おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

バファロー大隊

2021-09-09 06:00:39 | 映画
「バファロー大隊」 1960年 アメリカ


監督 ジョン・フォード
出演 ジェフリー・ハンター
   コンスタンス・タワーズ
   ウディ・ストロード
   ビリー・バーク
   カールトン・ヤング
   ウィリス・ボーシェイ

ストーリー
合衆国第9騎兵隊のカントレル中尉は、南北戦争終了後、軍法会議に付された黒人兵ラトレッジ軍曹の弁護を志願した。
優秀な軍歴を誇っていたラトレッジは16歳になるルーシイを強姦、絞殺した上、彼女の父であるダブニイ少佐を射殺した嫌疑によって告訴されていた。
最初の証人としてカントレルの恋人メアリーが脱走したラトレッジに命を救われたと証言した。
砦の軍医エックナーの報告によるとルーシイの死体から黄金の十字架がなくなっており、推定によればダブニイ少佐が娘の襲われている現場を見て、助けようとした途端に犯人に射たれたということだった。
カントレルが証言台に立ち、被害者が死んでしまった以上、黒人兵が何を言っても信じないだろうと打ち明けた。
やがて偵察隊はインディアンの手にかかったクリス・ハブルの惨殺体を見つけた。
着ていた服から死体は雑貨店の主人チャンドラ・ハブルの息子と分かったが、仲良くしていた牧場主の女の子の所へ向かう途中で襲われたらしい。
偵察隊はアパッチに奇襲され、手錠をはずしてもらったラトレッジは大活躍し何度も中尉の命を救った。
だが銃を手にしたラトレッジは突然逃げ出したが、インディアンのわなを発見し偵察隊までひき返した。
ラトレッジの急報により騎兵隊はインディアンの襲撃に備え応戦し撃退する。
インディアンの死体からルーシイの首飾りの十字架が発見された。
そのインディアンはまたCHと刻まれているバックスキンをつけていた。
これは前に惨殺されたハルブの頭文字だった。
アパッチはクリスの死体から十字架を奪ったのに違いなかった。
皆の疑いは亡くなったクリス・ハブルに向けられ、新犯人だということになったのだが・・・。


寸評
騎兵隊を題材にしながら回想形式で語られる裁判劇であるが、横たわっているのは人種差別問題である。
黒人兵のラトレッジ軍曹が裁判にかけられ、騎兵隊のカントレル中尉が彼の弁護に立つ。
その時点でラトレッジは無実だと思ってしまうので、楽しみは真犯人は一体誰なのかと、カントレル、メアリー、ラトレッジに起きる出来事の描かれ方となる。
証人によって前後して再現される出来事がつながってくるのはよくある描かれ方である。
まず出来事における疑問が提示されて、その疑問が徐々に解き明かされていくのも常道である。

カントレル中尉は証人申請しているメアリーと愛し合っていたようなのだが、今は犬猿の仲という雰囲気で裁判は始まるが、この時点ではラトレッジの犯した罪が何なのかはあえて示されていない。
メアリーの証言により、中尉とメアリーの馴れ初めとラトレッジとの出会いが語られる。
ラトレッジが傷を負っているが、その傷の本当の理由も後に判明する。
先住民を追う中でラトレッジの優秀さが示され、カントレルとラトレッジの信頼関係も描かれているが、カントレル中尉は立派過ぎるヒーローといった感じだ。
従って裁判劇では弁護側のカントレルの言い分がすべて「ごもっとも」という形で終わっている。

メアリーとラトレッジが駅舎に居る時に、「誰か来たら君は立ち去ってくれ、白人と黒人が一緒いると問題だ」とラトレッジが語る。
検事も被告人を黒人とよんだり、軍事法廷の裁判長を務める大佐の夫人も、ルーシイに黒人のラトレッジと仲良くしない方がいいと忠告したりしている。
中尉は被害者が死んでしまった以上、黒人兵が何を言っても信じないだろうと述べるが、ラトレッジもその事が分かっているから逃亡したのだ。
カントレル中尉が率いる部隊は黒人部隊で、たびたび黒人の人権獲得目標が語られる。
ずっと奴隷だったから自分の年齢は分からないと言う老隊員もいる。
ラトレッジは騎兵隊の兵士としては優秀で仲間の信頼もあるが、被告人となった事件に関しては寡黙である。
彼のかたくなな態度は黒人差別に対する絶望感がもたらしているもので、その絶望感をもっと描き込んでも良かったと思うのだが、そうすれば映画自体が深刻なものになっていただろうなとも思う。
人種差別に批判的な立場を取っているが、先住民に対しては相変わらず悪役を押し付けている。
ジョン・フォードはその贖罪を「シャイアン」で行ったのだと思う。

裁判におけるドンデン返しは少し荒っぽい。
カントレル中尉は真犯人の名前をあげていながら疑問点を持っている。
その疑問点にハッと気付く描き方、真犯人が罪を逃れようとする悪あがきから自供に至る迄の描き方は急ぎ過ぎていてドラマチックな盛り上がりにかけている。
僕は尻切れトンボ感を感じた。
純粋の裁判劇だったら違った描き方をしただろうが、これはあくまでも西部劇なのだ。
ラストシーンはジョン・フォードらしい。