おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

猟奇的な彼女

2022-01-05 08:33:25 | 映画
「猟奇的な彼女」 2001年 韓国


監督 クァク・ジェヨン
出演 チョン・ジヒョン
チャ・テヒョン
キム・インムン
ソン・オクスク
ハン・ジンヒ
キム・イル

ストーリー
性格の優しい大学生のキョヌは夜の地下鉄ホームで美しい“彼女”と出会う。
でもその時“彼女”は泥酔状態。
酔っぱらい女は嫌いだったが、車中で倒れている“彼女”を放っておけず仕方なく介抱してホテルへ運ぶ。
ところがそこに警官がやってきてキョヌは留置場で一晩を過ごすハメに。
翌朝、昨夜の記憶のない“彼女”は怒ってキョヌを電話で呼び出した上、詰問するのだった。
これがきっかけで、キョヌはルックスとは裏腹にワイルドでしかも凶暴な“彼女”に振り回されることとなる。
しかし翻弄されながら、キョヌは彼女に惹かれていった。
一方、彼女はいつもあいまいな態度を見せる。
そんな彼女が、両親の命令でお見合いをした夜、キョヌは急に見合いの現場に呼び出される。
キョヌは複雑な思いを隠し、お見合いの相手に彼女と付き合う心得を教えた。
キョヌの温かさに心動かされる彼女。
2人は、お互いにあてた手紙をタイムカプセルに入れて丘の木の下に埋め、2年後に会おうという約束を交わして別れた。
そして2年後、タイムカプセルを開けたキョヌは、彼女が恋人を亡くし、その面影をキョヌに見ていたことを知ったのだが・・・。


寸評
「猟奇的な」なんてタイトルを見るとホラー映画かサイコ映画を想像してしまうが、どうやら猟奇的な彼女とは変わった女の子とか、素敵な女の子ということらしい。
青春恋愛作品には違いはないのだが、実態はむしろラブ・コメディと言ったほうがいい作品だ。
実際、彼女の登場シーンは酔っぱらって乗り合わせた電車で、座席に座るオジサンさんの頭の上にゲロするというものだから、ヒロインとしてはちょっと変わったものだ。
オマケにそのオジサンがカツラだったときては、これはもう喜劇映画だ。
その後の彼女は男顔負けの迫力で、援助交際をやっている男と女の子を指導したり、煙草の吸殻をポイ捨てした男にも臆することなく注意したりする。
正義感にあふれているよう見も思えるのだが、その言葉使いは乱暴である。

彼女と知り合ったキョヌは箱入り息子で、彼女の言いなりになっている。
彼女のわがままな要求は無茶なものだが、キョヌはそれに文句を言いながら応えていく。
その間の出来事もドタバタ喜劇に入るような描き方で、ロマンチックな恋愛映画とは程遠い。
彼女のせいで留置場に入れられても、その様子は深刻なものではなくて漫画的だ。
やっとロマンチックなシーンに出合えるかと思えば、脱走兵が現れて軍隊との銃撃戦が起きるという展開になるから荒唐無稽も甚だしい。
彼女はシナリオライターを目指しているので、シナリオに沿った想像シーンとして、ターミネーターまがいの銃撃戦があったかと思うと、時代劇の決闘シーンがあったりして、荒唐無稽さが強調されている。

「前半戦」として、出会って交際を始めるまでが描かれ、「後半戦」として、その後に二人の関係が親密さを増していく様子が描かれる。
その間に描かれるのが前述のドタバタ劇なのだが、「延長戦」として描かれるパートは一転して純愛路線になって、驚くような展開を見せる。
韓国のテレビドラマではよくあるような意表を突いた展開で、観客を驚かせ楽しませてくれる。
何十年後かの話になったかなと思わせたところで、実はそうではなかったというあたりから感動的になってくる。
彼女の過去と、キョヌと別れた理由が明らかになり、さらには思わぬことを通じてキョヌの優しさも描かれる。
老人が語る「運命は努力したものに偶然という橋を架けてくれる」という言葉通り、偶然が二人を結びつけるかと思わせながら期待を裏切る。
この場面は、最後に彼女とキョヌが別れ別れになってしまったシーンと対になっているような描き方をしている。
そして、ラストシーン。
伏線が張られていたとは思うけど、最後にこの展開を見せるか・・・と思わずつぶやいてしまう。
う~ん、韓国の恋愛ドラマだなあ。
しかし思い返してみれば、これを普通に描けばベタな恋愛ものになっていたかもしれないから、この描き方は新鮮さもあって良かったかもしれない。
タイトルが特異なことで記憶に残る作品ともなっている。