漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その46

2008年06月20日 21時14分54秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、Jプロの仕事場です。資料用の本が雑然と積まれています。本の向こう側に
  は、数年前までは今回登場する先輩のキタさんが座っていました。今はスクリーントーン
  の整理棚が見えます。 《 2007年度12月撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
   
               その46
 
 
漫画家アシスタントの先輩、Jプロでも10年以上勤めるベテラン・・・キタさ
ん( 仮名、1982年当時29歳 )。 この先輩も、私と同じ「 サラ金トリオ 」
の一員でした。
 
私がJ先生にサラ金の借金に追い詰められた話をした、その同じ頃・・・キタ
さんも( まったくの偶然に )J先生に借金の相談をしていたのです。
 
・・・さて・・・この話も内容が内容ですので・・・名前や時期など具体的な
点について、いくつか編集してある事をご了承下さい・・・。
 
私がJ先生に・・・
 
 「 サラ金の借金が50万円ほど・・・ 」
 
と、言ったら・・・
 
 「 何ィ? 何ンでィ? ・・・・・おめィ~は、何考えてんだ
  よォオオオ~ッ! 」
 
と、一喝された話は以前書きました通りですが、この事があったすぐその後で、
「 サラ金トリオ 」の一角であるキタさんが崩れてしまうわけです。
 
今から考えればJプロはボロボロです・・・! まったくJプロの恥さらし、そ
う言われても反論の仕様もありません・・・。 これは、決してJプロの給料が
安いから起こった事ではなく、「 サラ金トリオ 」の内で私とキタさんが情けな
い程、お粗末だったというだけの話なのです。
 
その先輩キタさんは、最近・・・過去のサラ金地獄を振り返って・・・
 
 「 今だから笑えるけどよォ・・・あの頃は大変だったよYちゃん(私)・・・ 」
 
今から25年前・・・。 1982年( 昭和57年 )の秋・・・・キタさんは30歳にな
ろうとしていました。私が27歳ですからキタさんは私より3歳上。 北さんがJ
プロに入ったのは1970年で18歳の時ですから、この年( 82年 )で勤続12年目に
なるわけです。
 
数年前にサラ金で借りた3,4万円の借金が雪だるま式に増えて500万円! 重い・・
・・・これは、相当に重い金額です。
 
当時の私の手取り月給が11万円ほどでしたが、12年勤続のキタさんは17万円ほど
・・・。つまり、キタさんは自分の年収の2倍以上の借金があったのです。(借金
の限度額は普通、年収の3分の1!)
 
キタさんも私と同じで毎月の生活費の足しに月末の金欠状態から・・・つい、1万
円、2万円と借入れ、あっという間に利息の支払いにも行き詰り、他社からの新た
な借り入れでしのぐ多重債務者独特の自転車操業に落ち込みます。
 
サラ金会社2社、その金利40%以上。それ以外に信販系カード会社数社( 利息各20
%以上 )からも借入れ、総額で500万円。
 
私は当時、憂鬱そうなキタさんから地の底から微かに聞こえて来る様な声で言われ
た言葉を覚えています・・・
 
 「 Yちゃん・・・毎月、どうしても5万円赤字が出ちゃって・・・借金がどん
   どん増えていくんだよ・・・ 」
 
私には返す言葉もありません・・・正直、私は・・・
 
 『 俺もキタさんみたいに成るのかなァ・・・でも、俺はキタさんとは違う! 』
 
そんな事をボンヤリ考えていたと思います。
 
悲しそうに自分の足元を見つめるキタさん・・・。このキタさんの姿こそ、数年後
の自分なのだとは・・・まだ予想する事も( 恐ろしくて )出来ない私でした。
 
毎日、利息の計算と支払期限日がせまる恐怖と・・・ヘトヘトになりながら対峙し
続ける借金生活・・・。
 
私は、当時のキタさんの深刻な状態を思い出しながら・・・先日、こう尋ねてみま
した・・・
 
 私   「 あの頃・・・夜も眠れなかったんじゃないですか・・・? 」
 
 キタさん「 いやァ・・・。それが・・・ど~ゆ~わけか、よく眠れたんだよ
       なァ~ 」
 
 私   「 ・・・えっ・・・? 」
 
 キタさん「 ど~なってんだろ~なァ、俺は・・・あはははっ! 」
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その47 」 へつづく・・・



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12 コメント

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這い上がれない現実 (山本)
2008-06-21 11:07:49
逆に言えば資産家は寝てても金が増え続けるということになりますね。
うらやましい限りですって、そんなこと言っている場合じゃないです。
格差はある一定のラインから分かれると思いますが、
今はそのギャップが広がってますね。
返信する
山本さん、コメントどうもありがとうございました! (yes)
2008-06-22 07:39:33
 >うらやましい限りですって、そんなこと言っている場合
 >じゃないです・・・
 
うらやましいのは・・・無理もないですよね。みんなお金のことで
は苦労してますから!
 
孤独で貧しい若者が増え、そして孤独で貧しい老人が増える・・・
貧乏人と財政赤字が増えて石油と食糧が減ってゆく・・・相当ヤバ
いですよね・・・。
 
でも、政府は「行政改革」「構造改革」「公務員改革」・・・いつ
も看板を替えるだけで何かをやった振りをしている・・・恐ろしい人
たちです!
 
政府が「公務員改革」だの「天下り禁止」だの言ってもそれが実
行できないのは、自分も公務員だからですよ! 国会議員も役人
なんですよ! 賄賂も天下りも高額の年金もあるわけです!
 
一番最初に挙げるべき看板は・・・「国会議員を改革(半減)!」
でしょう!
  
返信する
初めまして (たくあん)
2008-06-22 16:26:38
初めまして、たくあんと申します。

昨日こちらのブログを拝見し、第1章から最新記事まで全て読ませて頂きました。
私も漫画家を目指しているのですが、ついダラダラしてしまったり、たった1枚に3日かけたり(決して大ゴマとか難しい背景がある訳ではございません)ダメだなーなんでだろうなー と悩んでいたのですが同じようなことしている人って意外といるんだな…ということが分かり、それと同時にこれじゃいけない!と強く思いました。

とてもやる気が出ました!
ありがとうございます!!
返信する
たくあんさん、コメントどうもありがとうございました! (yes)
2008-06-23 04:15:21
初めまして、たくあんさん!
 
第1章からずっと読まれたそうですが、結構量がありますので
大変だったのではないですか・・・?
 
私でもそんな事、出来ません! 
 
たくあんさんが、このブログを反面教師の様に読んでくださっ
ている事が、私の本意と合致するところでもありますので、あ
りがたい事だと思っております。
 
こんなブログですが・・・・どうか、これからも笑ってやって下
さい!
  
返信する
「マンガ家の借金問題」の原因は? (オレンジボーイ)
2008-06-23 22:44:22
週末は、お天気が悪いので、外出せず。
ネットを見たり、マンガを読んだり、ちょっとだけ自分でマンガ描いてみたり(ダメですねぇ)
アパートの自室で、マンガ喫茶&ひきこもり状態でした(ますますダメですねぇ)

ここで話題になっている「売れないマンガ家の借金問題」ですが、本人の資質(だらしない性格&生活だから借金する)という以前に、収入そのものが低いから、借金せざるを得ない、というマンガ業界の構造上の欠陥があると思います。
決して、マンガ家本人だけが悪いとは思えません。

「ふじやまみえる」さんのブログ(学習誌の学習マンガがメインのマンガ家だそうです:「ふじやまみえる」で検索すると発見できます)を見ると、原稿料1ページで、1万3千円~1万7千円。「安いんじゃないの?」と編集者に文句を言うと、「手塚○虫」先生や「F子F二雄」先生も同じ稿料でやってもらってます」と言われ、ほぼ無名の存在に近い「みえる」先生は、それ以上、何も言わずに仕事したそうです(失礼!ご本人のブログで、そう語っていました)

何でも、「手塚○虫」先生の場合「初心を忘れるべからず」とかで、「あえて低い原稿料で仕事をされていた」とのこと。「手塚先生がそうなら、自分もそうすべし」と弟子にあたるF子先生もそれにならった、とのこと。本当に余計なことをしてくれたモンです。
どうせなら手塚先生、「若手&新人には、ベテラン並みの原稿料を渡して、手厚く育ててやれ!」くらいのことを言って残してくれれば、他のマンガ家志望者が苦労しなくてすんだのに。
「マンガの神様:手塚先生」は、「マンガ家志望者の貧乏神」であります

動画サイトyoutubeで「永島慎二・」で検索をかけると「BSマンガ夜話」で「漫画家残酷物語(永島慎二)」を取り上げた回を見ることができます。
(YouTubeは、著作権上問題有り、とされていますが、無料でいつでも、見たいの番組を見れるのは、メリットの方が大きいです。)
番組内で、マンガ評論家の夏目房之介さんが語っています。「マンガの原稿料は、60年代の10年間で、4倍になったが、70年代からは、ほとんど上がっていない。その間の(トーンの2重張りとか)手間のかかりぐあいとか考えると、恐ろしいまでの長時間低賃金労働になってしまっている…」
ただ夏目氏は、この問題をつっこむと自分の仕事がなくなることを恐れてか、問題提起だけして早々に話題を切り替えてしまいますが…。まぁ、お年寄りだし、大人の事情ってことで、大目にみてあげましょうw

「マンガ夜話」自分の場合、安アパート住まいで、なかなか衛星放送を見る環境にないのですが、いい歳こいたオッさん達が、言葉巧みに、マンガについて熱く語っているところが、ほほえましい。かつての「トキワ荘」も、こんな感じだったのでは?と思います。

「漫画家残酷物語:永島慎二」すでに鬼籍に入られていたんですね。ウィキペディアに細かい経歴があります。中学中退ながらも、マンガを描いてヒットして、晩年は印税もらって、ゆうゆう自適。豪邸建てて大往生。まさに、漫画家志望者の夢を実現した方でしたねぇ。自分もあやかりたいものです…。
返信する
安い原稿料とせこい業界と売れない私・・・ (yes)
2008-06-24 00:41:09
 >「手塚○虫」先生の場合「初心を忘れるべからず」とかで、
 >「あえて低い原稿料で仕事をされていた」とのこと・・・
 
私の個人的な想像ですが・・・作家もビジネスですから、自分の
商品(原稿)の値段を安くするか高くするかは需要との兼ね合
いや長い目で見た場合の事など・・・
 
色々と計算もあったろうと思います。なぜなら、原稿料は一度
上がると、下げられないそうだからです。高い原稿料を取った
ら、それだけ重い責任を背負うわけで・・・人気が少しでも落ちた
連載が危なくなるだけではなく、他の出版社からの依頼も無く
なる危険性が出てくるわけです。
 
安くおさえて、長く業界で生き残るか・・・高い原稿料で太く短
くいくか・・・その作家の個性だと思います。
 
私の師匠が稿料3万円ほどの頃に聞いた話なのですが・・・(1980
年頃、バブルがはじまる頃)
 
S社が育てた○宮先生をK社が引っこ抜く時の契約金(新しい
原稿料)は10万円以上だったそうです。その話をしてくれたS社
の編集員はK社への不快感を見せながら苦笑いしていました。
 
 「うちで育てた作家が他から引き抜かれる事が多いんです
  よねェ・・・」
 
そして、私の知る原稿料最高額は・・・バブルの頃に連載されて
いた○土先生の原稿料、1ページ20数万円!
 
それから20年・・・、バブル崩壊後はほとんど原稿料が上がって
いない様な印象を受けますね・・・確かに。これは、出版社がボロ
儲けしている・・・のでしょうか・・・?
 
どうも、私の知る限り出版不況で青息吐息の状況がずっと長く
つづいている感じです。つまり出版社も倒産やリストラ、休刊
や廃刊・・・の嵐の中を生き残るだけで必死なのではないでしょう
か・・・・
 
そんな状況の中で必死に甲板にしがみ付いて帆をはり、舵を握
る・・・よりクオリティーの高い作品を作り出す事に集中する事で
きっと状況は変わる。
 
きっと需要は出て来る。 需要があれば、供給の価値は上がる!
 
そう信じる・・・それで済むなら「お幸せ」なのですが・・・・・本当は、
ケチ臭い言ったって優秀な人材はやって来ない! 
 
サービス残業で死ぬまで働け! ・・・って言ったて全然景気は
良くならない! 低賃金の心配なんかしないで黙って仕事に精
を出せ! ・・・なんて怒鳴ったてダメだ!
 
嘘でも景気良く作家に大盤振る舞いすれば、人材は集まるし、
競争も激しくなる。(作品のクオリティーが上がる)
 
後は新人を育てるコーチングシステム(プロデューサーシステ
ム)を整えれば良い作品が市場を活気づかせる・・・!
 
バブルの頃に人気漫画でいくつもビルを建てたんだから、今度
は人気漫画を生み出すために当時のビルの一つや二つ売り払う
・・・そんな気骨がまるでない。
 
しまった・・・!
 
うっかり長文になってしまった! こりゃいかん!
 
トキワ荘や永島先生についても書きたかったんだけど・・・今回は
省略! 
 
だらだらと・・・こんな文章を・・・オレンジボーイさん、ゴメンナ
サイ!
  
返信する
大変勉強になりました。 (ポンポン)
2008-06-24 16:21:37
イエスさんのブログの魅力は、本文だけではなくコメントにもあると思います。
前述して頂いた原稿料や出版社の話などは、私の様なまだ業界の知識の無い者にとっては大変参考になります。
ですから、コメントの長さは気になさらないで下さい(個人的には人の話を聞くのは好きなので、もっと長くても良い位です)。
貴重な話を聞かせて頂き、ありがとうございました。
それでは失礼します。
返信する
ポンポンさん、コメントどうもありがとうございました! (yes)
2008-06-25 04:18:18
私のつたないコメントを楽しんでいただいた様で・・・とても、嬉
しいです! どうもありがとう、ポンポンさん!
 
励ましのコメントをいただきまして、老兵yes、またまた元気と
精気が出てまいりました!
 
これからも、よろしくお願いいたします!
   
返信する
ある漫画家の場合 (Unknown)
2008-06-26 05:45:44
1ページ一万七千円!、なんていいなあ(笑)。

k社で一万四千円の時はすんごい嬉しいと思ったし(連載終わっちゃったのでもうおしまい)、別会社で8年一万のままでも、打ち切りにされずに連載させてもらえてるだけで有り難いナーとおもって、稿料あげてなんて言えない(苦笑)。
アシ代で原稿料なんてとんとんか赤字だけど、コミックスで相殺(とかいって、現実はそうもいかず/苦笑)。
悔しかったら10万部作家になってみろーと中堅以下作家は思う所ですが、まあ副業とかもしながらなんとかやってます。

とっても売れるもの描けないのは自分だけど、それでも自分の描くもの喜んでくれたりする読者さんもちゃんといるので、それが嬉しい。
自分とそういう読者さんを裏切らないような作品、そしてそれなりにはアンケートもとれる作品(会社的にも許容範囲な/笑)を頑張って描き続けよう、と思っていたり。描く場所があるのは大変ありがたいことなので…。
少なくても雑誌やコミックスだって貴重な資源(紙)を使うのだから、そこ考えてもどうでもいいものは出せない、ホントは出しちゃいけないよね。


とかとか。そんな事を思いながら仕事しつつ生活してます。
yesさん、以前からずっとここ愛読させて頂いております。
書き込みは初めてじゃないけど。
なんか流れでこんな書き込みさせて頂いちゃいました、スミマセン(^_^;)。
ブログ本もちゃんとゲットしました~、それからサイコホスピダーも(いや、すごい本でした…迫力!)。
ここの連載も、毎週楽しみにしてます(仕事になるととことん缶詰なのであまり楽しみが…/苦笑)。これからもぜひぜひ頑張ってください。
返信する
Unknown (雪田徹夜)
2008-06-26 22:39:46
最近漫画界も何やら騒がしい様で・・・
ある漫画家さんが大手出版社を訴えたとか
なかなか気骨のある方ですね
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