ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

大人になったら役に立つ、は×

2024-06-24 08:07:31 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「どういうこと?」6月16日
 日本芸術文化振興会理事長長谷川眞理子氏が、『生成AI時代の世界観 消える「こつこつ」の先』という表題でコラムを書かれていました。その中で長谷川氏は、『記憶も検索も作文も、AIに丸投げのアウトソーシングが可能になったあとは、どんな人間が育ち、どんな社会を作るのだろう?おそらく、今までとは違う人生観、世界観を持つ人たちが育つようになり、まったく違う社会になるのではないか』と書かれていたのです。
 そして具体的には、『「こつこつ働く」価値観』はなくなると予想なさっているのです。「こつこつ~」とは、『努力した成果が、すぐその日に得られるのではない。しかし、将来には得られるだろう。その未来のために「こつこつ働く」』という、『1万年前の農耕・牧畜・定住生活』によって人類が獲得した価値観なのだそうです。
 長谷川氏の視野が広すぎて、よく理解できませんでした。しかし、「こつこつの消滅」は、何よりも学校教育を直撃する、そのことだけは確信がもてます。学校における学び、特に教科の学習は、そのほとんどが「努力したことの成果がすぐその日に実感できるわけではない」ものだからです。掛け算九九を覚えた日、直ぐに何か良いことが起きるわけではありません。月食と日食の仕組みを理解した日、身の回りの社会は何も変わりません。頼朝が鎌倉に幕府を開いたことを知っても、何の得もありません。
 それにもかかわらず、学校に行きなさい、授業を受けなさいと強制する根源には、「未来のために~こつこつ」の思想があることは間違いありません。いわゆる「勉強」は将来何かを考える、そのための知識を獲得する、考えた末に判断する、判断に基づいて行動することに基盤を培うために行うものだと考えられています。
 しかし、考えることはAIが行い、そのもとになる知識や情報は検索すればすぐ入手でき、判断も求めればAIが下し、実際の行動すらも、バーチャルの中で行うのであれば、人は何も「こつこつ」を必要としなくなるのです。つまり、こつこつ学ぶこと、イコール学校は不要と化すのです。
 昔、星新一氏や小松左京氏、眉村卓氏や豊田有恒氏らが描いた、何もすることがない未来の人類の世界が現実となると言えば大袈裟でしょうか。人類の未来などという大きな問題については手に余りますが、学校教育の未来は今すぐに考え始めなければならない問題のように思います。

 

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