ICUを回った先輩たちはみな、ICUレジ用の控え室のことを、愛と懐かしみを込めて“タコ部屋”(もう一つの方を“イカ部屋”)と呼びます。
事実、ICUは、私が回る前にイメージしていた(知識がなさすぎて想像すらできなかった)ような恐ろしい場所ではありませんでした。
チームメンバーが良かったからかもしれないけれど、辛いことは一度もなかった。眠くても、楽しかった。あと3週間くらい、居たかった…
寂しさに苛まれながら、これまた新年度で引きつった顔がいっぱいの外界(ICUは特別扱いされがちだけど、この季節大変なのは決してICUだけではない)に出て行くと
すれ違う先輩たちに毎度「おめでとう」「最後まで元気にがんばったね」「ICUから出てきた顔をしているよ」と言われて、なんだかホクホク。
でも一番嬉しかったのは、一番近くで見ていてくれた病棟長が最後の週に言ってくれたことば。
その日もなかなかハードで、最終週なのに自分のできなさを突き付けられた1日だったけれど。慰めだったとしても十分、私のこれから一年を支えてくれる労いの言葉でした。
自分の成長が直後に実感できる研修はこれが初めてだったから。それが嬉しかったんだなきっと。
安心感のなかで仕事させてもらえると、こうも集中できるんだと気づきました。その安心感は、一緒に居てくれる先輩の知識、技術そして男気…つまり私たちが言う“優秀さ”で決まってしまうんだなと。私ももっと勉強して、後輩たちの不安を取り払えるいい先輩になりたいと心から思いました。
優秀な同期のなかでなぜ最初が私だったかは最後まで謎だったけど、こんな気持ちで二年生のスタートをきれたこと、私にとってはとてもラッキーなことです。
こんな気持ちに浸りつつも休みなく始まった次の消化器内科ですが、新しく入ってきた可愛い一年生たちと意外に楽しく夢中になって一週間を過ごしました。今日やっと普通の睡眠時間をもらって、しみじみと部屋の掃除をしながら思い返しているってわけです。ついでに人生の断捨離も始めなければ。
何でもすぐに謝罪できることと神妙な顔で相槌を打つことだけに長けている自分が一年生じゃなくなったら何の存在意義もなくなっちゃうんじゃないかと思って心配していたけれど
二年生って、もしかしてけっこう楽しいんじゃない?