ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

論理的整合性

2014-07-08 07:32:00 | Weblog

「論理的整合性」7月3日
 『小中一貫校を提言』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、教育再生実行会議が、『「小中一貫教育学校」を制度化し、現行の小学校6年、中学校3年の「6・3制」を市区町村の判断で「4・3・2制」「5・4制」など地域の状況に合わせて決められるよう提言』したということです。
 この学校制度改革が必要な理由として、記事では、『中1の壁』への対処であると書かれています。具体的には、『学級担任が基本的に全教科教える小学校に対し、中学校では教科担任制に変わり、学習内容も高度になる。そのため、環境の変化に適応できず~』という点と、『子供の体の発達が、6・3制の導入時に比べ2年程度早まっている~(中略)~小、中の切れ目に第2次性徴があたり、これを円滑に乗り切る』の2点が挙げられています。
 さらに、既に特例校として実施している学校で検証されているメリットとして、『中学1年に当たる7年生の学習内容の一部を6年生で先取りすることで、8~9年生の授業に余裕が生まれ、柔軟な授業編成が組める』『上級生は下級生に見られていると意識するのか。子供の問題行動は少ない』が挙げられています。
 必要な理由もメリットも、長年教委に勤務した者として、「間違ってはいない」と思います。しかし、論理的整合性に欠けているとの思いも抱きます。教科担任制と学級担任制の切れ目ということであれば、「6・3」であろうが「5・4」であろうが、時期がずれるだけで、変化はないはずです。私が知る限りでは、12歳で切り替わるよりも11歳で切り替わった方が適応しやすいという研究結果は出ていないはずです。学習内容が高度になる、という点についても、学習内容を規定しているのは、学習指導要領であって「6・3制」か「5・4制」かという問題とは関係がありません。
 メリットについても、学習内容の先取りについては、特例だからこそできることで、現行学習指導要領の趣旨は、基本的に先取りを望ましいものとしないということになっています。もし、先取りが望ましいということになれば、1年生から各学年で、1/10ずつ先取りを行い、9年生では、授業のほとんどを受験対策に費やすというような教育課程が容認されることになってしまいます。実際問題として、「名門校」への進学を願う保護者はこうした措置を望むでしょうし、それを特色にする学校が生まれるでしょう。それをよしとするのであれば話は別ですが。
 上級生としての自覚問題において、学校の区切りは中立的にしか作用しません。現行制度下では、6年生は最上級生としての自覚をもって校内行事などでも責任感をもって行動しますが、一貫校で9年生がいる状況になれば、そうした自覚やリーダーシップは発揮されなくなってしまいます。
 記事では、公平性を保つためか、小中一貫校の問題点も掲載していますが、どんな改革にもメリットデメリット双方があるのは当然であり、ここでは問題点を強調して反対するつもりはありません。ただ、理由やメリットについては、きちんとした理論的整合性が求められると考えます。そうでなければ、そもそも理由として、メリットとして成り立っていないことを前提にした間違った議論になってしまうからです。
 なお蛇足ですが、「中1の壁」問題についていえば、記事の仮説が正しいとすれば、小学校6年段階における専科授業の実施率が高い自治体ほど、適応が容易で不登校やいじめの発生割合が少なくなるはずです。例えば、東京都は専科率が高い地域ですが、不登校やいじめの発生割合も低いのでしょうか。そうした検証なしに安易に「中1の壁」を持ち出すのは疑問です。

 


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