
上海モーターショー開幕 「トランプ関税」で注目は中国市場 NHK 2025年4月23日 18時56分
中国・上海では世界最大規模のモーターショーが始まりました。いま、日本をはじめ外国の自動車メーカー各社がこぞって披露したのはEVなどの「新エネルギー車」の最新型です。
「トランプ関税」で激しい貿易摩擦が続く中、世界最大の自動車市場・中国で事業を強化しようという動きが広がっています。
EVシフトが急速に進む中国で苦戦を強いられる日本メーカーに巻き返し策はあるのか、取材しました。
中国の上海で23日から始まった「上海モーターショー」には、世界各国の自動車メーカーや部品メーカーなどおよそ1000社が参加し、最新のモデルや技術を披露しています。
このうち、中国のEV最大手、「BYD」は最新のモデルのほか、5分間の充電で400キロ走れるとする新たな技術を紹介しました。
また、ドイツの「フォルクスワーゲン」は、中国で独自に開発したEVのコンセプトカーなどを披露したほか、傘下の「アウディ」で中国向けに立ち上げたブランドでスポーツタイプのEVを公開しました。
一方、日本メーカーでは、「トヨタ自動車」が上海に高級車ブランドのEV工場を建設することを紹介し、ブランドを根付かせると強調したほか、「ホンダ」が中国の「ディープシーク」の生成AIを取り入れたEVを発表しました。
世界の自動車市場をめぐっては、アメリカのトランプ政権の関税措置で米中の貿易摩擦が激しさを増し、先行きに不透明感が強まっています。
こうした中、世界最大の自動車市場の中国ではEVなどの「新エネルギー車」の販売が急拡大し、今後も成長が見込まれることから日本をはじめ、外国の自動車メーカーの間で、中国の事業を強化しようという動きが広がっています。
「新エネルギー車」販売 国内外で拡大
中国では、政府による補助金などを背景にEV=電気自動車などの「新エネルギー車」の販売が国内外で拡大しています。
中国の自動車メーカーなどでつくる「自動車工業協会」によりますと2021年の輸出を含む「新エネルギー車」の販売台数は352万1000台となり、2020年のおよそ2.5倍に拡大。
その後、2022年は、95.6%増えて688万7000台、2023年も37.9%増えて949万5000台と、販売の拡大が続きました。そして、中国の2024年は35.5%増えて1286万6000となり、初めて1000万台を超えました。
EVについては、都市部での普及が急速に進んだことや、走行距離への懸念などから伸びが鈍化しているものの、ガソリンでも走行できるプラグインハイブリッド車への需要が高まっていて、去年の新車販売に占める新エネルギー車の割合は40.9%となっています。
政府は内需の拡大に向け、自動車の買い替え促進策を推し進めていて、中国の新エネルギー車の市場は今後も拡大が続くとみられています。
対応急ぐ日本メーカー
日本の自動車メーカーも対応を急いでいます。
このうち、「トヨタ自動車」は、上海で高級車ブランド「レクサス」のEV=電気自動車と電池を生産する会社を設立することを発表しました。トヨタが単独で出資し、2027年以降に生産を始める計画で、当面は年間10万台を見込んでいます。
また、「ホンダ」は、2035年までに中国市場で販売する車をすべてEVにすることを目指していて、南部・広東省の広州に中国の自動車大手と共同で建設したEV工場を3月、本格的に稼働させました。新工場の生産能力は年間12万台で、すでに湖北省・武漢で稼働しているEV工場と合わせて年間24万台の生産体制となります。
中国では、次世代の車に欠かせないソフトウエアの開発も進んでいて、「トヨタ自動車」、「ホンダ」、「日産自動車」の大手3社は、いずれも中国のIT大手などと組み、開発を進めています。
上海モーターショーの発表会でホンダの五十嵐雅行常務は「中国技術をさらに活用して価値を生み出し、中国のお客様に満足してもらえるよう目指す」と述べました。
EVシフトが急速に進む中国で、エンジン技術に強みを持つ日本メーカーは苦戦を強いられ、かつては20%を超えていたシェアが9.7%まで落ち込んでいて、生産体制の強化や現地のIT大手との連携が巻き返しにつながるか注目されます。
運転支援機能の開発競争加速、懸念も
中国では、車を購入したあともソフトウエアを更新することで運転支援機能などの性能を高められる車の開発競争が激しくなっています。
こうした車は「SDV」=ソフトウエア・デファインド・ビークルと呼ばれ、次世代の車の開発でカギを握るとされています。このうち、EV専業の「小鵬自動車」は、独自に開発を進めているAI=人工知能向けの半導体について、ことし6月までに自社のEVへの搭載を始めるとしているほか、一定の条件のもとで自動運転ができる「レベル3」にあたる車をことしの年末に投入する方針です。
また、EV最大手の「BYD」は高級モデルだけでなく、低価格帯の小型EVにも運転支援機能を導入すると明らかにし、関連する技術の開発を加速させる方針です。
ただ、中国では、3月、運転支援機能を使って走行していた車で、死亡事故が起きたことをきっかけに安全性をめぐる議論が高まっていて、各社の開発や当局の規制などにどう影響するかが注目されています。
「トランプ関税」部品メーカーからは
一方、トランプ政権が自動車に加えて主要な自動車部品にも追加関税を課すとする中、モーターショーに出展する部品メーカーからは、懸念の声などが聞かれました。
このうち、EV=電気自動車向けのリチウム電池などを生産する中国企業は担当者がアメリカを含む海外に輸出していることを紹介し、アメリカに輸出している電池も展示していました。
また、ブレーキ関連の製品など自動車部品を生産する中国企業は、欧米への輸出にも力を入れていてメキシコにはアメリカに輸出する製品の生産拠点も持っています。
この企業の袁永彬会長によりますと中国からアメリカ向けにはサスペンションなどの部品を輸出していて、売り上げの10%近くを占めているということです。
関税措置をめぐって、袁会長は「世界中の貿易に大きな妨害と衝撃をもたらし、極めて多くの混乱を起こしている。短期的には影響はそれほど大きくならないかもしれないが関税が高くなり、長期化すれば貿易やビジネス顧客との戦略にも影響が及び、国家間の貿易も中断しかねない」と話し、今後の展開を慎重に見極める考えを示しました。
また、別の自動車部品メーカーの担当者は、「アメリカからの半導体がサプライチェーンの中で一定の割合を占めているため、影響はある。もし関税の影響を大きく受けるようになったら、国内で代替のサプライヤーを見つけるつもりだ」と話していました。そのうえで「不確実性が高い中、アメリカとの取り引きは避けるしかない。中国の自動車メーカーや部品メーカーがアメリカ以外の国との取り引きを増やしていくのは必然だ」と話していました。
中国製の自動車部品・電池 アメリカへ多く輸出
アメリカに輸出されている中国製の自動車は、アメリカのGM=ゼネラル・モーターズとフォードがそれぞれ現地企業と合弁で生産したものが大半で、中国ブランドの車はほとんど輸出されていません。
その一方で、自動車部品やリチウムイオン電池は、中国製の製品をアメリカに多く輸出しています。
中国の税関総署によりますと去年1年間に中国からアメリカに輸出した自動車部品は、金額にして115億2800万ドル、日本円で1兆6000億円余りにのぼりました。自動車部品の輸出全体に占めるアメリカの割合は20.5%となっています。
また、去年1年間にアメリカに輸出したリチウムイオン電池は、金額にして153億1400万ドル、日本円で2兆1000億円余りとなっていて、アメリカが全体の25%を占めています。
中国・上海では世界最大規模のモーターショーが始まりました。いま、日本をはじめ外国の自動車メーカー各社がこぞって披露したのはEVなどの「新エネルギー車」の最新型です。
「トランプ関税」で激しい貿易摩擦が続く中、世界最大の自動車市場・中国で事業を強化しようという動きが広がっています。
EVシフトが急速に進む中国で苦戦を強いられる日本メーカーに巻き返し策はあるのか、取材しました。
中国の上海で23日から始まった「上海モーターショー」には、世界各国の自動車メーカーや部品メーカーなどおよそ1000社が参加し、最新のモデルや技術を披露しています。
このうち、中国のEV最大手、「BYD」は最新のモデルのほか、5分間の充電で400キロ走れるとする新たな技術を紹介しました。
また、ドイツの「フォルクスワーゲン」は、中国で独自に開発したEVのコンセプトカーなどを披露したほか、傘下の「アウディ」で中国向けに立ち上げたブランドでスポーツタイプのEVを公開しました。
一方、日本メーカーでは、「トヨタ自動車」が上海に高級車ブランドのEV工場を建設することを紹介し、ブランドを根付かせると強調したほか、「ホンダ」が中国の「ディープシーク」の生成AIを取り入れたEVを発表しました。
世界の自動車市場をめぐっては、アメリカのトランプ政権の関税措置で米中の貿易摩擦が激しさを増し、先行きに不透明感が強まっています。
こうした中、世界最大の自動車市場の中国ではEVなどの「新エネルギー車」の販売が急拡大し、今後も成長が見込まれることから日本をはじめ、外国の自動車メーカーの間で、中国の事業を強化しようという動きが広がっています。
「新エネルギー車」販売 国内外で拡大
中国では、政府による補助金などを背景にEV=電気自動車などの「新エネルギー車」の販売が国内外で拡大しています。
中国の自動車メーカーなどでつくる「自動車工業協会」によりますと2021年の輸出を含む「新エネルギー車」の販売台数は352万1000台となり、2020年のおよそ2.5倍に拡大。
その後、2022年は、95.6%増えて688万7000台、2023年も37.9%増えて949万5000台と、販売の拡大が続きました。そして、中国の2024年は35.5%増えて1286万6000となり、初めて1000万台を超えました。
EVについては、都市部での普及が急速に進んだことや、走行距離への懸念などから伸びが鈍化しているものの、ガソリンでも走行できるプラグインハイブリッド車への需要が高まっていて、去年の新車販売に占める新エネルギー車の割合は40.9%となっています。
政府は内需の拡大に向け、自動車の買い替え促進策を推し進めていて、中国の新エネルギー車の市場は今後も拡大が続くとみられています。
対応急ぐ日本メーカー
日本の自動車メーカーも対応を急いでいます。
このうち、「トヨタ自動車」は、上海で高級車ブランド「レクサス」のEV=電気自動車と電池を生産する会社を設立することを発表しました。トヨタが単独で出資し、2027年以降に生産を始める計画で、当面は年間10万台を見込んでいます。
また、「ホンダ」は、2035年までに中国市場で販売する車をすべてEVにすることを目指していて、南部・広東省の広州に中国の自動車大手と共同で建設したEV工場を3月、本格的に稼働させました。新工場の生産能力は年間12万台で、すでに湖北省・武漢で稼働しているEV工場と合わせて年間24万台の生産体制となります。
中国では、次世代の車に欠かせないソフトウエアの開発も進んでいて、「トヨタ自動車」、「ホンダ」、「日産自動車」の大手3社は、いずれも中国のIT大手などと組み、開発を進めています。
上海モーターショーの発表会でホンダの五十嵐雅行常務は「中国技術をさらに活用して価値を生み出し、中国のお客様に満足してもらえるよう目指す」と述べました。
EVシフトが急速に進む中国で、エンジン技術に強みを持つ日本メーカーは苦戦を強いられ、かつては20%を超えていたシェアが9.7%まで落ち込んでいて、生産体制の強化や現地のIT大手との連携が巻き返しにつながるか注目されます。
運転支援機能の開発競争加速、懸念も
中国では、車を購入したあともソフトウエアを更新することで運転支援機能などの性能を高められる車の開発競争が激しくなっています。
こうした車は「SDV」=ソフトウエア・デファインド・ビークルと呼ばれ、次世代の車の開発でカギを握るとされています。このうち、EV専業の「小鵬自動車」は、独自に開発を進めているAI=人工知能向けの半導体について、ことし6月までに自社のEVへの搭載を始めるとしているほか、一定の条件のもとで自動運転ができる「レベル3」にあたる車をことしの年末に投入する方針です。
また、EV最大手の「BYD」は高級モデルだけでなく、低価格帯の小型EVにも運転支援機能を導入すると明らかにし、関連する技術の開発を加速させる方針です。
ただ、中国では、3月、運転支援機能を使って走行していた車で、死亡事故が起きたことをきっかけに安全性をめぐる議論が高まっていて、各社の開発や当局の規制などにどう影響するかが注目されています。
「トランプ関税」部品メーカーからは
一方、トランプ政権が自動車に加えて主要な自動車部品にも追加関税を課すとする中、モーターショーに出展する部品メーカーからは、懸念の声などが聞かれました。
このうち、EV=電気自動車向けのリチウム電池などを生産する中国企業は担当者がアメリカを含む海外に輸出していることを紹介し、アメリカに輸出している電池も展示していました。
また、ブレーキ関連の製品など自動車部品を生産する中国企業は、欧米への輸出にも力を入れていてメキシコにはアメリカに輸出する製品の生産拠点も持っています。
この企業の袁永彬会長によりますと中国からアメリカ向けにはサスペンションなどの部品を輸出していて、売り上げの10%近くを占めているということです。
関税措置をめぐって、袁会長は「世界中の貿易に大きな妨害と衝撃をもたらし、極めて多くの混乱を起こしている。短期的には影響はそれほど大きくならないかもしれないが関税が高くなり、長期化すれば貿易やビジネス顧客との戦略にも影響が及び、国家間の貿易も中断しかねない」と話し、今後の展開を慎重に見極める考えを示しました。
また、別の自動車部品メーカーの担当者は、「アメリカからの半導体がサプライチェーンの中で一定の割合を占めているため、影響はある。もし関税の影響を大きく受けるようになったら、国内で代替のサプライヤーを見つけるつもりだ」と話していました。そのうえで「不確実性が高い中、アメリカとの取り引きは避けるしかない。中国の自動車メーカーや部品メーカーがアメリカ以外の国との取り引きを増やしていくのは必然だ」と話していました。
中国製の自動車部品・電池 アメリカへ多く輸出
アメリカに輸出されている中国製の自動車は、アメリカのGM=ゼネラル・モーターズとフォードがそれぞれ現地企業と合弁で生産したものが大半で、中国ブランドの車はほとんど輸出されていません。
その一方で、自動車部品やリチウムイオン電池は、中国製の製品をアメリカに多く輸出しています。
中国の税関総署によりますと去年1年間に中国からアメリカに輸出した自動車部品は、金額にして115億2800万ドル、日本円で1兆6000億円余りにのぼりました。自動車部品の輸出全体に占めるアメリカの割合は20.5%となっています。
また、去年1年間にアメリカに輸出したリチウムイオン電池は、金額にして153億1400万ドル、日本円で2兆1000億円余りとなっていて、アメリカが全体の25%を占めています。