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IQ ジョー・イデ

帯に、アンソニー賞、シェイマス賞、マカヴィティ賞同時受賞作とあるが、どれも聞いたことのない名前だし、著者の名前「ジョー・イデ」も初めて聞く名前。どうやらミステリー界の大型新人らしい、ということで読んでみた。話は、主人公の黒人少年がシャーロック・ホームズばりの推理で誘拐された少女を間一髪助け出すエピソードで幕を開け、そこからある事件の解決を依頼された主人公の怒涛の活躍が始まる。それと同時に、8年前の主人公の兄の不可解な事故死から始まるエピソードが交互に描かれながら話が進んでいく。全てが一言一句おろそかにできないような濃厚な描写を堪能できる一冊だ。あとがきを読むと、著者は日系アメリカ人とのこと。日系人の小説の主人公が黒人ということに驚かされるが、それ以上にそうした出自の著者が黒人社会のことをここまで緻密に描写したことに驚嘆してしまう。残された謎に関わる続編もすでに刊行されているらしく、今後の楽しみは尽きない。(「IQ」 ジョー・イデ、ハヤカワ文庫)

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鬼 今邑彩

未読の短編集。著者の短編集はこれで3冊目だが、今回は前に比べてミステリー要素が後退していてホラーの要素が強い作品が並んでいる。それでもそれぞれにちょっとしたどんでん返しが用意されていて飽きさせない。著者の幅の広さを感じた一冊だった。(「鬼」 今邑彩、集英社文庫)

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映画 プレデター

純粋娯楽作品。

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日本の醜さについて 井上章一

「京都ぎらい」で一躍有名になった著者の建築史論。日本の無秩序な街並みや幼児性を断罪する歯に衣着せぬ物言いは健在だ。日本の建築家が世界で持て囃される理由の一つが日本の無秩序な街並みにあるという指摘、イタリアの建築遺産が第二次世界大戦後も多く残っている理由、ケンタッキーフライドチキンの店先のカーネルおじさんの人形の意味、日本の道路に歩道橋が多い理由など、どれを取っても著者の指摘は鋭い。ある意味「京都ぎらい」よりもセンセーショナルな一冊だと感心してしまった。(「日本の醜さについて」  井上章一、幻冬舎新書)

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天使の棲む部屋 大倉崇裕

不動産の問題物件にまつわる謎を題材にしたシリーズの第2作目。相変わらず荒唐無稽な内容だが、ミステリーの部分がしっかりしていて楽しめる。鳩屋敷の話などは、他人の不可思議な行動とか突飛な行動にも、よく考えるとそれなりに合理的な意味があるということに気づかされるし、性善説ではないものの見方とか当事者の立場で考えるといったことで、全く違う風景が見えるのかもしれないということかもしれない。(「天使の棲む部屋」  大倉崇裕、光文社文庫)

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朝日ぎらい 橘玲

本書は、「日本の若者の保守化」「保守とリベラルの逆転」「世界的なリベラル化の流れ」など、色々な日頃の疑問を分かりやすく教えてくれる。さらにその奥にある本質的な状況についても理解が広がったようでとてもためになった。特に、今のままでは希望が持てないと感じる若者との世代ギャップ、リベラルが勝利したが故のリベラルの閉塞状況といった指摘が心に残る。また、「道徳の貯金」といった内外の研究成果の紹介も沢山あり、ためになった。内容については文句ないが、残念なのは「朝日ぎらい」という題名だ。本書には朝日新聞社に関する記述はほとんどなく、著者自身が恥ずかしそうに述べているようにベストセラーのパロディとのこと。あとがきで著者はこの題名を「朝日新聞社の勇気と良識」と評価しているが、「この本によってもたらされるマイナスよりも太っ腹と思わせるイメージアップのプラス効果の方が大きい」ということだろう。著者のような論客がここまで馬鹿にされ、新聞社の宣伝に踊らされているのを見るのは悲しい。(「朝日ぎらい」 橘玲、朝日新書)

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七つの海を照らす星 七河迦南

本書が著者のデビュー作とのこと。著者の本を読むのはこれが2冊目だが、いずれも児童養護施設を舞台にしたミステリー短編集で、主人公であるその施設の新米先生が周りの人たちの協力を得ながら、施設で起こる様々な謎を解き明かしていく。そうは言っても、単純なお仕事ミステリーではなく、児童福祉の問題としては括りきれないような現代の子どもたちが直面している普遍的な問題を扱ったものもあり、またそれぞれの短編で残された謎が最後に驚くような形で一つになったりと、新人作家とは思えない評判通りの傑作だ。既に第三作目が刊行されているので、読むのが今から楽しみだ。(「七つの海を照らす星」 七河迦南、創元推理文庫)

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展覧会 入江明日香展

素晴らしい展覧会。普段買わないカタログを迷わず買った。

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映画 ポップアイ

歳をとって、仕事仲間からも家族からも邪魔者扱いされる中年男性が拗ねて、ゾウと旅に出るというロードムービー。とても身につまされる内容。

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盗まれて 今邑彩

著者の短編集は5冊目くらいになるが、どれも大変面白く期待を裏切らないものばかりだ。本書に収められた各編もそれぞれに大小様々な工夫やどんでん返しが用意されていて読者をあきさせない。前にも書いたが、まだ未読の短編集が数冊残っていて、次はどれにしようかなと迷いながら少しずつ読んでいくのがとても楽しみだ。(「盗まれて」 今邑彩、文春文庫)

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神社崩壊 島田裕巳

昨年末の富岡八幡宮事件について書かれているようなので読んでみた。本書は、神社の宮司という地位を巡る猟奇殺人事件の顛末から、その背景にある全国一万を超える神社が抱える深刻な問題に至るまで、広範囲にわたる日本の宗教界の暗部を分かりやすく解説してくれる。驚いたことに、富岡八幡宮と同じような「神社本庁との軋轢」という問題が、日光東照宮、明治神宮、日吉大社(日枝神社、山王神社)、宇佐八幡といった錚々たる日本中の神社にも存在するという。これを読むと、神社に行ってお賽銭を入れたりお祓いをしてもらったりしても、そのお金が一般人以下のモラルしかない神社の関係者の遊興費になってしまうということが分かり、神社と関わることが虚しくなる。また、伊勢神宮を頂点とする現在の「神社本庁」という権威構造、ヒエラルキーの矛盾が今後「神社」という存在そのものを危うくするかもしれないという本書の意見も衝撃的だ。多くの点で考えさせられる一冊だ。(「神社崩壊」 島田裕巳、新潮新書)

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微笑む人 貫井徳郎

全く不可解な動機を主張する犯人。あるノンフィクション作家が、事件の真相を知るために犯人の半生を追いかける。記述は犯人の過去を時間を遡る形で進むが、次々に驚くべき事実が明らかになっていく。奇をてらったミステリーなのか、それとも現代社会の闇を描いた作品なのか、読者には最後まで分からない。最後の結末には、賛否両論があるだろうが、少なくとも現代の社会には「心の闇」という簡単な言葉では済まされないものがあることを痛烈に教えてくれる。(「微笑む人」 貫井徳郎、実業之日本社文庫)

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冬空トランス 長沢樹

これまで読んだ著者の2作品が面白かったので、どういう作品かよく確かめずに本書を読み始めたところ、以下のようなやや複雑な事情が判明した。本書はシリーズ作品の第3作目だが、これまでの2冊は、時系列的には4番目の事件(消失グラデーション)と2番目の事件(夏服パースペクティブ)を扱っていて、本書はそれらと前後する、1、3、5、6番目の事件を収録した中短編集にあたる。自分はこの中で既に読んだのは4番目の事件のみ。しかもその一冊には、最後にびっくりするようなどんでん返しが用意されていて、それを知った後で読むのと知らずに読むのとでは景色が全く違ってしまう。作者としては、読者が刊行された順番で読むことを前提に、あるいはそれを期待して書いているのだろうが、そうでない読者にはこれは辛いことだ。なんとか最後まで読み終えたが、最後の事件などは全く内容についていけなかった。唯一既読の一冊が大変面白かっただけに、シリーズ全体の面白さが満喫できなかった気がして残念だった。(「冬空トランス」 長沢樹、角川文庫)

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悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト 浦久俊彦

「本邦初のパガニーニ伝」と帯にあるが、自分の記憶では、子どもの頃にかなり詳しい彼の伝記を読んだことがあり、子ども向けの本ながらその時の衝撃はいくつかのエピソードも含めて今でも鮮明に記憶に残っている。本屋さんでたまたま本書を見つけた時、自分の遠い昔の記憶を確かめたくて、迷わず読むことにした。読んでみて最初に感じたのは、自分の記憶がかなり確かで、死後なかなか埋葬場所が決まらなかったこととか、自分の作品が他の奏者に真似されるのを危惧して演奏会の後に楽員に配った楽譜を回収して破棄したことなど、殆どのエピソードは記憶通りだった。一方、新しい情報としては、パガニーニの愛器「キャノン」が時々貸し出されて演奏会やレコード収録に利用されていること、パガニーニが生前から大金持ちだったことなどは、前に読んだ本には書かれていなかったように思う。そうした新しい情報も含めて、懐かしんだり驚いたりで、楽しい一冊だった。(「悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト」 浦久俊彦、新潮新書)

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リアルフェイス 知念実希人

謎の多い天才的形成外科医を巡る医療ミステリー。主人公のキャラクターや語り口は軽いが起こる事件やその背景はかなりシリアスというのが著者の作品の大きな特徴だが、本書でもそれが顕著だ。事件の真相についてはかなり最初の方で何となく想像がついてしまったが、そのおかげで「だからここはこういう表現になっているんだな」と著者の書き方の微妙さに感心しながら読むことができた。続編が書かれるかどうかは微妙だが、この設定の作品はまだまだ読みたい気がする。(「リアルフェイス」 知念実希人、実業之日本社文庫)

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