おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯

2021-10-17 07:22:26 | 映画
「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」 1973年 アメリカ


監督 サム・ペキンパー
出演 ジェームズ・コバーン
   クリス・クリストファーソン
   ジェイソン・ロバーズ
   ジャック・イーラム
   リチャード・ジャッケル

ストーリー
無法者の楽園、ニュー・メキシコ・テリトリーのフォート・サムナーでビリー・ザ・キッドは、仲間たちと陽気な日々を送っていたが、彼の前に友人でもあるバット・ギャレットがひょっこり現われ、これからシェリフになると告げた。
さらにギャレットは、親友ビリーに土地の有力者たちの意向を伝え、「5日以内にここを去れ」と警告した。
しかし、ビリーが彼の警告を無視したのでギャレットはビリーを逮捕し留置所にぶち込んだ。
縛り首が8日後に迫り、ギャレットが所用で町をでていた時、ビリーは拳銃を手に入れ、留守を預かるシェリフ代理2人を射ち殺して、群衆の見守る中を悠然と町から出て行った。
町に戻ったギャレットは、内心管轄外であるメキシコへ逃げてほしいと願いつつアラモサ・ビルを新たな代理に命じて後を追った。
しかし、ビリーはフォート・サムナーに戻って歓迎されていて、見知らぬ男のバートに挑戦され彼やその仲間を射殺した時、ビリーに加勢した若者エイリアスと友達になり、また美しい娘マリアを知った。
一方、ギャレットは無法者のブラック・ハリスからビリーに関する情報を掴もうとして老保安官ベイカーと夫人を使うが、ベイカーを死なせてしまう。
その頃ビリーは、故郷のメキシコに帰る老人のパコから、身の安全のため国境を越えるようすすめられ、ついに無法者の楽園を去る決心をした。
ビリーはその途中、パコとその家族がチザムの部下たちに襲われている所に行き合い、暴漢どもを射殺したが、パコは、間もなく息を引き取った。
ビリーは、弱い者いじめをするチザムや、ウォーレス知事に激しい怒りを覚え、再びフォート・サムナーに舞い戻り、ギャレットはポーやシェリフのキップ・マッキニーに出合い、フォート・サムナーに向かった。


寸評
邦題は「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」となっているが、やはり原題の「PAT GARRETT AND BILLY THE KID」通り、パット・ギャレットとビリーの物語である。
サム・ペキンパーは1969年に「ワィルドバンチ」を撮っていて、僕たちの世代の者にとってはこの作品のインパクトが非常に大きかった監督である。
射殺場面に「ワイルドバンチ」を髣髴させる演出を見せているが、本作は随分と詩情にあふれた男たちのバラードと言える仕上がりになっている。
その詩情を盛り上げているのがエイリアスとして出演もしているボブ・ディランの歌声で、僕には歌手としては初めてノーベル文学賞を授与されたボブ・ディランが出ている映画ということで記憶に残る作品となっている。
そしてボブ・ディランは1972年にリリースされたガロの「学生街の喫茶店」で ”学生で賑やかなこの店の 片隅で聞いていたボブ・ディラン” と歌われたことで脳裏に残る歌手でもある。
喫茶店に入り浸っていた学生時代に流行った歌のひとつが「学生街の喫茶店」だった。

開拓者たちが移植してきた西部に近代化の波が押し寄せてきて、資本家たちが幅を利かせるようになってきている社会に取り残される者が出てくる。
パットもビリーもそんな取り残され組の一人なのだが、パットは資本家に雇われる形で無法者から逆の立場の保安官に転身している。
一方のビリーはかつては資本家であるチザムの手下になっていたこともあるが、相変わらずの無法者として気ままな生活を送っている若者だ。
彼等の過去や性格もあって、無法者のビリーが悪で、それを追うパット・ギャレットは善という単純図式ではないことと、自然の残る西部を捕らえたショットや、無法者が巣くう村の描写などが全体の雰囲気を醸し出していく。
パットもビリーも無法者らしく、相手を倒すやりかたは正々堂々とした決闘ではない。
ビリーとアラモサ・ビルの決闘場面などはその最たるものだ。
決闘をするハメになった二人はお互いに「他に方法はないのか?」と尋ね合うが命を懸けるしかないと悟る。
決闘のしきたり通り背中合わせになって10を数えて撃ち合うのだが、ここで両者とも卑怯な手を使う。
それなのにビリーに嫌悪感が湧かないのは、彼の死者をいたわる振る舞いに詩情が漂うからだろう。
最も詩情を感じさせたのは老保安官のベイカーが撃たれる場面だ。
ベイカーの奥さんは男勝りでたくましく、まるで夫人が保安官で、ベイカーが保安官助手のような関係だ。
三人で無法者を追い詰めているが、ベイカーが撃たれてしまう。
撃たれたベイカーを見て夫人は駆け寄ろうとする。
ベイカーはヨタヨタと歩いていき、夕陽を見ながら妻に見守られて死を覚悟する。
ここで流れるのがボブ・ディランの歌う「天国の扉」だ。
本作のハイライトと言ってもいい名シーンとなっている。

「あいつは根っからの西部の男だ」と言ったり、ビリーの指を切り落とそうとした知事の代理人を蹴り上げたりして、パットはビリーへの友情と、滅びゆく西部開拓時代への郷愁を示している。
子供から石を投げられ振り返ることなく去っていくパットの姿は、名作「ワイルドバンチ」に通じるものがあった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿