さて「く」です。
1回目は2019/4/23の「空気人形」から始まり、以後「空中庭園」「苦役列車」「グエムル ―漢江の怪物―」「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「グッバイ、レーニン!」「蜘蛛巣城」「クライマーズ・ハイ」「暗くなるまで待って」「クラッシュ」「グラディエーター」「グラン・トリノ」「クリーピー 偽りの隣人」「グリーンマイル」「狂った果実」「ぐるりのこと。」「クレイジー・ハート」「クレイマー、クレイマー」「グレン・ミラー物語」「黒い雨」「軍旗はためく下に」とかなりの本数を取り上げました。、「
2回目は2021/1/11の「グーグーだって猫である」から始まり、「クィーン」「沓掛時次郎」「沓掛時次郎 遊侠一匹」「グッド・シェパード」「グッドフェローズ」「グッドモーニング,ベトナム」「首」「グランド・マスター」「グラン・プリ」「グラン・ブルー ―完全版―」「クリード チャンプを継ぐ男」「グリーン・デスティニー」「黒い十人の女」「黒い罠」「グローリー」「黒部の太陽」「グロリア」を補足しています。
興味のある方はバックナンバーからご覧ください。
今回は3回目になりますが、あまり思いつきませんでした。
「クイール」 2003年 日本
監督 崔洋一
出演 小林薫 椎名桔平 香川照之 戸田恵子
寺島しのぶ 黒谷友香 櫻谷由貴花
松田和 名取裕子
ストーリー
ある時、東京のとある家庭でラブラドール・レトリーバーの子犬が5匹誕生した。
その中で、鳥が羽根を広げたようなブチ模様がお腹にある1匹は“ジョナサン”と名付けられる。
生ませの親・レン(名取裕子)のたっての願いで、ジョナサンは盲導犬になる為に訓練士・多和田(椎名桔平)に預けられることになった。
そのおっとりした性格が逆に盲導犬向きといわれるジョナサンが、ボランティアで子犬を育てる、パピーウォーカー・仁井夫妻(香川照之、寺島しのぶ)に預けられることになった。
ジョナサンはそこで、“鳥の羽根”という意味を持つ“クイール”という新しい名前をもらう。
その子犬は、1年間、夫妻のもとで愛情一杯に育てられた後、いよいよ盲導犬訓練センターで本格的な訓練を受けることになる。
のんびり屋でマイペースなクイールに、ヴェテランの多和田でさえ手を焼くこともあったが、やがてクイールは立派な盲導犬へと成長し、視覚障害者の渡辺(小林薫)と巡り会う。
初めこそ息の合わなかった渡辺とクイールだが、ハーネスを介して伝わってくるクイールの思いやりに、渡辺は次第に心を開くようになり、互いにかけがえのない存在になっていく。
しかし、クイールとの生活が2年を過ぎた頃、渡辺は重度の糖尿病に冒され、3年後にこの世を去る。
そしてそれから8年後、仁井夫妻のもとで余生を送っていたクイールもまた、12年と25日の生涯を静かに閉じるのだった。
寸評
子供と動物を主人公に据えるとそれなりの作品となるのは、大抵の人が子供や動物を可愛いと感じることにあるのではないかと思う。
この作品は盲導犬を描いているのでなおさら感動的になる要素を有している。
盲人と盲導犬の強い絆は想像出来、そうした点をドラマチックに描くことは難しくないはずだが、この映画のストーリー展開は平板で盛り上がりや感動に欠けるものがある。
崔洋一監督が意図したものなのか、感動物語にしかならない素材を感動から遠い描き方をしている。
訓練士役の椎名桔平の飄々とした演技や盲人の小林薫のオーバーとも思えるユーモラスな演技がそれに拍車をかけている。
そもそも主人公は彼等ではなくクイールという盲導犬であり、クイールを演じたラフィー号である。
言い換えればこの作品はクイールの一生を描いたもので、しかもそれを誇張することなく淡々と描いている。
崔洋一監督はこの映画を通じて盲導犬のことを知ってほしいと願っているだけなのではないかと思ってしまう。
そうであれば知識を得たことはあったので、目的は達したのかもしれない。
盲導犬は血統が重要で、両親とも盲導犬でなければなかなか盲導犬にはなれないこと。
生まれてから1年間はパピーウォーカーというボランティアに預けられること。
さらにパピーウォーカーは犬を絶対に叱ってはいけないということを知る。
おそらくこれは犬を支配するのではなく共存するためなのだと想像できる。
訓練所での厳しい訓練は想像できるが、ここでの様子も厳しさを連想させるものではない。
時々は笑ってしまうシーンに出会うが、ドキュメンタリーかと思うほどの覚めた目で追っている。
名取裕子の家で生まれたクイールは、彼女のたっての願いで盲導犬になる道を選ばれる。
そして1年間香川照之、寺島しのぶの夫婦のもとで育てられる。
1年後に椎名桔平の訓練センターに引き取られていく。
クイールはそこで訓練士たちによって施される訓練を長期に渡って受ける。
訓練を終えた盲導犬は盲人と共にセンターで生活するようになり、盲人も盲導犬との歩行訓練を受け、やがて盲人たちの個人宅へと引き取られていく。
やがて飼い主との別れがやって来て、歳を取ったクイールはパピーウォーカーであった香川照之、寺島しのぶの元へ帰ってくる。
クイールはそこで大往生を遂げることになる。
クイールに話を絞れば概ねそのようなものである。
これは人間と犬の感動のドラマではなく、落ちこぼれ犬クイールのたくましい人生ならぬ「犬生」を描いた作品なのだと理解する。
人間的な感情移入を排除して、犬の一生を等身大でありのままに描いていて、人間の都合の良い解釈を排除していると言えるが、その分、期待する感動も除外されている。
盲導犬という仕事を与えられたクイールだが、皆に可愛がられ幸せな一生だったのだろうと感じられたのは救いであるが、動物映画として見た場合は平均以下といったところ。
1回目は2019/4/23の「空気人形」から始まり、以後「空中庭園」「苦役列車」「グエムル ―漢江の怪物―」「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「グッバイ、レーニン!」「蜘蛛巣城」「クライマーズ・ハイ」「暗くなるまで待って」「クラッシュ」「グラディエーター」「グラン・トリノ」「クリーピー 偽りの隣人」「グリーンマイル」「狂った果実」「ぐるりのこと。」「クレイジー・ハート」「クレイマー、クレイマー」「グレン・ミラー物語」「黒い雨」「軍旗はためく下に」とかなりの本数を取り上げました。、「
2回目は2021/1/11の「グーグーだって猫である」から始まり、「クィーン」「沓掛時次郎」「沓掛時次郎 遊侠一匹」「グッド・シェパード」「グッドフェローズ」「グッドモーニング,ベトナム」「首」「グランド・マスター」「グラン・プリ」「グラン・ブルー ―完全版―」「クリード チャンプを継ぐ男」「グリーン・デスティニー」「黒い十人の女」「黒い罠」「グローリー」「黒部の太陽」「グロリア」を補足しています。
興味のある方はバックナンバーからご覧ください。
今回は3回目になりますが、あまり思いつきませんでした。
「クイール」 2003年 日本
監督 崔洋一
出演 小林薫 椎名桔平 香川照之 戸田恵子
寺島しのぶ 黒谷友香 櫻谷由貴花
松田和 名取裕子
ストーリー
ある時、東京のとある家庭でラブラドール・レトリーバーの子犬が5匹誕生した。
その中で、鳥が羽根を広げたようなブチ模様がお腹にある1匹は“ジョナサン”と名付けられる。
生ませの親・レン(名取裕子)のたっての願いで、ジョナサンは盲導犬になる為に訓練士・多和田(椎名桔平)に預けられることになった。
そのおっとりした性格が逆に盲導犬向きといわれるジョナサンが、ボランティアで子犬を育てる、パピーウォーカー・仁井夫妻(香川照之、寺島しのぶ)に預けられることになった。
ジョナサンはそこで、“鳥の羽根”という意味を持つ“クイール”という新しい名前をもらう。
その子犬は、1年間、夫妻のもとで愛情一杯に育てられた後、いよいよ盲導犬訓練センターで本格的な訓練を受けることになる。
のんびり屋でマイペースなクイールに、ヴェテランの多和田でさえ手を焼くこともあったが、やがてクイールは立派な盲導犬へと成長し、視覚障害者の渡辺(小林薫)と巡り会う。
初めこそ息の合わなかった渡辺とクイールだが、ハーネスを介して伝わってくるクイールの思いやりに、渡辺は次第に心を開くようになり、互いにかけがえのない存在になっていく。
しかし、クイールとの生活が2年を過ぎた頃、渡辺は重度の糖尿病に冒され、3年後にこの世を去る。
そしてそれから8年後、仁井夫妻のもとで余生を送っていたクイールもまた、12年と25日の生涯を静かに閉じるのだった。
寸評
子供と動物を主人公に据えるとそれなりの作品となるのは、大抵の人が子供や動物を可愛いと感じることにあるのではないかと思う。
この作品は盲導犬を描いているのでなおさら感動的になる要素を有している。
盲人と盲導犬の強い絆は想像出来、そうした点をドラマチックに描くことは難しくないはずだが、この映画のストーリー展開は平板で盛り上がりや感動に欠けるものがある。
崔洋一監督が意図したものなのか、感動物語にしかならない素材を感動から遠い描き方をしている。
訓練士役の椎名桔平の飄々とした演技や盲人の小林薫のオーバーとも思えるユーモラスな演技がそれに拍車をかけている。
そもそも主人公は彼等ではなくクイールという盲導犬であり、クイールを演じたラフィー号である。
言い換えればこの作品はクイールの一生を描いたもので、しかもそれを誇張することなく淡々と描いている。
崔洋一監督はこの映画を通じて盲導犬のことを知ってほしいと願っているだけなのではないかと思ってしまう。
そうであれば知識を得たことはあったので、目的は達したのかもしれない。
盲導犬は血統が重要で、両親とも盲導犬でなければなかなか盲導犬にはなれないこと。
生まれてから1年間はパピーウォーカーというボランティアに預けられること。
さらにパピーウォーカーは犬を絶対に叱ってはいけないということを知る。
おそらくこれは犬を支配するのではなく共存するためなのだと想像できる。
訓練所での厳しい訓練は想像できるが、ここでの様子も厳しさを連想させるものではない。
時々は笑ってしまうシーンに出会うが、ドキュメンタリーかと思うほどの覚めた目で追っている。
名取裕子の家で生まれたクイールは、彼女のたっての願いで盲導犬になる道を選ばれる。
そして1年間香川照之、寺島しのぶの夫婦のもとで育てられる。
1年後に椎名桔平の訓練センターに引き取られていく。
クイールはそこで訓練士たちによって施される訓練を長期に渡って受ける。
訓練を終えた盲導犬は盲人と共にセンターで生活するようになり、盲人も盲導犬との歩行訓練を受け、やがて盲人たちの個人宅へと引き取られていく。
やがて飼い主との別れがやって来て、歳を取ったクイールはパピーウォーカーであった香川照之、寺島しのぶの元へ帰ってくる。
クイールはそこで大往生を遂げることになる。
クイールに話を絞れば概ねそのようなものである。
これは人間と犬の感動のドラマではなく、落ちこぼれ犬クイールのたくましい人生ならぬ「犬生」を描いた作品なのだと理解する。
人間的な感情移入を排除して、犬の一生を等身大でありのままに描いていて、人間の都合の良い解釈を排除していると言えるが、その分、期待する感動も除外されている。
盲導犬という仕事を与えられたクイールだが、皆に可愛がられ幸せな一生だったのだろうと感じられたのは救いであるが、動物映画として見た場合は平均以下といったところ。