ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

ねらいはどのレベル?

2014-07-25 07:37:33 | Weblog

「焦点化ということ」7月19日
 『人呼んで「ハイブリット留学」』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、「ハイブリッド留学」とは、『講義は日本語で受け、現地の生活で英語力を身に着ける。英語力ゼロでも異文化体験ができるプログラム』なのだそうです。要するに、欧米に留学して『教室内は日本語、ホームステイ先などでは英語』という生活を送るというシステムです。
 『語学力というハードルを下げ、「内向き志向」といわれる学生に「まずは海を渡らせる」のが狙い』ということなのですが、賛否両論があるようです。私は、大学教育については全く分かりませんし、英語教育についても素人です。ただ、「ハイブリッド留学」をめぐる賛否は、我が国が目指す英語教育の到達点をどのように設定するか、という問題意識が共有されていないからではないか、という思いを抱いています。
 例えば、東京五輪が開催される6年後、その時点で大学を卒業した若者がどの程度の英語力を身に着けていればよいのか、と考えてみるのです。「来日した外国人に英語で道を尋ねられたとき英語で教えることが出来る」、「観光業や販売業、飲食業に就いた若者が、来日した外国人の英語の質問に答えるとともに簡単な説明が出来る」、「英語で書類を作成したり、ビジネスの交渉をすることができる」、「学術会議等でも英語の専門用語を駆使し、堂々と渡り合うことが出来る」など様々なレベルが考えられます。
 初めの道を教えるレベルであれば、「ハイブリッド留学」で十分です。小中学校で、外国語しか話せない子供を受け入れるとき、年齢が低いほど、日本語を使った日常的な意思疎通は早くにできるようになります。それに安心して、通訳をつけずに授業を受けさせると、授業内容を全く理解できないという状況に陥ってしまいます。これは、具体的な事物についての内容が多い日常会話と、抽象概念を扱う授業との違いによるものです。どの言語においても、日常会話は「慣れる」ことが習得のポイントになります。つまり、ホームステイ先での会話を重ねればOKなのです。
 一方、大人と対等に日常会話が出来る日本人の小学生に、日本語で法的な内容を含む契約書を作成させようとしてもできません。抽象的な概念とそれを表す言葉や文脈を会得し習熟していないからです。英語である分野について説明したり討論したりできるようになるためには、いくら日常会話を積み重ねても、それだけでは無理なのです。そのためには、専門的に学ぶ講義において英語を使ったコミュニケーションを体験する必要があります。つまり、「ハイブリッド留学」では効果がないのです。
 狙いを明確に設定しなければ、正しい評価はできません。私見では、中高生にこそ「ハイブリッド留学」は相応しいように思います。

 

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