趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『月と雷』 角田光代

2012年08月24日 | 
読んでいて、何となく憂鬱になってくる本でした。
角田光代さんの文章は、読みやすくて物語にも吸引力があると思うのです。
ですから、これほど読み進むのが遅いのも初めてのことでした。

読み始めてほどなく、角田さんの『ツリーハウス』を思い出していました。



当たり前の日常生活を繰り返す事のできない、母直子と息子智と、
この2人に深く関わることとなった泰子という女性の物語。

何も考えず、目の前にあるモノを受け入れていく事ができれば、
普通に生活していく事は可能なのかもしれません。

実際、かつて日本の女性達の多くが、
そうして目の前の運命を受け入れてきたのですから。
それは、ほんの少し前までそれが当たり前だったのですから、
当たり前の日常生活、と一言で云ってみても、
その中身は、時代によって大分様相が違っていることでしょう。

でも、その後それを持続していく事ができるかどうか。
それを問うている物語のような気がしました。

今は昔と違い、自分で結婚相手を選ぶ事が普通です。
不意の出会いや、縁というもので人生が大きく変わってしまう気がしますが、
そうであったとしても、その後持続していけるかどうかは、
今も昔もあまり変わり映えしないのかもしれません。

生活を積み上げていくというのは、努力なのかな。
ひとたびつながりを持った関係性というものを、細くても長く続けていける‘チカラ’。
逃げ出さないという、信頼。

読みながら、多くのことを考えさせられました。
未だ少しもやもやしたモノが残っていますが、角田さんの問いを、
少しは受け止められたかな、と思っています。。