おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ビッグ・ガン

2021-09-28 07:39:27 | 映画
「ビッグ・ガン」 1972年 イタリア / フランス / デンマーク


監督 ドゥッチオ・テッサリ
出演 アラン・ドロン
   リチャード・コンテ
   カルラ・グラヴィーナ
   マルク・ポレル
   ロジェ・アナン
   アントン・ディフリング

ストーリー
トニー・アルゼンタは七回目の誕生日を迎えたひとり息子のカルロを抱きしめながら、足を洗わなければと心に決めた。
トニーは組織の中でも一目置かれた存在で、狙った獲物は決して逃がさない腕ききのハンターだった。
二大ボスのニックとクチッタは、トニーが彼らの同郷のシチリア島出身ということもあって高く評価していた。
パーティの翌日、トニーはニックにその由、申し入れたが彼は色よい返事をしなかった。
トニーは組織をあまりに知りすぎているのだ。
ヨーロッパ各地に拡がっている組織の幹部も同様で、会合での結果は「トニーを亡き者にせよ」となった。
それから数日後、組織の黒い手は、トニーを消すつもりが誤って彼の妻と子を殺してしまった。
彼は復讐を誓い、故郷から駆けつけた神父のドン・マリアノや弟分のドメニコのなぐさめにも救われなかった。
第一の犠牲者はカーレで、手引きしたのは、以前トニーが助けたことがあるカーレの情婦サンドラだった。
ミラノに戻ったトニーはドメニコが見つけてくれたアパートに身を隠す。
次なる獲物は組織の大立物グルンワルドだ。
サンドラの情報によって、幹部たちがコペンハーゲンのグルンワルドの元に集まる事を知る。
グルンワルドが迎えのベントレーに乗り込もうとした瞬間、待ち伏せていたトニーの拳銃が火を吹いた。
目的を果たしたものの自らも負傷したトニーは、同郷のデンニーノの友情に救われた。
その頃、ミラノでは、ドメニコがトニーのアパートの住所を白状させられたうえで、惨殺されるという事件がもちあがっていた。
アパートに入り込んだクチッタの部下は、部屋に身を隠していたサンドラを徹底的に痛めつけ、トニーの帰りを待ち伏せていた。


寸評
アラン・ドロンによる復讐劇で、無表情のドロンの表情、特にアップの切り取りが素晴らしい。
妻子を殺され復讐の鬼と化していくのは目新しい描き方ではないが、そこからのドロンはスタイリッシュな振る舞いを見せてカッコイイ!
トニーは腕利きの殺し屋だが、いつか自分も誰かに殺されると思っている。
マフィアの掟では息子が父の仇を打たねばならないので、可愛い息子にその道を歩ませたくない彼は足を洗うことを決意する。
それほど幼い息子を可愛がっているトニーを描いているのに、復讐すべきボスの一人が孫のような幼い男の子を抱いていたのに、男の子が連れていかれてボス一人が殺されてしまうのは工夫の足りない演出である。
ボスが孫を盾にするとか、トニーが殺害をためらうとかの演出があってしかるべきだったのではないか。
そうでなければ、何のためにあの幼い男の子を登場させたのか、登場させた意味がなくなっているように思う。

トニーは腕利きの殺し屋ではあるが人情味のある男であるらしい。
ドメニコという相棒は忠節を尽くしているし、サンドラという女性も彼に助けられたことを恩義に思っている。
同郷であるシチリア出身のデンニーノも彼に恩義があるらしい。
トニーの親派である彼らが物語に大きく絡んでくる展開は見応えがある。
彼らの結束が強いことを示すためには、ドメニコが最後まで口を割らない方が良かったと思うので、トニーの居場所は別の方法で判明させる工夫があっても良かった。
そうすることでラストシーンはもっと衝撃的なシーンになったと思う。
トニーに潜む優しさを利用した襲撃シーンは工夫が見られ、組織側との攻防に変化をつけている。
復讐の為の殺人に変化をつけているが、どれも目新しさのないものなので、相手側の反撃とは言え僕は女を使ったこの襲撃シーンが結構楽しめた。

トニーが復讐を遂げていくシーンは緊迫感をもってもって描かれているが、一番ドキドキ感があるのはラストの結婚式の場面である。
トニーと手打ちを行いたいニックは娘の結婚式にトニーの家族を招待する。
娘の結婚式を血で汚すわけはないだろうと母やサンドラと共にトニーは結婚式に参列する。
それぞれの陣営の人々の緊張を隠したような態度と、思惑ありげな顔のアップが映画を盛り上げる。
ここで何も起こらないわけがないと観客は感じ取っているので、自然と気分は高揚してくる。
花嫁の純白のドレスが真っ赤な血で染められるのかと想像を働かせてしまう演出が冴えわたる。
そして衝撃のラストシーンが待っているという一連の場面はこの映画の白眉だ。

この映画もマフィア内部のイザコザを描いた面白い作品だと思うが、殺人シーンの生々しさ、結婚式の雰囲気、マフィアのボスが組織を束ねている描き方などを比べると、後年に撮られた「ゴッドファーザー」がどれほど素晴らしい映画なのかを教えてくれる作品でもある。
マフィアを題材にした映画と言えばやはり「ゴッドファーザー」だな。