おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

愛と哀しみの果て

2022-01-18 08:22:46 | 映画
「愛と哀しみの果て」 1985年 アメリカ


監督 シドニー・ポラック
出演 メリル・ストリープ
   ロバート・レッドフォード
   クマリア・ブランダウアー
   マイケル・キッチン
   マリック・ボーウェンズ
   ジョセフ・シアカ

ストーリー
デンマークに住むカレンは、莫大な財産を持つ独身女性だったが、いつかこのデンマークを離れたいと秘かに思っていたが、そのきっかけともなる出来事が起こった。
スウェーデン貴族のプロア・ブリクセン男爵と結婚することになり、東アフリカのケニアヘと旅発った。
彼女の所有するンゴングの農園に新居を構えることにしたのだ。
ナイロビに向かう列車で、カレンは象牙を列車に積み込んでいた冒険家のデニス・ハットンを見かけた。
彼は友人であるバークレー・コールに象牙を渡してくれるようにカレンに言い残すと、サファリの荒野へと去った。
ナイロビでは、召使いのファラー・アデンが出迎え、カレンをブロアのいる英国人クラブ・ムサイガに案内した。
再びクラブに行ったカレンは、そこでコールと出会う。
たくさんの蔵書に囲まれたその部屋はデニスのものであることを、彼女はコールから聞いた。
紳士然としたコールや、彼から伝え聞いたデニスに、カレンは興味を持つのだった。
カレンは当初計画していた酷農はやめ、コーヒー栽培をすることにブロアが勝手に決めていたことに驚く。
カレンは、収穫が4年先になると聞きながらも、精力的にコーヒー栽培に挑んだ。
ブロアとカレンの平穏な生活は、長くは続かなかった。
第一次大戦の余波がアフリカにも及び、農園から320キロ南の独領との境界線に英国人を中心をする偵察隊が組まれ、その一員としてブロアが加わってしまったのだ。
カレンは梅毒にかかり、デンマークに帰国して手術したが子供の産めない身体になってしまった。
再びアフリカの大地に戻ったカレンは、教育に目ざめ、子供たちのために学校を開放する。
やがて戦争も終わり、いつしか愛を語り合うようになったカレンとデニス。
ある日、コールが、黒死病におかされ死期が迫っていることをデニスに告白した。


寸評
カレン(メリル・ストリープ)という女性の一代記で、彼女の半生は波乱万丈なのだがその内容があまりに多く、そのどれもが淡々と描かれているので盛り上がりに欠けるきらいがある。
静かな語り口はアフリカという大地と、自然を背景としているために意図されたものかもしれない。
資産家のカレンはデンマークで兄が恋人で弟が友人という関係でいたが、デンマークを離れられるというだけで弟のブロア(クラウス・マリア・ブランダウアー)と結婚しケニアに渡る。
これだけでもドラマティックな内容だと思うのだが、その関係をどのように決着をつけたのかは描かれず、結果がカレンのナレーションで語られるだけだ。

この時代ケニアはイギリスが統治していたが、カレンはそこに広大な土地を持っている。
カレンはそこに移り住むのだが、なぜ結婚相手のブロアが先乗りして土地を管理していたのかの経緯もよくわからないし、その間のブロアの生活も想像の域である。
そして無断でコーヒー栽培をすることにしていたので夫婦間の関係がおかしくなると思っていたら、案外と仲良く暮らしている。
カレンは子供を欲しがっていたから、この地で平凡な生活を望んでいたのだろう。
ブロアはカレンとの生活に不満があったのか、他の女性と関係しカレンに梅毒をうつしてしまう。
ブロアのカレンに対する気持ちの変化は全くと言っていいほど描かれない。
事実だけを伝えられるような描き方である。
カレンが梅毒に感染していたことも、医者からブロアも検査を受けた方がいいと言われ、ブロアが「すまない」とあやまるだけのものである。
またブロアの度重なる浮気も、カレンが「車の中に女性の下着が落ちていた」というだけで、どうもカレンとブロアの描き方は淡白だ。

この両名の関係を淡白に描いたのはデニス(ロバート・レッドフォード)の存在を際立たせるためだったのだろうが、二人の関係も激情型ではない。
アフリカの広々とした草原と、サファリの様子が静かに二人を包む。
サファリの緊迫感はライオンに襲われるシーンぐらいで、夕食の雰囲気が度々描かれてムードを醸し出す。
デニスはそれを職業にしているが、とても優雅な貴族趣味に思えてくるものである。
野営地でテーブルクロスをかけたテーブルでワインを飲み、たき火に照らされながら語らっている様子などはブルジョア的で、ある種のあこがれを抱かせる。

カレンは梅毒が原因で子供が産めなくなってしまい、そのこともあって学校を開くのだが、ケニアの子供たちに教育を施す情熱は背景的に描かれるだけだ。
彼女はキクユ族の人々にも慕われていたようだが、その関係も足を怪我した子供で象徴的に描かれているだけで、全体的に間延びする描き方である。
デニスとの結末もあっけなかったなあ。
アフリカの大地の映像と、ジョン・バリーのテーマ曲は良かった。