おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

リバー・ランズ・スルー・イット

2022-01-03 10:50:00 | 映画
「リバー・ランズ・スルー・イット」 1992年 アメリカ


監督 ロバート・レッドフォード
出演 ブラッド・ピット
クレイグ・シェイファー
トム・スケリット
ブレンダ・ブレシン
エミリー・ロイド
スティーヴン・シェレン

ストーリー
年老いたノーマン・マクリーンは、故郷の川でフライフィッシングをしながら、若き日を回想していた。
1912年、10歳のノーマンと8歳のポールは、父親のマクリーン牧師にフライフィッシングと勉強を教わっていた。
ノーマンの夢は牧師かプロボクサーになること、ポールの夢はプロのフライフィッシャーである。
1919年、ノーマンは東部のダートマス大学に進学し、7年後、ノーマンがやっとミーズラに戻った時、父は歓迎の言葉のかわりに将来の進路を決めかねているノーマンを批判する。
一方ポールは地元の大学を卒業し、地方新聞の記者をしている。
ノーマンは、弟が酒と賭けポーカーにのめり込んでいるのを知る。
兄弟は早速川に入り釣りをしたが、ノーマンは、弟のほとんど芸術と化したフライフィッシングを見つめていた。
独立記念日のダンス・パーティで、ノーマンはジェシーと出逢い、恋に落ちる。
ある日ノーマンが家に帰ると警察から電話が入り、ポールが留置所に保護されているというのだ。
ポールはどうやらポーカーで莫大な借金を背負っているらしい。
ジェシーの兄ニールがハリウッドから帰ってくる。
キザな彼をノーマンはひと目で嫌いになるが、釣りに誘う破目になる。
そんなある日、ノーマンはシカゴ大学から教授職のオファーを受け取り、彼はジェシーにプロポーズする。
ノーマンは酒場でポールに会い、ジェシーのことを話すが、ポールは素直に喜んでくれない。
ある日ノーマンは、警察に再び呼び出された。


寸評
モンタナ州はアメリカ北西部の州で自然豊かな州のイメージがある。
ロバート・レッドフォードは後年、監督・製作・主演を兼任した「モンタナの風に抱かれて」という作品を撮っているから、この作品を通じてモンタナ州が気に入ったのかもしれない。
実際、親子、兄弟が釣りをする川の情景は憧れさえ抱かせるような豊かな自然に囲まれた場所だ。
僕は子供の頃に家の前の川で鮒釣りを楽しんだくらいで本格的な釣りをやったことがない。
ましてやフライフィッシングという高度な技術を要しそうな釣りは経験ない。
したがって釣りの醍醐味を語れないし、描かれたような大きなマスが釣れた時の手ごたえと感動は想像の域だ。
もしも僕がフライフィッシングに精通していたらこの作品をもっと楽しめただろう。
僕は俳優ロバート・レッドフォードが監督を務めた作品には静かだが丁寧に撮られているというイメージを持つ。
この作品も、あまりに美しい情景に救われた感があるけれど、映画としては平凡なドラマを中だるみさせず、青年が大人になる一過程のはかなくも愛しい青春をノスタルジックな雰囲気を出しながら再現している。

兄弟の父は厳格な牧師だが強権をふるって子供を支配するような人ではない。
僕は兄弟がいないし、父親も知らないで育ったので、マクリーン家の親子の姿に羨ましいものを感じた。
父親と兄弟が喜び勇んで釣りに行く姿は、僕にとっては半ばあこがれの世界だ。
性格の違いはどこから来るのだろう。
同じように育てられても兄弟は全く違う性格に育つ。
僕の双子の孫でさえ全く違う道を歩む予感を抱かせるが、それは至極当然のことなのだろう。
ノーマンとポールの兄弟も、まじめな兄ノーマンと、自由闊達な弟ポールと対照的な兄弟である。
兄弟としての確執もあるが、本質的には仲の良い兄弟である。
二人は別々の青春を送り、そして大学を卒業し青年へと育っていく。
兄はごく普通にジェシーという普通の女性に恋をし、弟は先住民の女性とあけっぴろげな交友をする。
目立たない兄に対し、弟は町では新聞記者として有名だし、釣りの腕も知れ渡っている。
仲はよいが何もかもが違う兄弟で、それもまた兄弟なのだと、一人っ子の僕は思う。

息子を亡くした父親は語る。
愛する者の本当に助けとなることは難しい。
自分の何を差し出すべきか、あるいは差し出しても相手が拒否してしまう。
身近にいながら腕の間をすり抜けてしまい、できるのは愛することだ。
完全に理解する事はできなくても、完全に愛することはできるのだと。
ノーマンの黙秘によって、父親は本当のポールの姿を知らなかったが、自分の知らないポールがいたことを感じ取っていたのかもしれない。
そしてポールの釣りは美しかったと、いいイメージだけを脳裏に残している。
そんな父も妻のジェシーも亡くなり、一人残った年老いたノーマンは川で釣りをする。
ちょっと寂しさを感じるラストだ。