ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

本音が出た

2014-09-04 08:17:34 | Weblog

「本音が出た」8月30日
 『子供の貧困 教育、生活対策重点に』という見出しの記事が掲載されました。政府が29日閣議決定した「子供の貧困対策大綱」について報じる記事です。主な施策として、教育、生活、就労、経済の4分野での支援があげられていますが、主な教育支援としてあげられた4項目を見ると、学校教育に対する政府・文部科学省の本音が見える気がします。
 『・SSWの増員、・高校生に対する奨学給付金増額、・所得連動返還型奨学金の導入準備、・生活困窮世帯への学習支援』という4項目ですが、いずれも学校における授業の充実に結び付くものではありません。しかし、経済的に豊かな家庭は子供を塾に通わせたり、家庭教育をつけたり、通信教育等の機会を与えたりしているのに対し、貧困家庭ではそうした措置をとることができないというのが、基本的な格差問題として存在しているのです。
 その結果、中学卒業段階で、学力格差が生じ、その後の人生における経済格差を再生産してしまうという悪循環が問題になっているのです。こうした格差を解消する手段として従来は、学校での授業を充実させ、授業が分からないという子供をなくし、塾などに行かなくても希望の高校に進めるようにするという「建前」が語られていました。実際は、家庭の経済力と子供の学力には切っても切れない関係があることは認識していながらも、表向きは、必要な学力は学校の授業だけで身に着けることが出来ます、としていたのです。あたかも、警察庁が「パチンコで換金が行われているとは承知していない」という建前論を述べているように、です。
 そうした視点でみると、今回の貧困家庭への「主要」施策から、学校の授業の充実に関する項目、教員の研修や授業時間の確保、教員定数の増加や学習内容の精選といったものが除かれたということは、文部科学省も、子供の学力格差は学校以外の原因で生じる部分が大きい、と認めたことを意味します。
 長年、学校教育に携わってきた者として、学校の無力さを指摘されたようで寂しい思いはありますが、一方でこうした方向転換が、全国学力テストの結果を公開し、学力格差の原因を学校の教員の努力不足に還元してその責任を追及するという間違った施策の見直しにつながるのであれば、悪いことばかりではないとも思います。

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