おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

清須会議

2022-06-07 08:02:29 | 映画
「清須会議」 2013年 日本


監督 三谷幸喜
出演 役所広司 大泉洋 小日向文世 佐藤浩市
   妻夫木聡 浅野忠信 寺島進 でんでん
   松山ケンイチ 伊勢谷友介 鈴木京香
   中谷美紀 剛力彩芽 中村勘九郎
   天海祐希 西田敏行

ストーリー
天正10年(1582年)。本能寺の変で、一代の英雄・織田信長(篠井英介)が明智光秀(浅野和之)に討たれた。
長男の忠信(二代目中村勘太郎 )も討ち死にし、にわかに織田家の後継争いが勃発する。
跡を継ぐのは誰か……。
後見に名乗りをあげたのは、筆頭家老・柴田勝家(役所広司)と後の豊臣秀吉・羽柴秀吉(大泉洋)であった。
勝家は、武勇に秀で聡明で勇敢な信長の三男・信孝(坂東巳之助)を、秀吉は、信長の次男で大うつけ者と噂される信雄(妻夫木聡)を、それぞれ信長の後継者として推す。
勝家、秀吉がともに思いを寄せる信長の妹・お市様(鈴木京香)は、最愛の息子を死なせた秀吉への恨みから勝家に肩入れ。
一方、秀吉は、軍師・黒田官兵衛(寺島進)の策で、信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方に付け、秀吉の妻・寧(中谷美紀)の内助の功もあり、家臣たちの心を掴んでいくのだった。
そんな中、織田家の跡継ぎ問題と領地配分を議題に“清須会議”が開かれる。
互いに一歩も引かぬまま、いよいよ決戦の清須会議へと臨む勝家と秀吉。
重臣の一人である滝川一益(阿南健治)は戦場から急いで戻るが官兵衛の策略もあって遅れてしまう。
会議に出席したのは、勝家、秀吉に加え、勝家の盟友で参謀的存在の丹波長秀(小日向文世)、立場を曖昧にして強い方に付こうと画策する池田恒興(佐藤浩市)の4人だった。
様々な駆け引きの中で繰り広げられる一進一退の頭脳戦。
騙し騙され、取り巻く全ての人々の思惑が猛烈に絡み合っていき、日本史上初めて合議によって歴史が動いたとされる、同会議に参加した人々の複雑な心情が明らかになる・・・。


寸評
三谷幸喜は喜劇を追求している監督であるが、時折自己満足的な強引な笑いを求めるような演出も見られる監督だが、今回は技巧に走ることもなく本筋から外れた笑いもないので成功の部類に入る作品になっていた。
まず題材の清洲会議そのものがユニークな出来事で、それ自体が面白い出来事だ。
諸説ある中から面白い方を選択してまとめあげている。
例えば滝川一益は、直前の神流川の戦いでの敗戦を口実に参加を拒まれたとの説もあるが、関東地方へ出陣中で欠席した方を採用している。
映画ではさらに飛躍して、急いでかけ戻ってくるが黒田官兵衛の策略で間に合わなかったことにしていた。
信長と共に死んだ長男の信忠の妻は史実通り前田玄以らによって清須に落ち延びるが、信忠夫人の出自も諸説ある中で一番面白いと思われる武田信玄の娘・松姫説をとっている。
絶世の美女だったとも言われているお市の方は、周りが羨むほど仲睦まじかったという夫の浅井長政を責め滅ぼされ、長男の万福丸は捕われて殺害されているので秀吉を恨んでいたのはあながち嘘ではあるまい。
お市の方は柴田勝家と再婚するが、それは織田信孝の仲介によるとされてきたが、近年は羽柴秀吉の仲介を伺わせる書状から、秀吉の仲介であった説が有力となっていると聞くが、映画の中では秀吉憎しから、お一の方から勝家に言い寄っていた。
歴史を知らなくても楽しめる作品だが、歴史を知っていた方が楽しめる作品であることは確かだ。

中心になるのは柴田勝家と羽柴秀吉の対立なのだが、そこに丹羽長秀や池田恒興、信長の妹お市などが絡んでスッタモンダの大騒ぎをやらかす。
粗野な勝家、狡猾な秀吉、復讐に執念を燃やすお市、優柔不断な恒興など登場人物のキャラを明確にしているのも分かりやすくていい。、
演じるのが実力者揃い だし、端役にまで大物役者が登場する豪華版なので、それを見るだけでも楽しい。
バカな織田信雄を演じる妻夫木聡などは登場場面も多いが、女忍者の天海祐希や北条方の武将の西田敏行、森蘭丸の染谷将太、後に三法師の守役となる堀秀政の松山ケンイチ などはわずかのシーンだ。

大泉洋の秀吉はキャラとしてあれぐらいの大芝居をやっても不思議ではないが、役所の柴田勝家は面白い。
甕割柴田と言われた勝家だから豪快な武将をイメージするが、ここでの勝家はお市恋しさだけの粗野で軽薄な男を面白おかしく演じている。「らっきょう」が度々登場して笑わせる。
「この歳になって夢中になれるものが見つかった」としみじみと語らせたりもしているが、お市の部屋をのぞき込む滑稽な姿や、足の裏で丹羽長秀を突っついたりするシーンがあって、案外と戦国の世に生きた彼等はそのような仕草をしていたのかもしれない。
秀吉に取り込まれてしまう勝家の軽薄さを愉快に演じる役所を見ていると、何でもやっちゃう人なんだなあと感心する。
剛力彩芽の松姫の野望エピソードは面白かった。武田のちを絶やさないという遠謀を巡らすが、仮に彼女が武田の血を引いていたとしても、成人した三法師は関ヶ原で西軍に与して高野山へ追放されて生涯を閉じているから、結局武田の血は途絶えてしまうことになる。
結果を知って見る歴史は面白い。この作品は歴史好きが茶々を入れながら気楽に見ることができる作品だ。