子供のころから読書感想文ほど苦手なものはなかった。
大人になってもそれは同じ。読後感を綴るなんておこがましくてできないのだけれど、
読んだ証としてこのブログに心に残った本を今まで数冊紹介してきた。
最近、対極にあるともいえる全くタイプの違う本を2冊を読了した。
それは浅田次郎著「おもかげ」と塩田武士著「罪の声」。
私の本の選択は殆どが新聞の書評にある本、あるいはここ数年の本屋大賞作品からだ。
ただ浅田次郎の「おもかげ」はお正月息子が「面白いよ」と勧めて送ってくれた本。
「罪の声」は2016年本屋大賞第3位。図書館に予約して1年待ってやっと順番が回ってきた。
「おもかげ」
定年退職の日、帰宅途中、突然駅で倒れ集中治療室に運ばれることとなる主人公。
意識不明の死の淵で、彼は次から次へと不可思議な体験をしていく。
華やかで美しい女性、落ち着いたしっとりとした女性たちとデートを重ねる。
その中で彼の不幸な生い立ちを私たち読者は知っていくのだか、それは涙なくては読めない。
その女性たちが誰であるかは、ここでは謎にしておく。読んでのお楽しみ。
どこか「地下鉄に乗って」の作品と重なるところがあり、最後のドンデン返しはまさに浅田次郎の世界。
やっぱり彼の作品は素晴らしい!優しさと温かさとユーモアと全てが織り込まれた浅田ワールド。
必ず号泣させられる浅田次郎の作品の数々。まだまだ読むぞ~!
塩田武士著「罪の声」
皆さんは今から30数年前のグリコ森永事件を覚えていらっしゃるだろうか。
グリコの社長が誘拐され、次から次へとメディア、警察へ挑戦状、脅迫状が送られてきたてきた。
森永の青酸カリ入りのお菓子が市場に出回り、私たちを震撼とさせたあの事件。
この事件で森永は会社が傾き、倒産寸前だったとも聞く。
そこで思い出すのは当時夫の会社の取引先のひとつに「森永」があったこと。
絶対安全だからと、当時森永に出向していた社員が何とか売り上げに協力してほしいとお菓子を売りに来たそうだ。
そんなお菓子を大量に買って夫が持ち帰ってきた。なんら恐れることなく美味しい美味しいと言い食べた私たち。
この作品はその事件を題材としたフィクションである。
ここでは「ギンガ・萬堂事件」。すでに時効となった事件を一人の新聞記者が追っていく。
複雑に人と人が絡んでいき、その関係が覚えられない。最後まで読めるだろうかと半分ぐらいまでは心配だった。
が、後半は徐々に絡んだ糸が解けていき、一気に読み進んだ。
迷宮入り未解決となったグリコ森永事件。フィクションとはいえ、実に見事な筋立てとなっている。
本当にこうであったのではないかと思ってしまうリアリティーさがあった。
やや読みづらい部分もあったが、読み終えると一読者私にとって非常に印象に残る衝撃的な作品となった。