趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『ナニカアル』 桐野夏生

2010年03月31日 | 
前作『IN』から間をおかずに最新作を読むことができました。
とても読み応えのある小説でしたよ~

女流作家として名を馳せた、‘林芙美子’が主人公です。
林芙美子といえば、やはり『放浪記』でしょうか。
最近は森光子さんの舞台の方が有名かもしれませんが。

桐野さんは、林芙美子に成り代わるように
その、人となりを描いていきます。
その違和感の無さに、
作家桐野夏生の素晴らしさがあるように思えました。
それくらい、生き生きととした
息遣いの感じられる文章です。
戦中の生活の様子や、登場する作家たちや
出版社、記者たちなどとの風景が目に浮かぶようで
引き込まれました。

そういえば『IN』でも、女流作家が主人公で
編集者や出版社が深くかかわりを持ってくるという点が同じでした。
そして、魂を搾り出すように書くことに情熱を込め、
身の破滅になる世界へと踏み込んでいく様が
似ています。
でも、それぞれの筆致は、随分違うように感じました。
そこが、いいなと思ったところです。



優れた作品を残していく人間というのは
やはり常人とは似て非なる部分を持っているのだなと
感じずにはいられませんでした。
そんな林芙美子を描き出した背景に、
膨大な資料の存在と、
計り知れない探求の時間を感じ、
改めて、桐野夏生、スゴイ!!と思いました。。