野田改造内閣 難局越えるには非力だ(10月2日)<北海道新聞>
野田佳彦第3次改造内閣がきのう発足した。
政権発足後わずか1年1カ月で3回目の内閣改造である。副総理、外相、防衛相、官房長官などは留任させた。新閣僚には民主党代表選や国会対策での論功行賞が目立つ。首相は「近いうちに」衆院解散・総選挙を行うと言い、衆院議員の任期も残り1年を切った。民主党政権最後の内閣となるかもしれない。なのに新たな布陣には難局を乗り越えようという危機感が感じられない。内政、外交とも重要課題がめじろ押しだ。与野党の政治力を結集できる体制を構築しなければならない。首相は記者会見で「内外に山積する課題を克服するチーム力を発揮したい」と意欲を語った。だが適材適所の人事とは言い難い。
補正予算や新年度予算編成を控えた財務相に城島光力前国対委員長、環境相兼原発事故担当相に長浜博行前官房副長官を充てた。2人は新ポストの政策に明るいとは言えない。城島氏や前原誠司国家戦略相、樽床伸二総務相は民主党幹部として消費税増税法案成立に努力した。旧民社党系の田中慶秋法務相、小平忠正国家公安委員長は代表選で野田氏をいち早く支持した。三井辨雄厚生労働相、中塚一宏金融担当相は小沢一郎元代表から離れ、党に残った。こうした功績を理由に入閣させるのではあまりに内向きだ。一方で代表選での対立候補の入閣はなかった。周りを「身内」で固めて党内融和が進むのか疑問である。
田中真紀子文部科学相は次期衆院選対策や中国とのパイプづくりが狙いとされる。だが小泉純一郎内閣の外相として資質を問われた。起用は民主党の人材不足の表れでもある。留任閣僚の仕事ぶりも国民の期待からは遠い。岡田克也副総理が担当する社会保障制度改革は、最低保障年金創設のめどが立たない。枝野幸男経済産業相の下では「原発ゼロ」政策の骨抜きが進む。
首相は尖閣諸島国有化に対する中国の反発が「想定を超えた」と語り外交下手を露呈した。玄葉光一郎外相はその首相を補い切れていない。森本敏防衛相は米軍基地問題で政府と沖縄県の溝を埋められずにいる。新内閣は難局を切り開いていく迫力に欠けると言わざるを得ない。自民党は安倍晋三総裁と石破茂幹事長による新体制が対決姿勢を強める。野党が不信感を抱く輿石東幹事長を先頭に、衆院選挙制度改革などを処理できるか予断を許さない。
「近いうちに解散」の約束を果たさなければならない。新内閣ができることは限られる。首相は政策の優先順位を明確にし、重要課題を少しでも前に進めなければならない。
果たして、適材適所に大臣を配置したのか?という話だな。
内閣改造 選挙布陣、難題対応に疑問(福井新聞)
野田佳彦首相が昨年9月、首相に就任以降、約1年で4回目の組閣だ。4~5カ月の間隔で実施している。その都度「適材適所」「最強の内閣」と強調しながら、不適切な人材登用で改造に追い込まれてきた。今回も各所に疑問な布陣が露出。統治能力と統率力が問われる第3次改造内閣である。次期衆院解散・総選挙を意識し、政権浮揚を図る狙いもあるのだろう。だが政権党として山積する懸案を解決し、早期解散を図ることが野田政権に課せられた最大の責務だ。党首会談を早急に開き、行き詰まり打開の道を探るべきである。顔ぶれは18人中10人が交代。大幅改造だが、岡田克也副総理、前原誠司国家戦略担当相、枝野幸男経済産業相、玄葉光一郎外相らおなじみの実力者が要職を占めているのは、民主党の人材不足の裏返しといえる。
野田首相と代表選を戦った3人は一人も入閣せず、出馬要請を受けながら見送り、野田支持に回った田中真紀子氏が起用されたのはいかにも論功行賞。党内融和が図れるか疑問だ。初入閣の城島光力財務相、樽床伸二総務相、田中慶秋法務相、小平忠正国家公安委員長、三井辨雄厚生労働相は国会対策委員長や幹事長代行など党の要職を歴任。国会対策を重視した結果だろうが、いずれも「入閣待望組」であり、順送り、たらい回しの側面は拭えない。
田中真紀子文部科学相は奇異に映る。多分に次期衆院選向けの「発信力」と選挙戦での「破壊力」を期待したのかもしれないが、小泉政権で外相を務め、更迭された経緯がある。文教関係は安倍晋三自民党新総裁も重視する重要な分野。高速増殖炉もんじゅの取り扱いもある。適材か、危うさが残る。野田首相は改造の目的を「内外の諸課題に対処するため」として「内閣機能の強化」を掲げた。外交・防衛の2閣僚を留任させたのは当然としても、福島原発事故対策の最前線にいる環境相兼原発担当相を代えたのはなぜか。若手の細野豪志氏を選挙用の顔として党政調会長に充てたとすれば、内閣機能強化に逆行し、地元軽視も甚だしい。
拉致問題の前進へ北朝鮮との協議が注目される拉致担当相はまたも交代だ。難題にはじっくり腰を据えた対応と人的つながりが不可欠で、「猫の目内閣」では展望が開けない。組閣の日、米軍新型輸送機MV22オスプレイが沖縄普天間飛行場に配備された。「世界一危険」とされる飛行場へ墜落事故やトラブルが相次ぐ新型機配備に対し、県民は強く反対している。政府は米側に追従し「運用の安全性は十分確認された」と宣言し、沖縄の声を無視した。
現場感覚に疎い政権が繰り返す拙速な対応である。藤村修官房長官は「丁寧に説明する。これに尽きる」と言いながら、打開策を持ち合わせていない。野田首相は「本土への訓練移転を進め、全国でも負担を分かち合っていくよう努力したい」と述べた。これでは「危険」をばらまくようなものだ。政策課題解決能力の欠如、改造しても政治の劣化は止まらない。
拉致問題をたらいまわしにするな、という点に触れられているのが特徴か。