正と共に、牧場を始めることにした。


寸評
今では全く競馬中継を見なくなったし馬券を購入することもなくなってしまったが、その昔は競馬場に足を運び場外馬券場にもよく通ったものだ。
僕は心情買いと呼ばれる買い方をしていて、購入する馬券は大体が関西馬だった。
その頃は関西馬が総じて弱く、したがって僕はあまり勝てなかった。
競馬ファンですらそのように入れ込んでしまうのだから、生産者や馬主の思い入れはなおさらだと思う。
この作品ではそんな関係者の思い入れが上手く描けていたと思う。
現在のサラブレッドを辿っていくと、全てがダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンという3頭の種牡馬に行きつくと言われている。
オラシオンはゴドルフィンアラビアンの血を引いていることが語られ、競馬の長い歴史のロマンも感じさせる。

オラシオンが東京優駿(日本ダービー)を制覇するまでの物語が描かれるが、オラシオンを中心に置きながら人間世界の話がリンクして進展していく構成になっている。
先ず描かれるのが親子の別れで、オラシオンは母親の元を離れて大きな牧場に引き取られていく。
牧場内で別々の厩舎に入れられ、別れの辛さを2頭の馬が表現する。
一方、和具の愛人の子供が生命維持のための腎臓移植を待ちわびているが、和具は今自分の体を他人にくれてやる暇はないと移植を拒否する。
オラシオンは3戦無傷で期待されるが、4戦目で怪我をしてしまい2000メートルで争われる皐月賞には出走できなくなってしまう。
皐月賞に出走できないエピソードは描かれていないが、ここで血統的に2000メートルの皐月賞に賭けていたことを描いておけば、無理と思われる2400メートルのダービー出場を決断する盛り上がりが出たのではと思う。
ここからはオラシオンの再起と誠の回復、及び和具工業の存続がリンクしていくのだが描き方は少し弱い。
したがって全ての人々がオラシオンのダービー制覇に向かって行かざるを得ない状況が淡白である。
和具工業、渡海千造、誠の処理の仕方は実にあっさりとしたものになってしまっている。

話は端折っている所もあるが北海道の牧場シーンは美しい。
特に雪原の中の牧場や厩舎の様子は趣があるし、そのなかでの調教や放牧は美しい光景で、自然の持つ力の偉大さを知らされる。
競走馬を育てる人々と馬とのかかわりは、それなりに描けていると思うが、反面付随する事柄は大雑把だ。
ヒロイン斉藤由貴が溌溂としていて大きな瞳が印象的で好感が持てるのだが、コンパで酔いつぶれた女の子があんなに元気に階段を駆け上がれるものか?
あんなに長い間の交流がありながら、誠は久美子の氏素性を全く知らないで疑問を持たなかったのか?
和具の愛人であった誠の母親と久美子は何故病室で一度も顔を合わせることがなかったのか?
映画は中ではリアリティが欲しい。
オラシオンがダービー制覇をして1着でゴールするシーンは迫力に欠けるが、それでも競馬ファンが一応の納得をきたせるドラマにはなっていたと思う。
映画の世界では動物もまた人間を凌駕する力を持っていることを示した。


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