おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シルミド

2024-05-22 07:07:36 | 映画
「シルミド」 2004年 韓国


監督 カン・ウソク           
出演 ソル・ギョング アン・ソンギ ホ・ジュノ    チョン・ジェヨン

ストーリー
1968年4月、北朝鮮の特殊部隊による、ソウルの大統領府襲撃があと一歩の所で失敗したのをきっかけに、”極秘”の特殊部隊が、シルミドという無人島で結成された。
彼らに課せられた任務はただ一つ、北朝鮮の最高指導者、キム・イルソン暗殺!
厳しい3年間の訓練を経て、彼らが北朝鮮への潜入を目指してシルミドを出発した直後、南北の対立が緩和、作戦が中止されるばかりか、一転、彼らは抹殺の対象になる。
誰にも知られず、名前すら叫べず、国に捨てられた男たちはシルミドを脱出、韓国正規軍と警察の向ける無数の銃口が待ち構えているのを承知で、ジャックしたバスに乗り込みソウルへ向かった・・・


寸評
そんなに古くはないベールに包まれていた歴史的事実の映画化としてはまとまっていると思う。
僕が知らなかった1971年8月23日に発生したシルミド事件の背景などがコンパクトに説明されていて、理解するのに苦労しなかった。
でもこれがフィクションによる映画だとすれば少し物足りない感じがした。
教官及び指導兵と、元囚人達であった訓練兵との心の交流が、何でもって出来上がっていったのかが解らない。
つらい訓練をする側と、される側の信頼がどうして出来上がって行ったのかの説明は希薄だったと思う。
死刑囚を含む囚人達が善人面している人が多いのはちょっと不自然だ。

韓国の朴大統領暗殺計画や、その報復としての金日成暗殺計画などは、最近の北朝鮮による拉致家族の実態や、金正日暗殺目的説もある列車爆発事故が、やけに現実味を感じさせて、歴史的事実を描いているとはいえ、この映画により一層のリアリティを感じさせる。
朝鮮半島で起きている事、あるいは起きていたかもしれない事や起き様としていることに対する恐怖を考えさせる。
と同時にわが国はそのようなことに対して、あまりにも無関心で無警戒でお人好し国民ばかりなのではと感じさせた。
やはり拉致事件は許してはいけないし、政治の道具に使われてもいけないのだ。

映画としては、事実もそうだったのだろうけれど、彼等の抹殺のされ方(共産ゲリラとして国家に殺される)が悲惨さを物語っていて盛り上がる。
下士官に渡される拳銃は自決用だと前半部で語られるが、その通り教官は自決し、彼らもまた手榴弾で自決する。
そのことで彼らが下っ端兵士ではなく、崇高な気持ちを持った軍人になっていたことを語っていたと思う。
だからこの映画は指導兵と訓練兵のシルミド事件の当事者に捧げられたのだと思う。