趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『IN』 桐野夏生

2010年03月04日 | 
やっと順番が回ってきました。
桐野さん、新作も出ましたね~

題名から、『OUT』を連想していましたが
話の内容にはつながりは感じられません。



『IN』は、女性作家が主人公。
恋愛というものの‘涯て’というものを突き詰めようとしている。
それは、書いている小説でも、実生活の不倫にしても。

小説の中に、小説が登場し、小説家とその妻と愛人と、と。
その物語を紐解きながら
自身の‘涯て’を追い求めていく。
帯に、‘恋愛の抹殺’という言葉がありました。
過激な言葉に、その過激さを連想してしまいます。

桐野さんの作品の多くは、読んでいくのが
辛くなるような真実の迫り方をするように思いますが
この作品は、作家というものの仕事のすごさ、というものを
垣間見るような感じがしました。
もちろん、全ての作家がそうであるわけではなく、
一部の、もしかしたら
いいなと思う作家は皆、こんな風に現実と幻想とのはざまで
魂を搾り出すようにして執筆しているのかもしれないと
思ってしまう、作品でした。。


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4 コメント

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IN (オカダ)
2010-03-11 18:47:27
Pokeさん、こんばんは。
僕もこの本読みました。

>この作品は、作家というものの仕事のすごさ、というものを
>垣間見るような感じがしました。

全く同感です。圧倒されてしまいました。

そして、作家と編集者との関係にも目を瞠るものがありました。
この小説のような恋愛関係は別としても、作品は作家と編集者との
共同作業によって生み出されるという面が、読者が思う以上に大きい
んでしょうね。

小説の中の小説が重要な要素になっているという入れ子構造に
なっているところも重層的でよかったです。

>いいなと思う作家は皆、こんな風に現実と幻想とのはざまで
>魂を搾り出すようにして執筆しているのかもしれないと
>思ってしまう、作品でした。。

ホントにそう思えるような作品でしたね。
編集者 (Poke)
2010-03-12 18:48:11
オカダさん、こんばんは。
わぁ、オカダさんも読まれたのですね~
桐野作品の男性の感想が聞きたいと思っていました。

>そして、作家と編集者との関係にも目を瞠るものがありました。

私も同じように思いました。
編集という仕事を、雑誌を作るとか、本の出版や企画をするぐらいの認識しかなかったのです。
編集者の仕事が、これほど本の内容に深く関わっているとは驚きですね。
本って、作家一人のモノではないように思えてしまいます。

>小説の中の小説が

オカダさんは、このモデルとなったといわれる島尾敏雄さんの『死の棘』という作品をお読みになりましたでしょうか。
私はこの作品が話題になった頃、途中で挫折してしまったのです。今なら読むことができるかな、と考えている所です。。
『死の棘』 (オカダ)
2010-03-16 18:48:17
Pokeさん、こんばんは。
『死の棘』は未読です。モデルとなった作品なら、是非読んでみたいですね。
映画も (Poke)
2010-03-17 18:14:19
オカダさん、こんばんは。
小栗康平監督によって、映画化もされました。
カンヌで賞をとったり、当時話題になったことを覚えています。
でもその頃子育て真っ最中で、観る余裕が全く無かったですが。
『死の棘』読まれたら、また是非感想などお聞かせ下さいませ。。

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