おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

リオ・グランデの砦

2022-01-02 09:44:33 | 映画
「リオ・グランデの砦」 1950年 アメリカ


監督 ジョン・フォード
出演 ジョン・ウェイン
モーリン・オハラ
ベン・ジョンソン
クロード・ジャーマン・Jr
チル・ウィルス
ハリー・ケリー・Jr

ストーリー
カービー・ヨーク中佐は、南北戦争でシェリダン将軍の率いる北軍に参加し、シェナンド谷の妻の親族の所有地を焼いたので、怒った妻のキャサリーンは1人息子ジェフを連れて別居してしまった。
1880年、ヨーク中佐はメキシコ国境近くにあるリオ・グランデ河のスターク砦で横暴なアパッチ族の討伐にあたっていた。
横暴なアパッチ族は西部を荒らしてはメキシコへ逃れるので、米軍は国境を越えて追うこともならず苦虫を噛む思いをしていた。
シェリダン将軍は彼の砦へ視察に来たが、その部下に一兵卒として息子のジェフが居り、更にそれを追って妻もついて来た。
妻は息子の除隊を願ったがそれは許されず、彼女も砦に居すわることになってしまった。
ヨークは息子のジェフに対し、あくまで上司と部下の関係を貫いていく。
この時アパッチ族の大挙襲撃がありついにシェリダン将軍はヨークに越境の内諾を与えた。
彼を待つものが軍法会議であることを知りつつ、彼は敢然部下を指揮して長駆メキシコへ突入、アパッチの本拠を覆滅した。
砦に戻り、キャサリーンに迎えられたヨークは、自分達の息子ジェフが立派に務めを果たしたことを伝える。
家族の愛を取り戻したヨークとキャサリーンは、今回の作戦の武勲を称える式典で、名前を呼ばれたジェフを誇らしげに見つめるのであった。


寸評
騎兵隊物としては上手くまとまっており、父親と母親が息子に寄せる愛情も丁寧に描き込まれているおおらかな西部劇である。
殺伐とした感じよりものどかな感じがするのは、騎兵隊付きの音楽隊によるコーラスが度々入るからだろう。
キャサリーン夫人を歓迎するときだけでなく、シェリダン将軍に対しても披露されるし、騎兵隊の行軍の時にもコーラスが流れて、よく歌声が流れる西部劇だなあとの印象を持つ。

クライマックスはインデアン(現在は先住民と呼ぶ)との攻防戦だが、メインとなるのはヨーク一家の再生物語だ。
カービーは騎兵隊任務に忠実なあまり15年間も家族と離れている。
おまけに南北戦争時代に、命令によりキャサリーンの農場を焼き払ったことも夫婦間に溝を作っている。
息子は父親の顔も覚えていない。
それでも父はどこまでも父で、入隊してきた息子を特別扱いできないが、陰ながら気にかけている様子が微笑ましくて、騎兵隊に場所を借りたホームドラマのようなシーンが随所にある。
母親は母親で、気が強い側面を見せながらも息子を危険な騎兵隊勤務から連れ帰りたい。
息子は成績不足で仕官になる道を閉ざされているが、新兵として騎兵隊勤務を全うしたいと考えている。
三者の思惑と行動が人情劇として要領よく描かれている。
若い新兵たちは全くの役立たずと言うのが通り相場なのだが、彼らは結構できる者たちだというのが新鮮だ。
彼らの実力は早い段階での乗馬訓練で示されるが、実際彼等の乗馬技術はスゴイ。
彼らの指導教官でもあるヴィクター・マクラグレンのクインキャノン軍曹が狂言回し役として面白い。
かつてキャサリーンの農場を焼き払ったことから”放火犯”tとキャサリーンに呼ばれていて可愛げがある。
軍医の所で酒を飲んでいたり、逮捕されそうな新兵に脱走をそそのかすなど愉快な人物である。
教会に閉じ込められた子供たちの中に、「あの子は味方なのか敵なのかわからない」というおませな女の子が居たりと、ユーモアにあふれたシーンも散りばめられていて楽しい。

平原を騎兵隊が行進してくるだけで絵になってしまうが、馬車の疾走シーンや襲撃してくるインデアンのシーンなど、臨場感があってさすがにジョン・フォードは上手いなあと感心するが、それは撮影のバート・グレノンやアーチー・J・スタウトによって提供されたものかもしれない。
さすがに子供を虐殺する事を避けているが、騎兵隊員の妻をむごたらしく殺しているなど、インデアンは全くの悪役として描かれている。
ジョンフォードの初期作品においてはインデアンアは悪の象徴的存在である。
騎兵隊は正義、インデアンは悪という単純な構図だ。
悪かったのは、むしろ白人側だったように思うのだが、どうなんだろう?
罪滅ぼしの為か、「シャイアン」では彼らに同情を寄せている。
ラストシーンにおけるヨーク一家の和解という観点に対してはもう少し描いても良かったと思うが、殺人容疑で追われている新兵がカービー中佐によって突如7日間の休暇を与えられ逃亡するなど、ユーモアのあるシーンは最後まで保たれている。
ところで、カービー・ヨーク中佐は国境を超えて追撃した罪をかぶったのだろうか?