ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

無理筋

2019-11-04 08:03:32 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「無理筋」11月1日
 『加害教諭4人給与停止 神戸市教委 同僚いじめ「分限処分」』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『市教育委員会は31日、加害教諭4人を分限処分にした。懲罰の意味合いで行う懲戒処分とは異なり、校務継続に支障が出るとの点から市が独自に対象を拡大して可能になった』ということです。
 10月24日の記事でもふれた条例改正の結果が、早くも実施された格好です。今後の動向が注目されます。公立学校の教員の処分には、分限処分と懲戒処分があります。分かりやすく言えば、前者は、「こんなこともできない」教員に対して行われるもので、後者は「こんなことをしてしまった」教員に対して行われるものです。
 例えば、授業が成り立たない、学級経営ができない、保護者からの苦情に対応できない、子供間のトラブルに対処できないなど、「~できない」度合いが甚だしい教員は、分限処分を受けることになります。私が教委勤務時代に担当していた「指導力不足教員研修」の受講者は、「できない」教員であり、研修を経てもなお指導力が回復せず、授業も学級経営も円滑に行うことが出来なかった者は、分限免職処分を受けました。
  一方、女児にわいせつ行為をした、酔っぱらって民家に侵入し住人を殴ったなど、犯罪行為などを「してしまった」教員は、例え示談等が成立し、刑事罰を免れたとしても懲戒処分されるのです。
 懲戒処分は、被害者が存在し、その訴えがあり、警察の捜査が行われるなど、事実関係の確認が客観的に行われます。一方、分限処分の場合、保護者との対応がうまくいかなかったという事実はあっても、その保護者がモンスタークレーマーであれば、非は教員にはないことになりますし、子供のトラブルへの対応で問題が解決しなくても、当該児童生徒が札付きの不良だったり、学校の支援体制に大きな不備があったりすれば、教委個人の責任だけを問うことは難しくなります。つまり、客観的な評価が難しいケースが多く、それだけに処分後に法的な争いに発展することが多いのです。
 今回の神戸市の事件では、加害教諭という言葉が使われていることからも明らかなように、4人は「できなかった」教員ではなく、「してしまった」教員です。本来ならば、懲戒処分の対象となるべき事案です。それを、分限処分の対象とすることは、行為の有無とは別に、処分権の濫用とされる可能性が高いと思われます。教委にとっては、大冒険です。
 4人に対する給与支払いが市民感情に沿わず批判が出たための緊急避難的対応だったと思われますが、もし訴えられて敗訴すれば、今後の教育行政に大きなダメージとなります。また、懲戒処分であれば、教委が4人の「悪行」について認定し罰するという意思表示になりますが、今まで「できなかった」ので今後も「できないだろう」という校務継続への支障という名目での分限処分では、被害を受けた教員の訴えにも、教員がひどい暴行やパワハラをしたのではという保護者の疑念にも答えないことになります。あくまでも懲戒処分の形をとる方途を探るべきだったように思います。

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