参加することに意義を求めて、カー君 準優勝、関脇に叶う、兄ちゃん
孫兄弟が住んでいる地区には、『天下御免 豊太閤官許 田浦(でんぼ)相撲』という古式ゆかしき伝統行事がある。
地元の民俗芸能保存会によって手あつく守られており、今年423年目を迎えたという。
但し、年に複数回相撲大会が開かれたこともあって、回数としては今大会が435回目だということであった。
由来のあらましは、423年前、豊臣秀吉一行が文禄の役(1592年)朝鮮に出兵した際、瀬戸内海のこの地に「風待ち」のため仮泊した。数日間の滞在となったため、将兵の志気を鼓舞することや慰労の具として、相撲をとらせた。当時はちゃんとした土俵もなく、田んぼが土俵となった。それ以来この相撲大会は『田浦相撲』と書いて「でんぼずもう」と呼ばれている。しかも、豊臣秀吉から許可を得たことから「豊太閤官許天下御免」の旗印が受け継がれている。
そして現在でも、通津小学校校庭の一角には「鋼鉄四本柱屋根付き」の本格的土俵がしつらえてある。今は男女関係なく土俵に上がっている。
そんな恒例の由緒ある相撲大会。土俵に上がるのは、小学生は予選通過の選手だけ。服装は普通の体育服。
中学校は、クラスの中で適当に選手を決める。上半身裸、体育用半パンの上から、まわしを付ける。
市の相撲連盟から派遣された指導者が、本格的にまわしを締めてくれる。何もかもホンモノ仕立てである。
どういうわけか、クラスでも身体は2番目に小さいカー君が出場することになったという。ま、いいか「オリンピック精神にのっとって・・・」
かっこうだけは一人間。大きな相手の身体に巻き付いて、土俵際で勝負はもつれた。審判から「物言い」が付いた。
協議の結果、相手の勇み足の前に、カー君の身体が完全に出ていた。ということで敢え無く一回戦敗退。でも出場した通気に拍手。
兄ちゃんはそうはいかない。小学校時代から予選突破の常連選手。足腰はスキーで鍛え上げている。
順調に勝ち進みいよいよ「大関」という優勝をを目指して決戦。互角の勝負、強引な勝負手が裏目となって、残念準優勝。
「関脇に叶う」という梵天を手に、嬉しさ半分口惜しさ半分。小中通じた田浦相撲の選手を卒業した。
化粧まわしも凛々しく弓を大きく回して 肩に担いで、ヨイショッ!四股踏みにかかる兄ちゃん
これほどの由緒ある相撲大会だけに、儀式など相撲に関わる一連の行事は全て、大相撲並みのしきたりが織り込んである。
呼び出しも行司も勝負審判も、そして最後の弓取式も。
兄ちゃんは最後を飾る「弓取り式」を任された。化粧まわしを付けて、土俵の真ん中で左右に大きく弓を回し、チリを祓って四股を踏む。
大きな掛け声にちょっと照れながら、教わった通り堂々とやってのけた。世話役のお年寄りからお褒めの言葉がジジに寄せられた。
兄ちゃんにとって、栄光も悔し涙もあった9年間の慣れ親しんだ土俵に、弓取り式という晴れ姿で別れを告げた。
次なる試練に、この日のような晴れやかな笑顔を見せてくれることを、静かに期待しよう。 そして有難う孫兄弟!