おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ふたり

2023-02-22 08:10:38 | 映画
「ふたり」 1991年 日本


監督 大林宣彦
出演 石田ひかり 中嶋朋子 富司純子 岸部一徳 尾美としのり
   増田恵子 柴山智加 中江有里 島崎和歌子 入江若葉
   吉行和子 竹中直人 奈美悦子 ベンガル 大前均 藤田弓子

ストーリー
ドジでのろまな夢見る14歳の実加(石田ひかり)は、優しい両親と自分とは正反対のしっかり者の姉・千津子(中嶋朋子)に囲まれて幸せな日々を送っていた。
ところがある朝、学校へ行く途中、忘れ物を取りに戻ろうとした千津子は、突然動き出したトラックの下敷きになって死んでしまい、その事故のショックで母・治子(富司純子)はノイローゼ気味になってしまう。
実加はけなげにも姉の代わりを演じようと、ひとり明るく振る舞うが、ある日、変質者(佳孝頭師)に襲われかけた実加は、死んだ千津子(中嶋朋子)の幽霊に助けられる。
その日以来、実加が難関にぶつかると千津子が現れ、“ふたり”で次々と難関を突破してゆく。
そして千津子に見守られながら、日に日に美しく素敵な少女に成長していく実加は、第九のコンサート会場で、姉の知り合いだったという青年・智也(尾美としのり)に出会い、ほのかな想いを抱くようになる。
そんな実加をからかう為に、実加のノートのコピーが智也の従妹でもある前野万里子(中江有里)によってばらまかれる。
落ち込む実加を勇気づけてくれたのは親友の真子(柴山智加)だった。
やがて16歳になった実加は、千津子と同じ高校へ進学。
演劇部へ入部し、千津子が生前演じたミュージカルの主役に抜てきされるが、そんな実加をやっかむ中西敬子(島崎和歌子)のいたずら電話により、治子は倒れて再び入院する。
それと同時に北海道へ単身赴任していた父・雄一(岸部一徳)の浮気が発覚する。
崩れかける家族の絆を必死に守ろうとする実加と、それを見守る千津子。
そして、実加がそんな事態を乗り越えた時、それは千津子との別れの時でもあった。
こうして自立していく実加は、この出来事を本に書き残そうと心に決めるのだった。


寸評
尾道三部作と言われた「転校生」、「時をかける少女」、「さびしんぼう」に続く新・尾道三部作の第一作目で、この後「あした」、「あの、夏の日 とんでろ じいちゃん」と続く。
亡くなった人が愛する人の為に亡霊となって助ける話は映画の一つのモチーフとなっていて、形を変えて何作も撮られている。
愛する相手は恋人だったりすることが多いが、ここではしっかり者だった姉が、ちょっと頼りない妹を助けるという関係となっている。
姉妹を演じる中嶋朋子とこれが主演第一作という石田ひかりは瑞々しい感じを出していると思う。
姉の千津子は秀才のしっかり者だが、皆から過度の期待をされていることにプレッシャーを感じていて逃げ出したい気持ちを持っていたのかもしれない。
それを匂わすシーンもあるのだがそれ以上は描かれていない。
亡霊となった姉が妹を守るのは暴漢に襲われた時ぐらいで、励ましたり相談相手になったりする事の方が多い。
ピアノの演奏会やマラソン大会、高校に行ってからの演劇部でのことなどもそちらの方である。
妹の実加は甘えん坊で、姉の千津子を頼ってばかりなのだが、二人の姉妹愛は見ていても微笑ましい。
しかし、実加が危険にさらされるような出来事が起き、亡霊の姉によって助けられる場面は用意されていない。
少し物足りなさを感じる要因だろう。

僕が一番緊張して、一番見所があったと感じているのは、父親である岸部一徳の愛人として増田恵子が訪ねてきているシーンだ。
母親の富司純子は夫の浮気をすでに感づいている。
妻は、二人が愛し合っているなら別れてもいいのだが、病弱な自分は夫の助けが必要なのだと訴えて、相手を責めることをせず逆に詫びる。
当事者の岸部一徳の方は終始無言のままである。
修羅場のシーンだが、どうも緊張感に欠ける演出になってしまっている。
夫と愛人の生活ぶりが全く描かれていないので、二人の愛の度合いが伝わってこない為だと思うが、大林はファンタジーの世界を壊したくなかったのかもしれない。
描けばドロドロの、夫を巡る妻と愛人によるきわめて現実的な世界が展開されてしまうだろう。
この映画はあくまでもファンタジー映画なのだ。
富司純子の母親は面白い設定だったが、もう少し描き込んでも良かったような気がする。

尾美としのりをめぐる中江有里の嫉妬とか、演劇の主演をめぐる島崎和歌子の嫉妬など、思春期の女生徒にはありそうな女の子の嫉妬が描かれている。
中江有里には家業の倒産や、自殺未遂事件まで用意されている。
中学生から高校生のころの話だが、時として思春期を感じさせ、時として大人びた世界を感じさせる。
家業を継ぐ覚悟を決めている真子の喪服姿などはすっかり大人だ。
成長する主人公を描いて終わるのは予定通りだが、実加が何事もなかったように事故現場を通り過ぎて、映像がモノトーンに変わっていくラストはよかった。


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