ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

それなら止めちゃえば

2024-06-03 08:02:23 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「法改正を」5月29日
 『「健康診断 裸に不安」「必要で事前に説明」 横浜市立小 保護者の投稿機に物議』という見出しの記事が掲載されました。『学校の健康診断で上半身裸になる必要はあるか、それとも着衣で大丈夫なのか? ネット上で議論がやまない』という状況について報じる記事です。
 この問題については、以前から議論になっていました。記事では、『文部科学省は今年1月、正確な検査・診察に支障のない範囲で体操服などの着衣を可とする通知を全国の教育委員会などに出した』ことや『(着衣の場合でも)皮膚や心臓などの疾患の有無を確認するため「必要に応じて体操服・下着をめくって視触診したり、聴診器を入れたりする場合があることについて児童生徒や保護者に事前に説明する」』としていることを説明しています。
 専門家の意見も紹介し、『きぬ擦れの音が入りやすく、呼吸音の十分な診断は難しい』『脊柱がねじれを伴って左右に曲がる脊柱側弯症については「体操着を着て立ったまま前屈してもらえば後ろから顕著なゆがみは確認できる」』など、着衣を後押しする意見、着衣では限界があるとする見解が入り乱れている状況を伝えています。
 私は、『学校健診は限られた条件でスクリーニングするもの。予防医療は苦痛がないことが大事。医学的理想を追わず、安心と快適さを優先すべき』という京都大名誉教授川村孝氏の考え方に賛成です。つまり、予防医学的には最善とは言えなくても、上半身裸に不安感や拒否感を抱く子供の心の安定を重視して、子供が望めば着衣OKとする、を全国共通の方針とするということです。
 それでも、教員の考え方によっては「無言の圧力」を感じたり、子供同士で「ペッタンコのくせになに恥ずかしがってるの。自意識過剰じゃない」などという目で見られることを恐れたりして思いを口にできない子供もいるかもしれません。だとすれば、「着衣とする」を原則として通知してしまうという手法が検討されてもよいように思います。その方が秘かに傷付く子供をなくすことができますから。
 現実的な話はここまで、少し空想してみたいと思います。学校健診は、学校保健法によって、「毎学年定期に~行わなければならない」と定められている学校の「義務」です。この規定は、学校が多忙ではなく、牧歌的で余裕のあった時代に定められたものです。家庭が貧しく、医師にかかれない子供がいた、あるいは地域によっては医師不在で、学校で行わなければ医師の診断を受けることなく成長してしまう子供がいた時代でもあります。
 また、教員が「先生」で、学校や教員が尊敬され、その見解や判断が抵抗なく受け入れられた時代の規定でもあります。今、こうした条件は全て変わってしまいました。教員は多忙化し、多様化した保護者は相反する要望を学校にぶつけてくる、学校や教員は尊敬の対象ではなく、批判の対象で、批判はSNSなどで拡散していく、そんな時代です。
 法を改正し、健康診断を義務ではなく、「必要と判断したときには行うことができる」としてしまうのです。つまり、健康診断は行わないのが通常であり、パンデミック等で必要となったときには、校長の判断で行うという形にするのです。
 我が子の健康管理は各家庭で、ではどうでしょうか。

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