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グレート生活アドベンチャー 前田司郎

「ゲーム世代小説の旗手」といわれる著者の中篇2つが収められた本書。1つ目の話は、ゲーム世代には「最後の1行に痺れる」ということなのだそうだが、私には正直言って良く判らなかった。小説の始まりは、有名なゲームの世界と現実の世界が連続したような記述が面白く、単純に面白いなという感じだが、途中からは普通の小説と変わらないという印象が強い。単純にゲームの世界と現実の世界が連続したような感覚で書かれているから「ゲーム世代」の小説なのか、そういうことで良いのか。2つ目の話を読んで気付いたのは、2つの小説のなかで流れている時間の感覚や、自分をとりまく世界と自分との関係というものが、我々と少しだけ違うのではないかということだ。時間の感覚のずれは、それ自体が2つ目の話のテーマなのでわかり易いが、それ以上に「自分」が「自分」にとって何者であるかという感覚が、少し我々と違うのかもしれない。ちなみに本書の133ページで数えてみたら、このページの15行に「わたし」という単語が15個も使われていた。現代の若者とは結局そういうことなのか。そういう理解でしか本書を読めないわたしがやはり古いのか。判らないまま読み終えてしまった。(「グレート生活アドベンチャー」 前田司郎、新潮文庫)

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