おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路

2023-12-02 08:42:57 | 映画
「次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路」 1953年 日本


監督 マキノ雅弘
出演 小堀明男 河津清三郎 森繁久彌 田崎潤
   小泉博 久慈あさみ 若山セツ子 森健二

ストーリー
秋祭りに賑わう清水港では寿々屋のお千ちゃん(豊島美智子)が嫁に行くと聞いて、桶屋の鬼吉(田崎潤)と関東綱五郎(森健二)がやけ酒を飲んでいる。
次郎長の家の奥座敷では、投げ節お仲(久慈あさみ)に首ったけの森の石森(森繁久彌)や三五郎(小泉博)たちが次郎長とお蝶のなれそめ話に浮かれ、その勢いで表の賑やかな踊りの輪に加わった。
しかし江尻の大熊(澤村國太郎)が難しい顔でやってきて、奥座敷で次郎長(小堀明男)を囲んで、大政(河津清三郎)等が何やら真剣に相談することに。
江尻の大熊は甲州にある大熊の賭場が、前々から猿屋の勘助(小堀誠)から侵害されているというのだ。
猿屋の勘助には黒駒勝蔵の後ろ盾もあり、この勝負は分の悪いものだった。
勘助が話の分かる男か見極めるため、先ずお仲が物見の役を買って甲州へ旅立った。
お仲からは何日たっても便りが来ず、石松と三五郎はしきりと気を揉む。
次郎長は旅人大野の鶴吉(緒方燐作)から、お仲は捕えられ勘助は彼女を囮にして清水一家の殴込みを待ち構えているとの情報を得る。
次郎長はこの大野の鶴吉を案内役に甲州乗り込みの腹を決めた。
鬼吉と綱五郎はお千の結婚式の駕篭を担ぐ約束を果し、猿屋の勘助を目指し次郎長一家は甲州路を急ぐ。
やがて甲州路で待ち受けた勘助一家の子分たちと乱戦になり、最初は苦戦していた次郎長一家だが、駆け付けた江尻の大熊と合流し勘助の元を目指す。
石松はお仲の囲われている土蔵目掛けて突進するが、暗闇より振り下ろされた刃で左眼をやられた。
しかし豚松(加東大介)の働きで土蔵は破られ、お仲は救われ勘助は斬られた。
兇状持ちとなった次郎長一家は江尻の大熊と別れ、お蝶が発熱した為に子分達の作った情の山駕篭に次郎長とお蝶が乗り、一行は投げ節お仲とも別れ、景気よく秋空の彼方へと突っ走っていった。


寸評
秋祭りの賑わいを背景に、お千ちゃんを巡る鬼吉と綱五郎の失恋、次郎長とお蝶のなれそめ話など、軽妙なシーンや、ほのぼのとした人情話を盛り込んで導入部を飾っていく。
大部屋俳優のエキストラを大勢使っての唄や踊りがあって、昔懐かしい映画の作りを堪能させてくれる。
落語における枕のような話で、これが長いと作品を軽く感じてしまう。
本作ではそろそろ限界かなと思ったところで江尻の大熊が現れ本筋に戻っているので緊張感を呼び戻せた。
ここからは出入り話になっていき面白さが倍増する。
この喧嘩は分が悪いので話し合いに持ち込めるかどうか、相手が話し合いに応じるようなのかを投げ節お仲が確かめに行くことになる。
しかし彼女の活動は一向に描かれない。
後日、大野の鶴吉によって語られるが、ツボ振りをしているだけで、話し合いができるかどうかの見当をつけるシーンがないのは話を端折り過ぎだと思う。
大野の鶴吉がお仲の正体を暴いておきながら、次郎長にその旨を知らせに行っている行動も不可解のままだ。
ストーリーを結構盛り込んでいるので、このシリーズにおいては少々戸惑うことが多い。

お仲が捕まったと聞き、助けに行くところからはテンポアップして歯切れがよい。
三々五々に参集し甲州路を急ぐが、島のカッパに三度笠の博打打ち一行が連なって歩く様は絵になる。
次郎長一家を見張る敵方が出てきて、さらに林の中に大勢の敵方が待ち構えているのが分かる。
両陣営の斬り合いが始まるかと思えば、勘助方は白い粉で目つぶし攻撃を仕掛けてくる。
上から横からその目つぶしが飛んできて次郎長方は苦戦である。
そこへ江尻の大熊の一行が助っ人に駆けつけ形勢は逆転していき、やがて勘助の土間へとなだれ込んでいく。
このあたりのカットの繋ぎは上手いと思う。
この出入りで森の石松は左目を斬られてしまう。
左目に傷を負った石松のイメージしか持ち合わせていなかったが、石松はこの出入りでそうなったのだと知った。
このシリーを通じて言えることだが、果し合いの結果がどうなったのかの結論を描くことは少ない。
ここでも勘助が斬られて次郎長方の勝利に終わるのだが、勘助が斬られる場面はない。
勘助を斬ったとの次郎長が書いた張り紙があることでその事実を知るといった具合である。

事を終えた一行が連なっていると目立ってしまうということで、次郎長一家と江尻の大熊一家は途中で別れ、大熊の妹でもある恋女房のお蝶は大熊の勧めで次郎長と一緒に行くことになる。
そして例の「わっしょい、わっしょい」が聞こえてくるのだが、彼等は大きな籠らしきものを担いでいる。
ここで投げ節お仲と別れるのだが、中から籠に乗った次郎長とお蝶が顔を見せる。
お蝶が病気になったからそうしているらしいのだが、その説明シーンがないのでなぜ二人が籠に乗っているのか分からない。
それでも彼等はあっけらかんと去っていく。
何処までも明るい子分たちで、この明るさがこの作品をリラックスしてみることが出来る要因となっている。


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