おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

娘・妻・母

2021-12-15 09:08:13 | 映画
「ま」行の残りはあまり思いつきません。
「む」から「も」まで連続して記載します。

「娘・妻・母」 1960年 日本


監督 成瀬巳喜男
出演 三益愛子 原節子 森雅之 高峰秀子
   宝田明 団令子 草笛光子 小泉博
   淡路恵子 仲代達矢 杉村春子
   太刀川寛 中北千枝子 笠智衆

ストーリー
坂西家は東京、山の手の代々木上原あたりの住宅街にある。
一家には、60歳になる母親あき(三益愛子)を中心に、会社では部長の長男勇一郎(森雅之)と妻の和子(高峰秀子)、その子の義郎(松岡高史)、それにブドウ酒会社に勤める末娘の春子(団令子)が住んでいる。
また商家に嫁に行った長女の早苗(原節子)が、夫、姑との仲がうまくいかず遊びに来ていた。
早苗はこの里帰り中事故で夫に死なれ、毎月五千円の生活費を入れて実家に住みつくことになった。
勇一郎は、家を抵当にした金を和子の叔父にあたる鉄本(加東大介)に融資し、その利息を生活の足しにしていたが、更に50万円を申しこまれ、その金の用立てを早苗に頼んだところ、彼女は承諾した。
ある日、早苗、春子に、次男の礼二(宝田明)と妻の美枝(淡路恵子)らは甲府のブドウ園に遊んだ。
案内は醸造技師の黒木(仲代達矢)で、彼は早苗に好意以上のものを感じた。
東京へ戻って、早苗は母の還暦祝の品物を買いに銀座へ出たとき、学友の菊(中北千枝子)に誘われて入ったフルーツパーラーで、彼女の知り合いの五条(上原謙)を紹介された。
還暦祝いの日、黒木から早苗に電話があり、二人は上野の美術館に行った。
帰り、黒木は早苗に接吻した。
勇一郎は金を貸した鉄本が行方をくらましたのを知り、坂西家は家族会議を開いた。
母親にも内証で家を抵当に入れた勇一郎は弟妹に責められた。
礼二も春子も分配金が貰えないので、老後の母を誰が面倒をみるかという話にまで進んだ。
早苗はズバズバいう弟妹たちが悲しかった。
彼女はあきに、母を引きとっても結婚したいと申しこんできた五条の許へ再婚する気持を打ちあけた。
早苗は黒木を呼びだし別れたのだが、しかしあきは養老院へ入院手続きをしていた・・・。


寸評
坂西家の5人の兄弟姉妹は、長男が森雅之で母親の三益愛子の面倒をみていて、その妻が高峰秀子である。
長女の原節子は商家に嫁いでいったが上手くいかず実家に戻っている。
次女の草笛光子は教師の小泉博と結婚していて、自分も幼稚園の保母して共働きだが、家庭は裕福でなく義母の杉村春子が一人息子を可愛がり何かと口うるさく、夫婦は別居を望んでいる。
次男の宝田明は姉さん女房の淡路恵子が営む喫茶店の2階でスタジオを開くカメラマンである。
三女の団令子は食品会社に勤めるドライな女性で太刀川寛という恋人がいる。
高峰秀子は叔父の 加東大介に世話になっていたので、彼の借金の依頼を断れないでいる。
夫と死別した原節子には上原謙や仲代達矢が想いを寄せる。
当時の東宝のオールスターキャストと言っても良い布陣である。

キャスティングに興味が行くが、描かれている内容も時代を超えた普遍的な問題で考えさせられる。
家族の状況は時代を感じさせるが、それぞれの家庭が抱えている問題は現代にも通じるものがある。
160坪の家だから今ではそこそこの広さを持った家と言えるが、その家を長男の森雅之が引き継いでいる。
彼は当然のように母親と同居し面倒を見ている。
妻の高峰秀子は帰るい所もない身で森雅之と結婚しているが、姑と小姑に囲まれながらも何とかやっている。
長女の原節子は大きな商家に嫁いだが、何十年も務めている店員に見下されていて、先方の家族とは上手くいっていないようである。
原節子はある年齢の人たちには評価されている女優だが、僕は役の幅の狭さを感じてあまり評価していない。
彼女には商家に嫁いでその店をテキパキと切り盛りしていくやり手の女性と言うイメージがわかない。
その意味でこの作品での長女の早苗と言う役は適役ではあった。
次女の草笛光子は狭い家での杉村春子との同居に辟易している。
僕も母一人子一人の家庭で育ったから、そんな母親との同居によるいざこざは身をもって体験したから、草笛光子夫婦の悩みはよくわかる。
姉さん女房の淡路恵子は宝田明が店の女の子のおしりを触ったことで怒り爆発して家出してしまう。
面白いのは彼女が容姿の衰えで夫が若い女性に気が行ってしまうのではないかと心配し、ここが踏ん張りどころと意地を張っている姿で、この様なエピソードを入れ込んだ松山善三の脚本もよくできている。
末っ子の団令子は家を売れば自分にいくら入るかを真っ先に計算し、母親の身の振り方には一番冷たいが、結婚を控えている彼女にとっては財産分けは死活問題でもある。
兄弟は他人の始まりと言うが、金が絡むとそれぞれの欲が出てくるものでもある。
原節子は母親との同居条件を基準に再婚相手を選んだのだろうか。
女性の生きる道は結婚しかないと言うのは当時の風潮だったのだろう。
高峰秀子は義母を引き取っても良いと言っているが、いつかは訪れる親の最後の面倒はいつの時代でもなくならない問題である。
いいのは結論を明示せず、その後を観客の判断に任せていることだ。
「娘・妻・母」のタイトルが示すように、森雅之、宝田昭、加藤大介、小泉博などの男性も登場するが、この作品はあくまでも女性を描いた作品であった。


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