おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ソウルの春

2024-09-01 07:18:07 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2020/3/1は「普通の人々」で、以下「舟を編む」「不毛地帯」「プライベート・ライアン」「フラガール」「ブラック・スワン」「ブラッド・ダイヤモンド」「ブラッド・ワーク」「プラトーン」「ブリキの太鼓」と続きました。

「ソウルの春」 2023年 韓国


監督 キム・ソンス
出演 ファン・ジョンミン チョン・ウソン イ・ソンミン
   パク・ヘジュン キム・ソンギュン チョン・マンシク
   チョン・ヘイン イ・ジュニョク

ストーリー
1979年10月26日、大統領暗殺という衝撃的な事件が発生し、国中に動揺が広がる中、次第に民主化を期待する声が高まっていく。
ところが、合同捜査本部長に就任し捜査を指揮するチョン・ドゥグァン保安司令官は、民主化によって軍の影響力が低下することを恐れた陸軍内の秘密組織“ハナ会”の将校たちを掌握し、自ら新たな独裁者となるべく、同年12月12日、ついにクーデターを決行し、大統領暗殺関与の嫌疑をかけて参謀総長を拉致する。
これに対し、大統領暗殺による政治的混乱の中、首都警備司令官に就任した高潔な軍人イ・テシンは部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況の中、チョン・ドゥグァンと反乱軍の暴走からソウルを死守するために必死の戦いを繰り広げる。
イ・テシンは反乱鎮圧の現場指揮にあたるが、後方にいる軍首脳陣の方針は混乱。
ドゥグァンの狡猾さを警戒する憲兵監キム・ジュニョプは強硬策を主張するが、参謀次長らに却下される。
そのあいだに反乱軍はハナ会のコネクションを利用し、北に対する警備にいた空挺旅団をソウルに呼び寄せる。
旅団が市内に入れば内戦勃発は必至である。
テシンらは、首都が火の海となるのを防ぐことができるのか・・・。


寸評
映画は事実に基づいたフィクションとなっているが、韓国の人たちは登場人物が一体誰なのか推測するのは容易なことだろう。
チョン・ドゥグァンが全斗煥なのは明らかだと思うし、盧泰愚も推測することが出来るのではないかと思う。
政治の世界や権力闘争の中身は複雑だと思うが、ここでは善悪が単純図式で描かれる。
すなわち、欲望をむき出して暴走するチョン・ドゥグァンが悪で、無欲で軍人としての使命感にあふれる信念を貫く男イ・テシンを善とする描き方である。
一方は観客から激しい嫌悪を呼び、一方は観客から共感を得るという立場なのだが、チョン・ドゥグァンを演じたファン・ジョンミンの迫力がすごくてこの映画を引っ張っている。
チョン・ドゥグァンは「人間というものは強い者に導かれたいと願っている」と言い、「失敗すれば反逆者、成功すれば革命だ」とひるむ仲間を叱咤する。
彼の狂気とも思えるこの信念の前に、反乱軍の中枢にいる者たちは何とも頼りない。
中にはバカではないかと思われる指導者もいるし、軍部をまとめるべき国防大臣などは逃げ惑うばかりでバカの代表者の一人となっている。
これが完全フィクションならばイ・テシンの大活躍により反乱軍は鎮圧され、チョン・ドゥグァンは殺されるのだろうが、歴史はそうはさせない。
善は滅び悪が栄えるとでも言いたくなるような結末を迎える。
これこそが韓国が抱える負の現代史の一面なのだろう。
権力掌握に成功して乱舞する者たちの姿は、どう見ても無能力者の集まりにしか見えなかった。
プラハの春、ソウルの春、どちらも軍事圧力によって民主化はならなかった。
映画「ソウルの春」はフィクションを交えながらも、過去の負の歴史を若者に伝えようとしている作品に思えた。
韓国の若者たちはどう感じたのだろう。

韓国大統領は信じられないことに、親族が逮捕・訴追されたのみで本人は難を逃れた金泳三・金大中を除いても、現在まで8人の大統領が逮捕されたり自殺したりして不幸な末路を辿っている。
服役中に現職大統領の特赦で出獄した元大統領がほとんどだが、韓国の異常とも思える状況を生み出しているのは、韓国大統領の独裁性が高くチェック機能が働いていないことや、儒教思想による身内贔屓が不正蓄財を生み出しているのだろう。
韓国の若者たちはどう感じているのだろう。


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