ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

誘導?洗脳?

2024-06-04 08:32:17 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「目的が透ける」6月1日
 『相場急変 早々に投資撤退も 金融教育普及へ 企業や政府は注力』という見出しの記事が掲載されました。『「投資を続けていいのか不安だ」。日経平均株価が急落した4月、SNS上ではこうした投稿が数多くあった(略)相場の急な変動にショックを受け、早々に撤退する人もいるという。今夏から金融教育の新たな取り組みが始まるが、投資の裾野を広げる効果は期待できるのか』という問題意識で書かれた記事です。
 違和感を覚えるのは私だけでしょうか。金融教育の目的はと言えば、金融についての正確な知識を得て、さまざまな金融サービスを利用して、自分の生活を豊かにする能力と意思を培う、ということであるはずです。
 しかし記事では、金融教育に、「投資の裾野を広げる効果」を期待すると言っているのです。これでは、多くの国民が投資を行うことで投資会社が潤うことが目的だと言っているようなものです。当然のことですが、投資は個々人が自分の生涯設計、資産、自分なりの判断で行うものです。投資を増やすか減らすか、何に投資するか、は個人の判断ですから、「今は投資を控え、投資してある資産は回収しておこう」という判断をすることは何も悪いことではありません。
 でも、投資の裾野を広げることを期待した教育ということは、多くの人が投資を控えるような経済局面であっても、積極的に投資額を増やしていくような判断をする人を育てるということです。その場合、投資に走った人の多くが損をする結果になることが予想されます。そして儲かるのは投資関連企業だけです。
 そんな一部の企業だけの利益になる偏った価値観を植え付けることを公教育で行ってよいのでしょうか。そんな疑問が消えません。もちろん、我が国では、先進諸外国に比べて、貯蓄を好み投資を敬遠する傾向が甚だしいのは事実ですし、その是正も必要であると思います。しかしあくまでも、投資と貯蓄のバランスの取れた資産形成が望ましい姿であるはずで、投資=善的な価値観を押し付けるのは行き過ぎです。
 この記事を書いた記者は、「投資の裾野を広げる効果」を期待するという記述に違和感を覚えなかったのでしょうか。それは教育ではなく、誘導や洗脳と呼ぶべきものだということに。

 

コメント
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