おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

かもめ食堂

2019-03-26 10:55:30 | 映画
「かもめ食堂」 2005年 日本


監督 荻上直子
出演 小林聡美 片桐はいり もたいまさこ
   ヤルッコ・ニエミ タリア・マルクス
   マルック・ペルトラ

ストーリー
夏のある日、ヘルシンキの街角に日本人女性のサチエ(小林聡美 )が店主の小さな食堂がオープンした。
献立はシンプルで美味しいものを、と考えるサチエは、メインメニューをおにぎりにした。
客はなかなかやってこないが、それでもサチエは毎日食器をぴかぴかに磨き、夕方になるとプールで泳ぎ、家に帰ると食事を作る。
そんなある日、ついに初めてのお客さんの青年トンミ(ヤルッコ・ニエミ)がやってきた。
その日の夕方、サチエは書店のカフェで、難しい顔をして『ムーミン谷の夏まつり』を読んでいる日本人女性ミドリ(片桐はいり )に声をかける。
フィンランドは初めてというミドリの話に何かを感じたサチエは、自分の家に泊まるようすすめる。
そして、ミドリはかもめ食堂を手伝い始める。
そんな頃、またひとり、訳ありげな女性、マサコ(もたいまさこ)がヘルシンキのヴァンター空港に降り立った。
スーツケースが運ばれてこないために、毎日空港へ確認に行かなければいけないマサコもまた、かもめ食堂を手伝うようになる。
サチエの「かもめ食堂」は次第に人気が出はじめ、日々は穏やかに過ぎてゆくのだった。


寸評
フィンランドの観光映画ではないけれど、それでもフィンランドを訪ねてみたくなるような映画だ。
フィンランドといえば、森と湖の国というイメージがあるが、その国を舞台設定に選んだのがいい。
森と湖という大自然を描いたシーンはほとんどないが、空気だけでいかにものんびりした感じがしてくる映画だ。
これが日本だとそうはいかなかったのではないかと思うくらい雰囲気作りに成功している。
公私において自分の周りに起きているわずらわしさと言うか、生きていく為の必要事項というのか、そんなものから開放された時間を感じさせてくれた。

それぞれにちょっとしたエピソードを持つ人々が登場するが、大きな事件を起こすわけでもなく、文字通りちょっとした出来事を起こす人々として通り過ぎていく。
その平々凡々な時間の中で凛として生きるサチエさんにすごく共感してしまう。
なくしてしまった大切なものを取り戻せるような生き方なのかもしれない。

島田珠代(吉本所属)と片岡鶴太郎を足して2で割ったような片桐はいりのキャスティングが絶妙だ。
「もしも明日から私がいなくなれば淋しいですか?やっぱり淋しくないんだ・・・」とか「最後の晩餐には必ず呼んでくださいよ・・・」などというセリフが彼女の持つ雰囲気にマッチしていて面白かった。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこという3人の個性が、スローで、コミカルで、飄々としていて絶妙のハーモニーを奏でていた。
三人の日本人女性には何か心に秘めたものがありそうなのだが、あえてそれを深く追求することはしていない。
「この町に来る人は、みんな癒されて元気になるんだヨ」というところに凝縮している。
このあたりの持っていき方が見事だ。
そのひとことで納得させられてしまうのだ。

前半は店がガラガラということで、料理もあまり登場せずにコーヒーばかりなのだが、後半になるにしたがって、美味しそうな料理がたくさん登場してくる。
スゴイと叫びたくなる食べたことのない豪華な料理ではなく、おにぎりに代表されるような手短な料理なので、余計にその味が想像できて美味しそうに見える。
おにぎりが繁盛メニューになって欲しかったけど、舞台がフィンランドだからチョット無理だったのかなあ・・・。

冗長なシーンが多く、何てことない映画なのに、映画館を出る時はすごく満足感と幸せ感をもたらせてくれた。
ある種の癒し系映画で、こじんまりとした映画だったけど、映画館で見てよかったと感じた映画だった。
僕はこのような雰囲気の映画は初めてで、その作風をとても新鮮に感じた。
その新鮮さも作品の評価をあげた作品だった。
この作品が持っていた独特の間と呼べるものは、この監督の作風なのかもしれないなと感じた。
ラストシーンの「いらっしゃいませ!」と叫ぶ小林聡美さんの声の張りと表情に「役者さんってすごいなー」と感心してしまった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿