ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

相手のテリトリー

2019-11-03 08:30:32 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題
「おかしい!」10月31日
 『奈良の小学校「パワハラ」 市教委否定 訴えた4教諭欠勤』という見出しの記事が掲載されました。大和郡山市立小学校の教諭男女4人が『9月初めから体調不良で学校を休み、理由として上司や同僚6人からのパワーハラスメントやいじめを訴えている』件について報じる記事です。
 とても不可解な記事です。まず、4人が「欠勤」という点です。もし本当に欠勤であるならば、4人とも処分を受けることになるはずです。病休でも有給でもなく、2ヶ月間欠勤が続くということは、充分な懲戒理由となります。『医師の診断書を提出した上で~』とあるのですから、欠勤という表現は適切ではないと考えます。
 しかしこれは些細な問題です。大きな疑問は、『学校や市教委は校内で聞き取りをし、「パワハラなどは確認できなかった」と結論』という部分についてです。4人は、「上司や同僚から~」と訴えているのです。上司とは常識的に考えて校長や副校長です。そうだとすれば、訴えられた当事者が聞き取りをするなど考えられません。かといって、人事に関する聞き取りを同僚の教員が行うこともあり得ません。校内で聞き取りをしたというのは、誰がしたのでしょうか。
 考えられるのは市教委の人事担当者が聞き取りをしてというケースです。しかしそうであるならば、校内で聞き取りをするというのは、非常にまずい対応です。当然、関係者を一人ずつ教委に呼び、複数の担当者で聞き取りをし、供述内容を書面化し、聞き取りをした相手に読ませ、内容を確認させた上で、確認印を押させるという手順を取るべきです。
 人間の心理には、テリトリー意識が作用するといわれています。自分の縄張りと意識できる場所では、精神的優位に立つことができるとされています。つまり、加害が疑われる教員にとって学校は自分の縄張り、テリトリーであり、尋問者である教委の担当者に対して心理的優位に立つことができ、その分ウソの供述が可能になるのです。
 ですから、こうしたケースでは必ず教委という場所、教員のテリトリー外で聞き取りを行うのが常道です。そして、言った言わないという水掛け論にならないように、確認印を押させるのです。今回の事案では、加害者とされる教員は6人ですから、一人一人別々に口裏合わせが出来ないような状況で聞き取りすれば、自ずから事実が明らかになってくるものなのです。
 そうした形を取らず、加害者側(?)に有利な状況での聞き取りでハラスメント無しという結論を出したのであれば、隠蔽の意図があったと疑われても仕方ありません。さらに、聞き取りを行った対象が明記されていません。こうした人権侵害が疑われる事例では、加害者と被害者だけでなく、第三者の証言を得ることが必要です。どの範囲の関係者まで聞き取りを行ったのか、それによっても初めからある方向に結論を導こうとしたという疑いが生じます。
 教委が、一方に荷担していたという疑いをもたれてしまえば、ことは当該校に留まらず、市の教育行政全てに悪影響を与え、市民の不審をかうことになります。市教委は、結論だけでなく、聞き取りの範囲や対象、態勢等もメディアに明らかにし、信頼確保に努めるべきです。
 
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