
【詳しく】トランプ大統領 就任100日 成果を強調も反発強まる NHK 2025年4月29日 10時48分
アメリカのトランプ大統領が就任してから29日で100日となります。最優先課題と位置づけてきた不法移民対策や、連邦政府職員の削減など選挙戦で訴えてきた政策を実行し、成果を強調していますが手法が強引すぎるなどとして反発も強まっています。
アメリカのトランプ大統領は29日で2期目の就任から100日となります。
これまでに142の大統領令に署名し最優先課題と位置づけてきた不法移民対策や、政府の支出を減らすとして連邦政府職員の削減や助成金の打ち切りを進めるなど選挙戦で訴えてきた政策を次々と実行してきました。
トランプ政権は国境を越える不法移民の数が大幅に減ったとして国境管理の成果を強調しているほか、実業家のイーロン・マスク氏が率いるDOGE=“政府効率化省”はこれまでに推計で1600億ドル=日本円でおよそ23兆円の予算を削減したとしています。
一方で、不法移民の国外退去や、連邦政府職員の解雇などをめぐっては手法が強引すぎるなどとして反発も強まっていて、各地で訴訟が相次ぎ、一時的にトランプ政権の政策を差し止めるとした裁判所の決定もでています。
また、外交面では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の早期の終結に意欲を示してきましたが、具体的な成果は示せず、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐっても停戦合意後に戦闘が再開していて、解決の糸口は見いだせていません。
支持率 次第に下がる傾向が続く
アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、各種世論調査の平均値で、トランプ大統領の支持率は、この100日間、次第に下がる傾向が続いています。
政権発足直後の1月27日の時点でトランプ大統領の政権運営を「支持する」と答えた人は、50.5%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は、44.3%でした。
その後、「支持する」と答えた人は次第に下がっていき、先月中旬には「支持しない」と答えた人が上回りました。そして、今月28日の時点では、「支持する」と答えた人は、45.3%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は、52.4%となっています。
このうち経済政策をめぐっては各種世論調査の平均値で、「支持する」と答えた人は42.1%、「支持しない」と答えた人は、55.2%となっています。
一方、移民政策をめぐっては、「支持する」と答えた人は48.2%、「支持しない」と答えた人は、49.6%となっています。
ワシントン・ポストとABCテレビなどが行った世論調査では、トランプ大統領の就任後100日の支持率は39%で、1期目のトランプ政権の42%を下回り、「第2次世界大戦後、最も低い」としています。トランプ大統領は28日、世論調査についてSNSに「この国に自由で公正な報道機関はない。世論調査において、悪い記事を書き不正をする報道機関がある。悲しい」と投稿しています。
アメリカメディアの評価
トランプ政権の発足から100日となるのにあわせてアメリカのメディアはトランプ大統領が公約をどの程度、実現したのかなどについてさまざまな評価をしています。
《ワシントン・ポスト》
ワシントン・ポストは大統領選挙でトランプ氏が掲げた31の主な公約について、達成状況を4つに分類して評価しています。それによりますと31の公約について、今月28日の時点では、
▽「達成」は4、
▽「障害に直面」は6、
▽「実行中」は13、
▽「実行していない」は8としています。
【達成】
このうち「達成」としているのは
▽ほかの国からの輸入品への関税措置、
▽地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱、
▽政敵への報復、それに▽2021年1月の議会乱入事件で起訴された被告への恩赦、の4つです。
【障害に直面】
また、▽不法移民対策としてアメリカで生まれた子どもには両親の国籍にかかわらずアメリカ国籍を与える現在の仕組みを終わらせるとした公約については、反対する州や人権団体から訴訟が相次ぎ、「障害に直面している」としています。
▽「教育省の廃止」についても議会の承認が必要で、訴訟も起きているとして、「障害に直面している」に分類しています。
【実行中】
一方、▽不法移民の大規模な強制送還や
▽石油や天然ガスの生産拡大、
▽ウクライナや中東での戦争の終結など、13の公約については「実行中」としています。
【実行していない】
そのほか、▽インフレを終わらせることや
▽減税、
▽メキシコの麻薬カルテルへの空爆など、8つの公約については、「実行していない」としています。
《FOXニュース》
FOXニュースは100日となるのを前に今月23日、世論調査の結果をもとに「有権者は国境警備については満足しているが、インフレ対策を含むほとんどの課題については不満を抱いている」と報じています。
今月18日から21日にかけてFOXニュースが行った調査では、「最初の100日間で今後の4年間に希望を抱いているか、それとも抱けないでいるか」と尋ねたところ、「希望を抱いている」が38%。「抱けないでいる」が51%でした。
8年前の、トランプ政権1期目の同じ時期に行った調査と比べて、2期目では「希望を抱いている」が7ポイント低くなりました。FOXニュースはトランプ大統領自身や政権の高官がたびたび出演し、政権に近い報道姿勢だと言われますが、トランプ大統領は今月24日、SNSに「私とアメリカを再び偉大にするMAGAについて長年、誤解を生んできた」と投稿し、今回のFOXニュースの世論調査に不満をあらわにしました。
《新興メディア》
トランプ大統領とメディアをめぐっては、2期目の政権発足後、新聞やテレビなど伝統的なメディアに対して厳しい姿勢を見せる一方、インターネットで情報発信する新興メディアとの距離を縮める傾向が見られます。
ホワイトハウスで存在感を見せている新興メディアにはトランプ大統領を擁護する姿勢のメディアが多く、このうちSNSやポッドキャストなどで情報を発信している「デイリー・シグナル」はトランプ大統領のウクライナでの停戦に向けた取り組みや不法移民対策などをたたえています。そのうえでトランプ大統領はレーガン元大統領をはじめ歴代の共和党の政治家が考えつかなかったような「根本的な見直しを多く行っている」と伝えています。
トランプ政権で存在感増す新興メディア なぜ?新興メディアとの距離を縮めているトランプ大統領。トランプ政権とメディアに何が起きているのか、その現場を半年にわたり追った特集記事。
アメリカの株価や通貨のドルなど下落傾向
トランプ大統領の就任後、金融市場では関税政策が世界経済に与える悪影響への懸念からアメリカの株価や通貨のドルなどが下落傾向となりました。
ニューヨーク株式市場では、去年11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利すると減税策や規制緩和への期待感から株価が大きく上昇しました。しかし、就任してからは次第に下落する場面が目立つようになり、ダウ平均株価は今月25日までの間におよそ3300ドル、率にして7%あまりの下落となりました。トランプ政権による関税政策や中国との貿易摩擦が世界経済に悪影響を与えるのではないかといった見方が広がっているためです。
また、ユーロや円に対するドルの価値を表す「ドル指数」は今月25日までにおよそ9%下落し、アメリカのメディア、「ブルームバーグ」は、政権発足から100日間の下落率では少なくともニクソン政権の2期目以降で最大になる見通しだと伝えています。
さらに、債券市場では「相互関税」への懸念から一時、アメリカ国債を売る動きが広がりました。国債が売られて価格が下がると長期金利は上昇する関係にありますが、今月9日未明には10年ものの国債の利回りが一時、4.5%を超えるなど不安定な値動きとなりました。
金融市場では政策運営の不透明さなどを背景に株式、通貨、債券がそろって売られる「トリプル安」となる局面もあるなど、投資家の間でアメリカの資産から資金を逃避させる動きも見られています。
トランプ政策に翻弄される為替相場【経済コラム】
大統領令の数は142に USAIDめぐる見直しも
トランプ大統領は大統領に就任して以降、去年の大統領選挙で訴えてきた政策を次々と実行に移しました。
これまでに署名した大統領令の数は合わせて142に上ります。これはバイデン前大統領が就任以降の100日間に署名した大統領令の3倍以上、また、トランプ大統領の1期目の最初の100日間と比べても4倍以上にあたります。
国内の政策では、最優先課題と位置づけ、直ちに実行するとしてきた不法移民対策を推し進めました。ホワイトハウスは政権発足以降、国境沿いの壁の建設を再開したほか、これまでに「10万人以上の不法移民を国外追放した」としています。
ホワイトハウスは、移民関税執行局が先月、確認したアメリカに不法に入国した人の数は7181人で、バイデン前政権下の前の年の同じ時期と比べて95%減少したとしています。
一方、トランプ政権がギャングのメンバーだとして中米のエルサルバドルに強制送還したメリーランド州の男性について、連邦最高裁判所は今月、誤って強制送還されたとして、アメリカへの帰還を支援するよう求める決定を出しました。ホワイトハウスは「男性はギャングのメンバーでテロリストだ」として強制送還の措置は正当だったと強調していますが、野党・民主党などからは批判が出ています。
トランプ新大統領始動 大統領令次々署名就任式のあとさっそく大統領の権限で政策などを指示する文書に次々と署名
また、トランプ政権は政府の支出削減に向けてDOGE=“政府効率化省”を設置し、連邦政府職員の削減や助成金の打ち切りなどを進めています。
このうち、アメリカの対外援助を行うUSAID=アメリカ国際開発庁をめぐっては職員の解雇や事業の見直しが行われ、ルビオ国務長官は、先月10日、83%の事業を打ち切るとともに残る2割近い事業は国務省のもとで運営する考えを示しました。“政府効率化省”は、これまでに連邦政府職員の削減や助成金の打ち切り、資産の売却などによって、推計で1600億ドル、日本円にしておよそ23兆円の予算を削減したとしています。
一方、支出削減に向けた取り組みに対しては、手法が強引で、急すぎるなどとして反発も強まっていて、“政府効率化省”を率いる実業家のイーロン・マスク氏がCEOを務めるEV=電気自動車メーカー、テスラの不買運動に発展しています。
USAID 突然の本部閉鎖と解雇通告 アメリカでの受け止めは?
【経済政策】様々な関税措置を発動
トランプ政権の2期目で初めてとなる関税措置を発動したのは2月4日、中国に対する追加関税でした。
フェンタニルなどの薬物の流入が続いていることが理由で、当初の関税率は10%でしたが、中国が対抗措置を講じたことで追加関税の応酬となり、現在は「相互関税」も上乗せしてあわせて145%の追加関税を課しています。
貿易摩擦を緩和するため、関税率の大幅な引き下げを検討していると一部で伝えられていますが、トランプ大統領は、中国側が具体的な対応を取らないかぎり引き下げないという考えを示しています。
一方、隣国のカナダとメキシコには薬物や不法移民の流入が後を絶たないなどとして、中国と同じ2月4日に25%の関税を課すと発表しましたが、両国との間で措置を1か月停止することで合意。
その後、先月4日に措置を発動しましたが、3か国の貿易協定に含まれる品目については、当面、除外する措置をとっています。
貿易協定との整合性に加えて、経済的結びつきが強い両国の一部の品目を除外することでアメリカ国内への影響を抑えたいねらいがあるという見方も出ています。
こうした国別の関税に加え、品目別では、▽先月中旬に鉄鋼製品やアルミニウム、▽今月上旬に自動車への関税が、それぞれ発動され、25%の関税がかかっています。
また、特定の自動車部品についても来月3日までに25%の関税を発動するとしています。
トランプ大統領は、部品の生産をアメリカ国内に移す自動車メーカーに支援策を検討していることを明らかにしていますが、多くの部品を海外から調達するメーカーへの影響は大きいという懸念が強まっています。
さらに、今月上旬に発表された相互関税などの措置は世界を大きく揺るがしました。
▽全世界を対象に一律で10%の関税を課す措置は今月5日に、▽貿易赤字が大きい国や地域を対象にした「相互関税」は今月9日にそれぞれ発動。
日本への相互関税は24%に引き上げるとしました。
しかし、相互関税については発動した日のうちに、中国をのぞき、ことし7月9日まで90日間、措置を停止すると発表。
アメリカ経済の先行きへの懸念から金融市場で株安、債券安、ドル安のトリプル安といわれる事態を招き方針変更を迫られた形となりました。
現在は、日本を含めた各国との交渉が進められています。
トランプ政権の関税政策や中国との貿易摩擦は、世界経済に打撃を与えるだけでなく、アメリカ国内にも影響を及ぼし始めています。
トランプ大統領も、貿易赤字の削減やアメリカ国内に製造業を回帰させる目標に向けては「多少の移行期間はある」などと述べ、アメリカメディアは「景気後退の可能性を否定しなかった」などと伝えました。
トランプ政権の頻繁に変わる関税措置をめぐって、首都ワシントンでは、「唯一確かなことは不確実な状況が続くということだ」との声が聞かれ、今後も不透明な政策運営が続くことへの懸念が広がっています。
関税交渉「短期決着は楽観的すぎ」米新大使はどう見る?関税交渉の行方はどうなるのか。“トランプ発言”の真意はどこにあるのか。単独インタビューで迫ります。
【外交政策】前政権とは異なる外交姿勢
「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ政権は、発足直後から前政権とは異なる外交姿勢を相次いで打ち出しています。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐっては、停戦に向けた動きを加速させているものの、解決の糸口を見いだすことができておらず、具体的な成果は示せていません。
《ウクライナ情勢》
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐっては、トランプ大統領は早期の終結に意欲を示しています。ただ、最近では、ロシアとウクライナのどちらか一方が停戦の実現を困難にした場合、仲介をやめる可能性にも言及し始めています。
2月に行われたトランプ大統領とプーチン大統領の電話会談のあと、トランプ政権はサウジアラビアでロシアとウクライナ双方と実務者レベルで協議を行い、黒海における安全な航行の確保などで合意したと発表されました。ただ、ロシア側から合意の発効にあたって制裁の一部解除などの条件が提示されるなど、ウクライナへの攻撃は続いています。
こうしたことから、トランプ大統領がプーチン大統領に対していらだちを見せる場面もみられ、ロシア側の対応次第では、関税や制裁の措置をとる考えを重ねて示しています。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領とは、2月にホワイトハウスで行われた首脳会談で、激しい口論に発展し、関係がぎくしゃくし、その後も、「ロシアは応じる用意があるがゼレンスキー大統領と合意する方がより難しい」と発言するなど、ウクライナ側への批判を強めています。トランプ政権は和平案のとりまとめを急いでいますが、ロシアとウクライナ双方の溝は埋まっていません。
《ヨーロッパ》
ウクライナ情勢をめぐって、アメリカとヨーロッパ各国と立場の違いがみられます。
トランプ大統領は、ヨーロッパ各国がより役割を果たすべきだという考えを示していて、NATO=北大西洋条約機構の加盟国に対し、GDPに占める国防費の割合を目標としてきた2%ではなく、5%に引き上げるべきだと主張しています。また、デンマークの自治領グリーンランドに対し、トランプ政権は安全保障を理由に取得を目指すと発言していて、ヨーロッパ側からは批判や懸念の声が上がっています。
《ガザ情勢》
トランプ大統領は就任後、イスラエルのネタニヤフ首相とホワイトハウスで2回会談していて、1期目に続いて、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にしています。パレスチナのガザ地区をアメリカが長期的に所有し再建するとした上で、地区の住民を別の場所に移住させると発言した際には、中東諸国だけでなく世界各国から反発や懸念の声が上がりました。
イスラエルとハマスの停戦をめぐっては、一部の人質が新たに解放され、トランプ大統領は協議の進展を強調していますが、ガザ地区の停戦合意をめぐっては6週間の停戦のあと、延長に向けた協議が行き詰まり、イスラエルのガザ地区への攻撃が再開されています。
《イラン》
イランの核開発をめぐり、トランプ政権はイランと協議を始めています。トランプ大統領はイランの核兵器の保有を認めておらず、「非常に厳しい措置をとる必要が生じればそうする」と述べ、イランがアメリカの求めに応じなければ、軍事行動も辞さない構えを示し、けん制しています。
《中国》
政権の外交や安全保障を担う要職に対中強硬派とされる人材を起用し、政権発足当初から厳しい姿勢を示しています。また、トランプ政権の関税措置を受け、米中の貿易摩擦が激しくなっています。トランプ大統領は中国の習近平国家主席との間でやりとりがあったとしていますが時期など具体的なことは明らかになっていません。
《日本》
トランプ大統領は2月に首都ワシントンで石破総理大臣と初めて会談し、日米同盟をインド太平洋地域の平和と安全の礎と位置づけ、同盟の抑止力と対処力を強化することで一致しました。また、就任直後には日米豪印4か国のクアッドの外相会合を開き、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力の強化を確認しています。
一方、トランプ大統領は日米安全保障条約について「私たちは彼らを守るが、彼らは私たちを守る必要はない」と述べ、重ねて不満をにじませています。
“トランプ発言”で見えてきた 停戦外交行き詰まりのわけは?なぜトランプ氏の停戦外交は思惑通りに進んでいないのか。100日の発言の変遷から見えてきたものとは?
人権団体“人権侵害する政策や大統領令など100件確認”
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は、トランプ大統領の就任から100日までの間に、人権を侵害する政策や大統領令などを100件確認したと発表しました。
このなかには、▽パレスチナ問題に関する政治的な活動をした学生の拘束やビザの取り消しといった言論の自由を脅かすものや、▽DEIと呼ばれる多様性などを推進する政策を停止する大統領令、それに、▽難民の受け入れプログラムを無期限に停止する大統領令などがあげられています。
また、▽医薬品などの安全性を審査する政府機関の職員の解雇は、公衆衛生を危険にさらすほか、▽環境規制の緩和は、健康に悪影響を及ぼしたり温室効果ガスの排出量の増加につながったりするなどとして、これらも人権侵害にあたるとしています。
「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」のワシントン事務所の副所長を務めるニコール・ウィダーシャイムさんは、NHKの取材に対し「人権侵害が生活のほぼすべての分野で起きている。100件で止めたがもっと多く列挙することもできた」としています。
そして「裁判所や判事が停止すべきだなどと判断したことをホワイトハウスがやり続けている状況を目の当たりにしている。議会も政府を監督する役割を十分に果たしていない」と述べ三権分立が機能しなくなりつつあるという懸念を示しました。
また、こうした状況に対し抗議しようとする動きがある一方で「発言をためらわせる恐怖の雰囲気が存在する」としていて、「アメリカが民主主義国家であることを示すためにも、言論の自由や非暴力的な抗議の権利は守られなければならない」と強調しました。
専門家「『ハネムーン期間』は明らかに終了」
アメリカ政治や世論の動向を研究しているマサチューセッツ大学アマースト校のタティシェ・ンテタ教授は「トランプ大統領の支持率は芳しくない。『ハネムーン期間』は明らかに終了したと言える。現状はトランプ大統領や政権が望んでいたものではないだろう」と述べトランプ政権に対する国民の支持は低下傾向にあると指摘しています。
その理由については「最も否定的な結果をもたらしたのは経済政策だ。長年の同盟国に対して関税措置をめぐって行ったり来たりして、世界市場や国内市場に混乱を引き起こした。トランプ大統領はアメリカの経済的苦境、とりわけ物価高騰への対応を期待されて選ばれた。現状は多くのアメリカ国民が求めていたものとは言えない」と述べ、関税措置などトランプ政権の経済政策に懐疑的な見方をする国民が多いと分析しています。
そして「トランプ大統領は関税政策で大きな賭けをしている。経済が好転し、賭けが成功すれば状況が変わる可能性はある」と述べ、今後の経済運営が国民の支持を大きく左右すると指摘しています。
一方、国民から評価されている政策について尋ねたところ「アメリカ国民はトランプ大統領の移民政策について一定程度肯定的な反応を示している。大多数が、来年には法的な手続きを経ていない移民が減少すると考えていて、これはトランプ大統領の厳しい政策と関係している」との見方を示しました。
岩屋外相「関税措置をめぐり 日米の経済関係に影」
岩屋外務大臣は、訪問先のニューヨークで記者団に対し「総じて日米関係は良好に進んできた。首脳会談も早期に実施し、日米関係を高みに引き上げていこうということで一致できている。『自由で開かれたインド太平洋』を日米でしっかり進めていこうということについては、まったく揺らぎがないと感じている」と述べました。
一方、「アメリカの関税措置をめぐり、日米の経済関係に影が差しているのは事実なので早く日米協議によって乗り越えていかなければならない。しっかりと協議を重ね、双方がウィンウィンになり、国際公益も確保されていく取り組みを進めていきたい」と述べました。
アメリカのトランプ大統領が就任してから29日で100日となります。最優先課題と位置づけてきた不法移民対策や、連邦政府職員の削減など選挙戦で訴えてきた政策を実行し、成果を強調していますが手法が強引すぎるなどとして反発も強まっています。
アメリカのトランプ大統領は29日で2期目の就任から100日となります。
これまでに142の大統領令に署名し最優先課題と位置づけてきた不法移民対策や、政府の支出を減らすとして連邦政府職員の削減や助成金の打ち切りを進めるなど選挙戦で訴えてきた政策を次々と実行してきました。
トランプ政権は国境を越える不法移民の数が大幅に減ったとして国境管理の成果を強調しているほか、実業家のイーロン・マスク氏が率いるDOGE=“政府効率化省”はこれまでに推計で1600億ドル=日本円でおよそ23兆円の予算を削減したとしています。
一方で、不法移民の国外退去や、連邦政府職員の解雇などをめぐっては手法が強引すぎるなどとして反発も強まっていて、各地で訴訟が相次ぎ、一時的にトランプ政権の政策を差し止めるとした裁判所の決定もでています。
また、外交面では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の早期の終結に意欲を示してきましたが、具体的な成果は示せず、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐっても停戦合意後に戦闘が再開していて、解決の糸口は見いだせていません。
支持率 次第に下がる傾向が続く
アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、各種世論調査の平均値で、トランプ大統領の支持率は、この100日間、次第に下がる傾向が続いています。
政権発足直後の1月27日の時点でトランプ大統領の政権運営を「支持する」と答えた人は、50.5%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は、44.3%でした。
その後、「支持する」と答えた人は次第に下がっていき、先月中旬には「支持しない」と答えた人が上回りました。そして、今月28日の時点では、「支持する」と答えた人は、45.3%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は、52.4%となっています。
このうち経済政策をめぐっては各種世論調査の平均値で、「支持する」と答えた人は42.1%、「支持しない」と答えた人は、55.2%となっています。
一方、移民政策をめぐっては、「支持する」と答えた人は48.2%、「支持しない」と答えた人は、49.6%となっています。
ワシントン・ポストとABCテレビなどが行った世論調査では、トランプ大統領の就任後100日の支持率は39%で、1期目のトランプ政権の42%を下回り、「第2次世界大戦後、最も低い」としています。トランプ大統領は28日、世論調査についてSNSに「この国に自由で公正な報道機関はない。世論調査において、悪い記事を書き不正をする報道機関がある。悲しい」と投稿しています。
アメリカメディアの評価
トランプ政権の発足から100日となるのにあわせてアメリカのメディアはトランプ大統領が公約をどの程度、実現したのかなどについてさまざまな評価をしています。
《ワシントン・ポスト》
ワシントン・ポストは大統領選挙でトランプ氏が掲げた31の主な公約について、達成状況を4つに分類して評価しています。それによりますと31の公約について、今月28日の時点では、
▽「達成」は4、
▽「障害に直面」は6、
▽「実行中」は13、
▽「実行していない」は8としています。
【達成】
このうち「達成」としているのは
▽ほかの国からの輸入品への関税措置、
▽地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱、
▽政敵への報復、それに▽2021年1月の議会乱入事件で起訴された被告への恩赦、の4つです。
【障害に直面】
また、▽不法移民対策としてアメリカで生まれた子どもには両親の国籍にかかわらずアメリカ国籍を与える現在の仕組みを終わらせるとした公約については、反対する州や人権団体から訴訟が相次ぎ、「障害に直面している」としています。
▽「教育省の廃止」についても議会の承認が必要で、訴訟も起きているとして、「障害に直面している」に分類しています。
【実行中】
一方、▽不法移民の大規模な強制送還や
▽石油や天然ガスの生産拡大、
▽ウクライナや中東での戦争の終結など、13の公約については「実行中」としています。
【実行していない】
そのほか、▽インフレを終わらせることや
▽減税、
▽メキシコの麻薬カルテルへの空爆など、8つの公約については、「実行していない」としています。
《FOXニュース》
FOXニュースは100日となるのを前に今月23日、世論調査の結果をもとに「有権者は国境警備については満足しているが、インフレ対策を含むほとんどの課題については不満を抱いている」と報じています。
今月18日から21日にかけてFOXニュースが行った調査では、「最初の100日間で今後の4年間に希望を抱いているか、それとも抱けないでいるか」と尋ねたところ、「希望を抱いている」が38%。「抱けないでいる」が51%でした。
8年前の、トランプ政権1期目の同じ時期に行った調査と比べて、2期目では「希望を抱いている」が7ポイント低くなりました。FOXニュースはトランプ大統領自身や政権の高官がたびたび出演し、政権に近い報道姿勢だと言われますが、トランプ大統領は今月24日、SNSに「私とアメリカを再び偉大にするMAGAについて長年、誤解を生んできた」と投稿し、今回のFOXニュースの世論調査に不満をあらわにしました。
《新興メディア》
トランプ大統領とメディアをめぐっては、2期目の政権発足後、新聞やテレビなど伝統的なメディアに対して厳しい姿勢を見せる一方、インターネットで情報発信する新興メディアとの距離を縮める傾向が見られます。
ホワイトハウスで存在感を見せている新興メディアにはトランプ大統領を擁護する姿勢のメディアが多く、このうちSNSやポッドキャストなどで情報を発信している「デイリー・シグナル」はトランプ大統領のウクライナでの停戦に向けた取り組みや不法移民対策などをたたえています。そのうえでトランプ大統領はレーガン元大統領をはじめ歴代の共和党の政治家が考えつかなかったような「根本的な見直しを多く行っている」と伝えています。
トランプ政権で存在感増す新興メディア なぜ?新興メディアとの距離を縮めているトランプ大統領。トランプ政権とメディアに何が起きているのか、その現場を半年にわたり追った特集記事。
アメリカの株価や通貨のドルなど下落傾向
トランプ大統領の就任後、金融市場では関税政策が世界経済に与える悪影響への懸念からアメリカの株価や通貨のドルなどが下落傾向となりました。
ニューヨーク株式市場では、去年11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利すると減税策や規制緩和への期待感から株価が大きく上昇しました。しかし、就任してからは次第に下落する場面が目立つようになり、ダウ平均株価は今月25日までの間におよそ3300ドル、率にして7%あまりの下落となりました。トランプ政権による関税政策や中国との貿易摩擦が世界経済に悪影響を与えるのではないかといった見方が広がっているためです。
また、ユーロや円に対するドルの価値を表す「ドル指数」は今月25日までにおよそ9%下落し、アメリカのメディア、「ブルームバーグ」は、政権発足から100日間の下落率では少なくともニクソン政権の2期目以降で最大になる見通しだと伝えています。
さらに、債券市場では「相互関税」への懸念から一時、アメリカ国債を売る動きが広がりました。国債が売られて価格が下がると長期金利は上昇する関係にありますが、今月9日未明には10年ものの国債の利回りが一時、4.5%を超えるなど不安定な値動きとなりました。
金融市場では政策運営の不透明さなどを背景に株式、通貨、債券がそろって売られる「トリプル安」となる局面もあるなど、投資家の間でアメリカの資産から資金を逃避させる動きも見られています。
トランプ政策に翻弄される為替相場【経済コラム】
大統領令の数は142に USAIDめぐる見直しも
トランプ大統領は大統領に就任して以降、去年の大統領選挙で訴えてきた政策を次々と実行に移しました。
これまでに署名した大統領令の数は合わせて142に上ります。これはバイデン前大統領が就任以降の100日間に署名した大統領令の3倍以上、また、トランプ大統領の1期目の最初の100日間と比べても4倍以上にあたります。
国内の政策では、最優先課題と位置づけ、直ちに実行するとしてきた不法移民対策を推し進めました。ホワイトハウスは政権発足以降、国境沿いの壁の建設を再開したほか、これまでに「10万人以上の不法移民を国外追放した」としています。
ホワイトハウスは、移民関税執行局が先月、確認したアメリカに不法に入国した人の数は7181人で、バイデン前政権下の前の年の同じ時期と比べて95%減少したとしています。
一方、トランプ政権がギャングのメンバーだとして中米のエルサルバドルに強制送還したメリーランド州の男性について、連邦最高裁判所は今月、誤って強制送還されたとして、アメリカへの帰還を支援するよう求める決定を出しました。ホワイトハウスは「男性はギャングのメンバーでテロリストだ」として強制送還の措置は正当だったと強調していますが、野党・民主党などからは批判が出ています。
トランプ新大統領始動 大統領令次々署名就任式のあとさっそく大統領の権限で政策などを指示する文書に次々と署名
また、トランプ政権は政府の支出削減に向けてDOGE=“政府効率化省”を設置し、連邦政府職員の削減や助成金の打ち切りなどを進めています。
このうち、アメリカの対外援助を行うUSAID=アメリカ国際開発庁をめぐっては職員の解雇や事業の見直しが行われ、ルビオ国務長官は、先月10日、83%の事業を打ち切るとともに残る2割近い事業は国務省のもとで運営する考えを示しました。“政府効率化省”は、これまでに連邦政府職員の削減や助成金の打ち切り、資産の売却などによって、推計で1600億ドル、日本円にしておよそ23兆円の予算を削減したとしています。
一方、支出削減に向けた取り組みに対しては、手法が強引で、急すぎるなどとして反発も強まっていて、“政府効率化省”を率いる実業家のイーロン・マスク氏がCEOを務めるEV=電気自動車メーカー、テスラの不買運動に発展しています。
USAID 突然の本部閉鎖と解雇通告 アメリカでの受け止めは?
【経済政策】様々な関税措置を発動
トランプ政権の2期目で初めてとなる関税措置を発動したのは2月4日、中国に対する追加関税でした。
フェンタニルなどの薬物の流入が続いていることが理由で、当初の関税率は10%でしたが、中国が対抗措置を講じたことで追加関税の応酬となり、現在は「相互関税」も上乗せしてあわせて145%の追加関税を課しています。
貿易摩擦を緩和するため、関税率の大幅な引き下げを検討していると一部で伝えられていますが、トランプ大統領は、中国側が具体的な対応を取らないかぎり引き下げないという考えを示しています。
一方、隣国のカナダとメキシコには薬物や不法移民の流入が後を絶たないなどとして、中国と同じ2月4日に25%の関税を課すと発表しましたが、両国との間で措置を1か月停止することで合意。
その後、先月4日に措置を発動しましたが、3か国の貿易協定に含まれる品目については、当面、除外する措置をとっています。
貿易協定との整合性に加えて、経済的結びつきが強い両国の一部の品目を除外することでアメリカ国内への影響を抑えたいねらいがあるという見方も出ています。
こうした国別の関税に加え、品目別では、▽先月中旬に鉄鋼製品やアルミニウム、▽今月上旬に自動車への関税が、それぞれ発動され、25%の関税がかかっています。
また、特定の自動車部品についても来月3日までに25%の関税を発動するとしています。
トランプ大統領は、部品の生産をアメリカ国内に移す自動車メーカーに支援策を検討していることを明らかにしていますが、多くの部品を海外から調達するメーカーへの影響は大きいという懸念が強まっています。
さらに、今月上旬に発表された相互関税などの措置は世界を大きく揺るがしました。
▽全世界を対象に一律で10%の関税を課す措置は今月5日に、▽貿易赤字が大きい国や地域を対象にした「相互関税」は今月9日にそれぞれ発動。
日本への相互関税は24%に引き上げるとしました。
しかし、相互関税については発動した日のうちに、中国をのぞき、ことし7月9日まで90日間、措置を停止すると発表。
アメリカ経済の先行きへの懸念から金融市場で株安、債券安、ドル安のトリプル安といわれる事態を招き方針変更を迫られた形となりました。
現在は、日本を含めた各国との交渉が進められています。
トランプ政権の関税政策や中国との貿易摩擦は、世界経済に打撃を与えるだけでなく、アメリカ国内にも影響を及ぼし始めています。
トランプ大統領も、貿易赤字の削減やアメリカ国内に製造業を回帰させる目標に向けては「多少の移行期間はある」などと述べ、アメリカメディアは「景気後退の可能性を否定しなかった」などと伝えました。
トランプ政権の頻繁に変わる関税措置をめぐって、首都ワシントンでは、「唯一確かなことは不確実な状況が続くということだ」との声が聞かれ、今後も不透明な政策運営が続くことへの懸念が広がっています。
関税交渉「短期決着は楽観的すぎ」米新大使はどう見る?関税交渉の行方はどうなるのか。“トランプ発言”の真意はどこにあるのか。単独インタビューで迫ります。
【外交政策】前政権とは異なる外交姿勢
「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ政権は、発足直後から前政権とは異なる外交姿勢を相次いで打ち出しています。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐっては、停戦に向けた動きを加速させているものの、解決の糸口を見いだすことができておらず、具体的な成果は示せていません。
《ウクライナ情勢》
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐっては、トランプ大統領は早期の終結に意欲を示しています。ただ、最近では、ロシアとウクライナのどちらか一方が停戦の実現を困難にした場合、仲介をやめる可能性にも言及し始めています。
2月に行われたトランプ大統領とプーチン大統領の電話会談のあと、トランプ政権はサウジアラビアでロシアとウクライナ双方と実務者レベルで協議を行い、黒海における安全な航行の確保などで合意したと発表されました。ただ、ロシア側から合意の発効にあたって制裁の一部解除などの条件が提示されるなど、ウクライナへの攻撃は続いています。
こうしたことから、トランプ大統領がプーチン大統領に対していらだちを見せる場面もみられ、ロシア側の対応次第では、関税や制裁の措置をとる考えを重ねて示しています。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領とは、2月にホワイトハウスで行われた首脳会談で、激しい口論に発展し、関係がぎくしゃくし、その後も、「ロシアは応じる用意があるがゼレンスキー大統領と合意する方がより難しい」と発言するなど、ウクライナ側への批判を強めています。トランプ政権は和平案のとりまとめを急いでいますが、ロシアとウクライナ双方の溝は埋まっていません。
《ヨーロッパ》
ウクライナ情勢をめぐって、アメリカとヨーロッパ各国と立場の違いがみられます。
トランプ大統領は、ヨーロッパ各国がより役割を果たすべきだという考えを示していて、NATO=北大西洋条約機構の加盟国に対し、GDPに占める国防費の割合を目標としてきた2%ではなく、5%に引き上げるべきだと主張しています。また、デンマークの自治領グリーンランドに対し、トランプ政権は安全保障を理由に取得を目指すと発言していて、ヨーロッパ側からは批判や懸念の声が上がっています。
《ガザ情勢》
トランプ大統領は就任後、イスラエルのネタニヤフ首相とホワイトハウスで2回会談していて、1期目に続いて、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にしています。パレスチナのガザ地区をアメリカが長期的に所有し再建するとした上で、地区の住民を別の場所に移住させると発言した際には、中東諸国だけでなく世界各国から反発や懸念の声が上がりました。
イスラエルとハマスの停戦をめぐっては、一部の人質が新たに解放され、トランプ大統領は協議の進展を強調していますが、ガザ地区の停戦合意をめぐっては6週間の停戦のあと、延長に向けた協議が行き詰まり、イスラエルのガザ地区への攻撃が再開されています。
《イラン》
イランの核開発をめぐり、トランプ政権はイランと協議を始めています。トランプ大統領はイランの核兵器の保有を認めておらず、「非常に厳しい措置をとる必要が生じればそうする」と述べ、イランがアメリカの求めに応じなければ、軍事行動も辞さない構えを示し、けん制しています。
《中国》
政権の外交や安全保障を担う要職に対中強硬派とされる人材を起用し、政権発足当初から厳しい姿勢を示しています。また、トランプ政権の関税措置を受け、米中の貿易摩擦が激しくなっています。トランプ大統領は中国の習近平国家主席との間でやりとりがあったとしていますが時期など具体的なことは明らかになっていません。
《日本》
トランプ大統領は2月に首都ワシントンで石破総理大臣と初めて会談し、日米同盟をインド太平洋地域の平和と安全の礎と位置づけ、同盟の抑止力と対処力を強化することで一致しました。また、就任直後には日米豪印4か国のクアッドの外相会合を開き、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力の強化を確認しています。
一方、トランプ大統領は日米安全保障条約について「私たちは彼らを守るが、彼らは私たちを守る必要はない」と述べ、重ねて不満をにじませています。
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人権団体“人権侵害する政策や大統領令など100件確認”
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は、トランプ大統領の就任から100日までの間に、人権を侵害する政策や大統領令などを100件確認したと発表しました。
このなかには、▽パレスチナ問題に関する政治的な活動をした学生の拘束やビザの取り消しといった言論の自由を脅かすものや、▽DEIと呼ばれる多様性などを推進する政策を停止する大統領令、それに、▽難民の受け入れプログラムを無期限に停止する大統領令などがあげられています。
また、▽医薬品などの安全性を審査する政府機関の職員の解雇は、公衆衛生を危険にさらすほか、▽環境規制の緩和は、健康に悪影響を及ぼしたり温室効果ガスの排出量の増加につながったりするなどとして、これらも人権侵害にあたるとしています。
「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」のワシントン事務所の副所長を務めるニコール・ウィダーシャイムさんは、NHKの取材に対し「人権侵害が生活のほぼすべての分野で起きている。100件で止めたがもっと多く列挙することもできた」としています。
そして「裁判所や判事が停止すべきだなどと判断したことをホワイトハウスがやり続けている状況を目の当たりにしている。議会も政府を監督する役割を十分に果たしていない」と述べ三権分立が機能しなくなりつつあるという懸念を示しました。
また、こうした状況に対し抗議しようとする動きがある一方で「発言をためらわせる恐怖の雰囲気が存在する」としていて、「アメリカが民主主義国家であることを示すためにも、言論の自由や非暴力的な抗議の権利は守られなければならない」と強調しました。
専門家「『ハネムーン期間』は明らかに終了」
アメリカ政治や世論の動向を研究しているマサチューセッツ大学アマースト校のタティシェ・ンテタ教授は「トランプ大統領の支持率は芳しくない。『ハネムーン期間』は明らかに終了したと言える。現状はトランプ大統領や政権が望んでいたものではないだろう」と述べトランプ政権に対する国民の支持は低下傾向にあると指摘しています。
その理由については「最も否定的な結果をもたらしたのは経済政策だ。長年の同盟国に対して関税措置をめぐって行ったり来たりして、世界市場や国内市場に混乱を引き起こした。トランプ大統領はアメリカの経済的苦境、とりわけ物価高騰への対応を期待されて選ばれた。現状は多くのアメリカ国民が求めていたものとは言えない」と述べ、関税措置などトランプ政権の経済政策に懐疑的な見方をする国民が多いと分析しています。
そして「トランプ大統領は関税政策で大きな賭けをしている。経済が好転し、賭けが成功すれば状況が変わる可能性はある」と述べ、今後の経済運営が国民の支持を大きく左右すると指摘しています。
一方、国民から評価されている政策について尋ねたところ「アメリカ国民はトランプ大統領の移民政策について一定程度肯定的な反応を示している。大多数が、来年には法的な手続きを経ていない移民が減少すると考えていて、これはトランプ大統領の厳しい政策と関係している」との見方を示しました。
岩屋外相「関税措置をめぐり 日米の経済関係に影」
岩屋外務大臣は、訪問先のニューヨークで記者団に対し「総じて日米関係は良好に進んできた。首脳会談も早期に実施し、日米関係を高みに引き上げていこうということで一致できている。『自由で開かれたインド太平洋』を日米でしっかり進めていこうということについては、まったく揺らぎがないと感じている」と述べました。
一方、「アメリカの関税措置をめぐり、日米の経済関係に影が差しているのは事実なので早く日米協議によって乗り越えていかなければならない。しっかりと協議を重ね、双方がウィンウィンになり、国際公益も確保されていく取り組みを進めていきたい」と述べました。