おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

北陸代理戦争

2021-11-19 07:31:57 | 映画
「北陸代理戦争」 1977年 日本


監督 深作欣二
出演 松方弘樹 野川由美子 地井武男
   高橋洋子 伊吹吾郎 矢吹二朗
   木谷邦臣 西村晃 ハナ肇

ストーリー
北陸富安組組長・安本(西村晃)は、若頭・川田(松方弘樹)に手をやいていた。
川田は、安本が競艇場の権利をゆずるという約束を守らないため、安本をリンチ。
二人の仲は決定的なものになる。
安本は、川田相手では勝目がないと考え、弟分・万谷(ハナ肇)に相談。
万谷は、仲介役として大阪浅田組の斬り込み遂長・金井組金井八郎(千葉真一)に相談。
金井はかねてより、北陸を支配下に入れようとねらっていたので、安本対川田の仲介役という名目で北陸に乗り出すことにする。
ある日、川田は万谷の闇打ちに合う。
重傷を負った川田は、きく(野川由美子)の実家で傷のてあてをする。
今は金井組の支配下となってしまった北陸を川田は、ひそかに取り戻そうと決心する。
川田は傷が治ってから万谷に復讐をするが、そのため刑務所に入り竹井義光(伊吹吾郎)と懇意になる。
出所後、川田は意表をついて大阪・浅田組に援助を依頼した。
金井は、その行動があまりにもすごく、浅田組は金井に手を焼いていたのだ。
そこで、浅田組は川田に援助することを約束する。
川田は、浅田組の援助のおかげで、金井組の連中を北陸から追い出すことに成功。
しかし、こんどは浅田組系の岡野組が幅をきかすようになった。
川田はそこで、今は落目の万谷と安本に、地元を北陸のやくざの手にもどすことを提案する。
そして、川田は兄貴分でもある岡野組に挑戦状を叩きつけるという結果になった。
かくして、なりふりかまわぬ北陸人特有のしぶとさの前に、大阪やくざは撤退を余儀なくされるのだった。


寸評
「仁義なき戦い 北陸代理戦争」としても良いような内容である。
例によって「この作品はフィクションであり、登場する人物及び組織名は架空のものである」との表示がなされるが、「仁義なき戦い」がそうであったように、この物語にもモデルは存在しているとの事である。
ラストで「俗に北陸三県の気質を称して越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師と言うが、この三者に共通しているのは生きるためにはなりふり構わず、手段を選ばぬ特有のしぶとさである」とのナレーションが流れるのだが、作品はまさに北陸を舞台に繰り広げられる文字通りの仁義を無視した抗争劇を描いている。
冒頭で松方弘樹が親分に当たる西村晃を雪が降り積もる厳寒の土地に生き埋めにして脅迫している。
西村晃は弟分のハナ肇に助けを求めるが、松方弘樹からすればハナ肇はオジキ筋に当たる。
しかしそんなことには関係なく力によるぶつかり合いが演じられていくことになる。
ハナ肇の万谷は「仁義なき戦い」における金子信雄の山守を髣髴させる人物である。
西村晃の安本も同類の人物で、いい加減と思われる男が二人も登場するのは、舞台を北陸としているための演出によるものだろうか。
大阪や名古屋の組が北陸進出を目論んで圧力をかけているのは実社会の関係と同様だ。
都会の大資本が田舎の零細企業を飲み込んでいく姿と酷似している。
その中で安本や万谷はあっちに付き、こっちに付きと態度を豹変させながら生き残りを図っている。
入り乱れての関係は彼らだけではない。
野川由美子のきく、高橋洋子の信子、地井武男の隆士という三兄弟も骨肉を争う関係である。
男たちが盃に象徴される義理や筋目にこだわっているのに対し、女たちは感情に支配されてうごめいている。
姉のきくは川田といい仲であり、きくは川田の為に体を張っているが、川田はある事件をきっかけに妹の信子と結婚することになる。
川田が敵対している金井の盃をもらった隆士は、川田殺しを命じられたために妹の信子を利用して川田をおびき寄せ、その時信子は暴行を受けるという無節操な世界を展開するのだが、この姉弟姉妹の存在は面白い。

川田は孤軍奮闘で福井の土地を守るために、大阪の浅田組や金井組、名古屋の竜ケ崎一家の間を適当な言葉で泳ぎ回っている。
金井組を追い出したかと思ったら、同じ浅田組傘下の岡野組が進出してくる。
うまみがあると思えばたかってくるのがヤクザだ。
川田は「その人を倒さんと男になれん」という北陸ヤクザの鉄則を実践していくのだが、この作品における松方弘樹の熱演ぶりが際立っている。
この映画の凄いところは、川田のモデルとされている川内弘組長が映画のクランクイン当日に上部の組から破門を受け、さらに撮影が終了した約1ヶ月半後に喫茶店で4人の男によって襲撃され射殺されていることだ。
映画はフィクションかもしれないが、現実とシンクロしていたことになる。
川田は盃をかわした岡野と敵対することになり、「勝てない迄も、刺し違えることは出来ます、虫ケラにも、五分の意地って言いますからね」と宣戦布告ともとれる言葉を吐いている。
その結果が現実の社会で三国事件となるのだから、深作は怖くてもう実録路線映画を撮れなくなったのではないかと思う。


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