おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

JUNO/ジュノ

2021-03-26 08:09:44 | 映画
「JUNO/ジュノ」 2007年 アメリカ


監督 ジェイソン・ライトマン
出演 エレン・ペイジ
   マイケル・セラ
   ジェニファー・ガーナー
   ジェイソン・ベイトマン
   オリヴィア・サールビー
   J・K・シモンズ

ストーリー
アメリカ中西部のとある平凡な街に住むジュノは、1977年のパンクロックとB級映画が大好きという、ちょっと変わった16歳の女子高生。
ある秋の日、彼女の妊娠が判明する。
原因は、同級生のポーリーとの興味本位のセックス。
ジュノは中絶するつもりで病院に行くが、中絶反対運動に参加している同級生に出会い、考えを変える。
ジュノは早速、親友のリアとともに里親探しを開始。
フリーペーパーで郊外の高級住宅街に住むヴァネッサとマークの夫婦を見つける。
準備万端整ったところでジュノは両親に妊娠の事実を報告。
ショックを受けながらも二人は彼女を受け入れ、全面的なバックアップを約束するのだった。
週末、父のマックとともに養子縁組契約のために里親希望の二人の家に向かうジュノ。
弁護士とともに待っていたマーク、ヴァネッサと、ぎこちない会話を続けながらもなんとか契約手続きは無事完了し、ホッと一息ついたところで、ジュノがマークのギターを発見。
二人はお互いが共通の趣味を持っている事を知り、意気投合する。
これをきっかけに、紙切れだけの関係が大きく変わってゆく。
小さな命を授かったことがきっかけとなり、ジュノは、気づかなかった様々なことを知り、成長してゆく。
窮屈そうに生きる大人たちの姿、両親の深くて大きな愛、かけがえのない友情。
そして、長い冬が過ぎ、春から初夏に変わる頃、ジュノはいよいよ出産予定日を迎える……。


寸評
16才で妊娠した女子高生の話だけにキワモノ的な要素を含んでいそうな予感がする作品だったが、10代の妊娠というショッキングなネタを扱っているものの、とてもまともでハートフルな青春映画だ。

主人公のジュノは少々生意気で、皮肉ばかり言う小憎らしい娘なのだが、どこか心底憎めない。
きわどい会話も平気でするし、一見あばずれの不良娘とも思えるのだが、いつの間にか温かな視線で見守ってしまう不思議な魅力を持っている。
ジュノの妊娠は彼女の初体験に対する好奇心から発生したもので、妊娠の相手であるポーリーを誘い込んだのも彼女である。
彼女はその事実を先ずは親友のリアに告げる。
実にアッケラカンとした告白であるし、受けたリアのリアクションも軽いもので、彼女たちには深刻感が全く感じられない。
彼女の立場と年齢を考えると中絶が選択肢の一つとなるはずだし、両親への相談も当然しなくてはならない。
ところがジュノは色々あって生む決意をし、そして生まれたばかりの赤ちゃんを里親に委ねる選択をする。
アメリカ社会の体制がどのようなものかは知らないが、とても事務的に事が運んでいる。
すべてが整ったところで両親への報告となるが、本来から言えば順序が逆だ。
それを聞いた父親も後妻である母も非常に寛容で彼女を受け止める。
ちょっとちゃらんぽらんに見える父と義理の母であるが、ジュノに対してとても愛情を注いでいるjことが映画を見ているうちに感じてくる。

里親となるヴァネッサとマークの夫婦はとてもいい感じの夫婦に見える。
妻のヴァネッサは子供が産めないようで、心から子供を欲しがり母親になる願望を持っている。
里親になりたい希望をタウン紙に掲載してからトントン拍子に話が進んだことから、夫のマークに疑問の気持ちが湧いてくる。
それは微妙に違う夫婦間の思いの違いだ。
里親になることもそうだし、室内の装飾もそう、趣味の世界も、これから目指すことも違っていることを感じる。
理想と思えた夫婦の姿を見てジュノは、二人の間の友情や愛は続かないものかと疑問を父親にぶつける。
父はジュノに「愛してる」という。
ジュノの家庭には愛が満ち溢れていたのだ。

この両家庭の人物描写と性格設定はなかなか上手い。
ジュノの相手であるポーリーとその母親、親友のリアなどの描写も巧みだ。
彼等が交わす会話も含めて脚本の巧みさが光る。
ラストで安易なご都合主義に走っていないのもいい。
ジュノがヴァネッサに託した手紙と、義母のブレンがヴァネッサにかける言葉と、ヴァネッサの返答がホッコリさせるし、ジュノとポーリーの結末もしっくりくる。
描かれる内容の割にはとてもポップな作品だった。