おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

バックドラフト

2020-01-14 09:19:55 | 映画
「バックドラフト」 1991年 アメリカ


監督 ロン・ハワード
出演 カート・ラッセル
   ウィリアム・ボールドウィン
   ロバート・デ・ニーロ
   スコット・グレン
   ジェニファー・ジェイソン・リー
   レベッカ・デモーネイ
   ドナルド・サザーランド
   クリント・ハワード

ストーリー
幼い頃、消化作業中に父の死を目の当たりにしたブライアン・マキャーフィーは職を転々とした末に、故郷のシカゴに新米消防士として戻って来た。
彼が友人のティムと共に配属された17小隊には兄のスティーブンや父の部下だったアドコックスらがいた。
着任早々、火災現場に向かったブライアンは、そこでスティーブンの英雄的な活躍を目にする。
しかし、現場に駆けつけた火炎調査官のリムゲールはこの1件を放火だと断言した。
消防隊に入って幾日か経った頃、ブライアンは兄に負けじと訓練に励むようになる。
ある日、現場で炎を前に尻込みをするブライアンを叱咤してスティーブンは踏み込み少年を救い出す。
ブライアンは自信をなくし、スウェイザク市議の言う通りリムゲイルの助手となる。
彼は連続放火犯を追っていた。
彼の話によると犯人は炎を熟知しており、バックドラフトを起こさせて、特定の人物を爆死させるだけで、火事を起こさせないようにしているという。
ジェニファーとよりを戻したブライアンは死んだ3人が消防署跡地開発の利権を得ており、犯人の情報を得るためにスウェイザクが彼をリムゲイルのもとに送り込んだことを知った。
スウェイザクが次に狙われ、助けようとしたリムゲイルは重傷を負う。
ブライアンは放火常習者のサイコ、ロナルドの助言を得た。
そんな時、ティムが巻き添えをくって爆死した。
ブライアンは兄を犯人と疑い火災現場で対決しようとするが・・・。


寸評
USJにこの映画をテーマにした「バックドラフト」というアトラクションがあるのだが、火薬事故があったので規模が縮小され僕が行った時には迫力が半減していたように思う。
そのアトラクションに比べれば、ここで描かれた火災シーンははるかに迫力のあるものになっていて、見る者を飽きさせない。
特に迫ってくる炎の描き方は素晴らしくて、現場の恐怖感が十分すぎるくらい伝わってきた。
作品は消防士たちの活躍と共に、スティーブンとブライアンという兄弟の確執と、連続放火犯の追及というミステリーが同時進行的に描かれていく。
兄弟の確執は場面を通じて何回も描かれるが、その原因がどこにあるのかを描いていないので根深いものと感じ取ることが出来ない。
兄弟は幼い頃に消防士だった父を消火作業中に亡くしている。
おそらく父親代わりにならざるを得なかった兄が、弟を厳しく育てあげたことが背景にあるのだろうが、そのことは場面としては描かれていない。
確執がありながらも兄弟愛も残っていて、確執を見せるのと同じくらいお互いが気遣いあう場面がある。
兄に反感をもちながらも、どこかで兄を敬っているブライアンの屈折した気持ちが弱まっていたような気がする。
父の姿を追う兄弟の心の内がもう少し描けていたらもっと良かっただろう。

火災のパニックに押されて、犯人探しのミステリー性は希薄になっている。
ロバート・デ・ニーロによる現場検証と、犯人探しに光が当たっていない印象を持つ。
そして登場人物からしておおよその見当がついてしまう。
情報が市議のスウェイザク側に流れる経緯が省略されてしまっているので、サスペンス性も希薄だ。
デ・ニーロの登場シーンが少ないことも一因かも知れない。
犯人特定の直接的物質が一体どのような役目を果たすのか、科学的見地を持たない僕にはよくわからなかった。
ブライアンは犯人のヒントを変質的な放火犯に求めるが、このシチュエーションは「羊たちの沈黙」と同じだ。
変質犯の不気味さは断然「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)の方が勝っている。

兄の遺言を守って語ることなく葬儀に臨むブライアン。
消防士の葬儀シーンになぜか感動を覚えた。
正装をした消防士たちが仲間を送る荘厳な行進シーンだ。
市民のために自らの命も顧みない彼等の崇高な精神を感じ取れるからだ。
父と兄の遺志を継ぐようにブライアンは火災現場に向かう。
ブライアンが新人研修隊員を気遣う場面は微笑ましく、ブライアンの成長を著していて安心させられた。

ブライアンと共に消防車の上に乗って火災現場に行ったはずのジェニファーがその後登場しないなど脚本に粗さも目立つが、特撮の冴えもあって火災映画としては指折りの作品だ。
僕が火災映画として思いつくのは、先ずはこの作品と「タワーリング・インフェルノ」だな。