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韓国で出回る「ルビーロマン」 石川県が開発したのに品種保護も商標登録も難航…権利主張には「最初が肝心」 東京新聞 2024年8月6日 06時00分
石川県が開発した高級ブドウ「ルビーロマン」が何らかの経路で流出して韓国で生産・販売され、県が対応に苦慮している。
海外で品種保護手続きができる期限を過ぎてしまったため、次善の策として韓国特許庁に商標を出願中だが、すでに現地で全く同じ品種名称が登録されていることなどから難航。国際社会で日本の農産物ブランドをどう守ればよいか、難問が突きつけられている。(ソウル・木下大資)
◆韓国国立種子院に品種名称を取り消す申請も
「この出願商標は需要者や取引界においてブドウ品種の普通名称として認識されており、自他商品を区別できる識別力がないため、登録を受けることができません」
韓国特許庁は今年1月、石川県が2022年10月に出願した「Ruby Roman」の商標について、4項目の「拒絶理由」を県側に通知した。県としては商標登録により、韓国内のルビーロマン流通に歯止めをかける狙いがあるが、すでに栽培が広がっている中での登録の難しさを見せつけられた格好だ。
他の拒絶理由には、登録済みの品種名称と同一か、類似する商標は登録できないとの商標法の規定も挙げられた。このため県は最近、品種登録を所管する韓国国立種子院に対し、2021年に登録されたルビーロマンの品種名称を取り消すよう求める申請をした。
だが、韓国政府は本紙の取材に「国内制度に基づき申告した31社が苗木を生産・販売しており、慎重な検討が必要」と見解を示している。
◆「徹底的に戦う」と権利主張も法的根拠なく
ルビーロマンは粒の大きさや糖度など厳格な出荷基準を守り、石川県内だけで生産される。ところが2年前、韓国でルビーロマンの名で販売されているブドウを県が鑑定したところ、DNA型が一致。流出した苗が中国経由で韓国に持ち込まれたとの見方がある。
「徹底的に戦います」。馳浩知事は7月18日の会見で、本家よりも品質の劣るルビーロマンが海外で流通する現状をあくまで容認しない姿勢を強調した。
ただ今のところ、石川県が韓国でルビーロマンに対する権利を主張する法的根拠はない。
国際法上、品種の育成者として外国で権利を得るには、最初に流通してから6年以内に各国で品種保護の手続きを行う必要があるが、2008年に初出荷されたルビーロマンはこの期間を過ぎていた。いくら日本の世論が「盗まれた」と憤っても、育成者権や商標など知的財産保護の手続きがされていない以上、海外では誰でも栽培できる状態になっている。
◆「大化けするかは分からなくても最初に取得が望ましい」
同様に日本で開発されたが権利が保護されていない「シャインマスカット」も、韓国で大規模に生産されている。国外から導入した品種を含め、効率的な栽培で収益性を高めようとする韓国農業のスピードは速い。
日韓間で先端農業技術のコンサルタントや農業資材輸入を手掛ける石坂晃さん(54)=福岡県=は「新たな品種を育成するときには(ルビーロマンのように)大化けするかは分からず、悩ましさがある。それでも最初が肝心で、開発した段階で海外での育成者権や国際商標を取得しておくのが望ましかった」と話す。