ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

集団走

2014-07-07 06:08:41 | Weblog

「世代論」7月3日
 『羽生氏復位第72期名人戦座談会』という特集記事が掲載されました。その中で羽生氏は、羽生世代の強さの理由を訊かれ、『同世代でトップクラスがたくさんいるのは、気持ちの面でも非常に心強い。将棋の世界はマラソンを走っているような感覚があります。一人で速く走るのはきついけれど、グループの中で走り続ける方が速く走れます』と答えています。
 将棋界に詳しくない方のために補足すると、将棋界ではこれまで強さのピークは20代から30代前半と言われてきました。しかし、その常識がひっくりかえったのです。羽生氏と同じ世代の43~45歳の、森内竜王、佐藤永世棋聖、郷田前棋王、藤井元竜王、丸山元名人らが今もトップクラスを形成しているのです。
 さて、ここで注目したいのは、羽生氏の「グループの中で走り続ける」という言葉です。私は自分の教員生活を振り返ったとき、教員にも当てはまると思いました。私は、教員としてそのほとんどの期間を社会科の研究に費やしてきました。初めて教員になった品川区では、社会科研究部に所属しました。名簿上は60人以上の部員がいることになっていましたが、毎回出席するのは20人ほどでした。その中に、私と同時採用された新任の教員が4人いました。この4人組は研究はもちろん、研究会後の飲み会でも一緒でしたし、その後に4人だけで2次会に行って話し込むこともたびたびでした。私の所属校はお世辞にも研究熱心な学校ではなく、授業案づくりや教材研究はここで切磋琢磨しました。
 また、このブログで再三触れてきた「社会科勉強会」でも、私と同じ年の教員が、4人いました。もちろん、他にもいたのですが毎回出席するのはこの4人だったのです。いい意味でのライバル意識もあり、例会では、お互いの「社会科観」をぶつけ合いました。
 こうした「集団走」は、それぞれが管理職になり、授業から離れ、実践をぶつけ合うことができなくなって自然消滅してしまいましたが、怠け者で人見知りな私が、十数年も「学び合いの場」をもつことができ、教員としての骨格を作ることができたのは、「集団走」の仲間がいたからだと思います。
 今の若い教員の皆さんは、ともに走る仲間がいるのでしょうか。実は、先ほどあげた羽生世代の中でも中核をなす、羽生・森内・佐藤の3人にはある共通点があります。それはまだ一人前のプロ棋士でなかった十代の頃、彼らの才能を見抜き、共同研究の場通称「島研」を作り彼らの才能を伸ばした島朗初代竜王との接点です。島氏の存在がなければ、羽生世代の集団走が実現したかは危ういものがあります。先輩世代の教員は、あるいは管理職は、教委は、若い教員が集団で走ることができる環境を作ることを自らの使命としてほしいと思います。

 


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