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人生は並盛で 小野寺史宜

今注目の作家の一冊。基本は、牛丼チェーン店を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた作品だが、これまでに読んだ著者の作品に比べて、色々な問題を抱えた登場人物が多いのが目に付く。また、話の流れは、第一章は牛丼屋の話だが、第二章は全く関係ない話になり、あれっと思っていると最後の第三章で全てが繋がるというとても巧みな構成になっている。著者の作品のこれまでとは違った面白さを見つけたような気がして、他の作品への期待も高まる一冊だった。(「人生は並盛で」 小野寺史宜、実業之日本社文庫)
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名画に隠された二重の謎 三浦篤

断捨離の身なので、展覧会に行って大きくて重い図録を買うことは滅多にないが、そこで今見た絵画のことが出ている解説本を買うことが時々ある。本書は、先日訪れた印象派展のミュージアムショップで購入した一冊。内容は、絵を鑑賞して普段見落としがちな、サインの位置・書き直しの痕跡・額縁、あるいは絵の中の窓・鏡・画中画といったものから分かるその絵に関する色々な事実の解説だ。個人的には、こうした美術書にありがちなやや強引な解釈が多い気もするが、とにかく色々な知識に裏打ちされた意見なので参考になることが多かった。文章を補足する図絵はほぼ完璧で、ここまで読み手のことを考えて図絵を収録してくれている本は初めてのような気がした。(「名画に隠された二重の謎」 三浦篤、小学館新書)
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妻のトリセツ 黒川伊保子

大学、会社の先輩から勧められて読んだ一冊。女性脳男性脳の違いからくる思考回路や行動の違いを解説、夫婦生活を円満にする秘訣をわかりやすく教えてくれる。なるほどと思い当たることが多い上に、簡単ですぐに実践できるアドバイスも多く実に実用的な内容。「夫のトリセツ」という続編もあるようで、すぐにも読みたいと思った。(「妻のトリセツ」 黒川伊保子、講談社α新書)
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パフォーマンス ダメじゃん小出 新春18きっぷ

鉄道芸人ダメじゃん小出のショーは今回で2回目。鉄道芸人ということで確固たるファンが多いのか、小さなホールは昼夜2回公演にもかかわらず追加の席が設けられるほど超満員の盛況ぶり。しかも意外と高齢女性の割合が高い。小ホールということで隣り席との仕切りの肘掛もないしとにかく席が狭いので私などはもっと大きな劇場でやってほしいと思うが、周りの観客は狭さを気にしていないようだし、ある程度小規模のところの方が近くで見れてかえって良いのかもと思ったりする。鉄道ファンは、少し前まで「鉄」と呼ばれてやや日陰の存在、オタクの典型のような存在だったが、今やメジャーな趣味のひとつとなり、豊富な知識を披露して笑いと敬意を集めるまでになっている。公演の内容は、「てつのリゾート」「ミャンマーの鉄道事情」の2部構成、いずれも期待に違わぬ面白さだった。
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息吹 テッドチャン

評判の高い海外SFの一冊。未来を変えられないタイムマシンの意義についての可能性を提示する「商人と錬金術師の門」、人類滅亡後に生き残ったロボット?にエントロピー増大の法則がもたらす世界の終焉を語らせた表題作「息吹」、学習して成長するAIロボットとの交流を描いた「ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル」など、それぞれ静かな語りの中で、いずれもが重厚な問題提起をしているような作品ばかりで驚かされる。特に「ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル」は、AIを育成していく過程で人間の子どもを教育していく時と同じような問題に直面する様が描かれていてものすごく面白い。AIが人間の補佐的な役割を担っていくともしかしたら生じるかもしれない報酬の問題、AIを法人化することは可能かという問題提起など、びっくりするようなアイデアの中に、今後の技術進歩に伴って生じるかもしれない新たな問題が次々と示されていく。さらに、思い通りに育たなかったAIを消去していまうことに道義的な問題はないのかという問題提起も古そうで新しい問題のような気がする。これまでに読んだ海外SFの中でも屈指の作品であることは間違いないが、ひとつ残念なのは、表題作の「息吹」という訳語。これでは文学的すぎて内容とマッチしていない。本文の訳に関して、読者は原作のニュアンスをどれだけ忠実に伝えてくれているかについて訳者を信じるしかないのだが、少なくとも表題はその題名を見て作品の内容が想起されるように訳語を選んで欲しい。(「息吹」 テッドチャン、早川書房)
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絵画展 コートールド美術館展

非常にオーソドックスな印象派の画家の絵が分かりやすく展示された絵画展。まあこんなものかなと思っていたら、セザンヌの『カード遊びをする人々」、マネの「草上の昼食」など良く知った絵が色々あって嬉しくなった。また、マネの最後の傑作とされ展覧会のチラシでも使われている「フォリーベルジュールのバー」は、不思議な謎めいた雰囲気で流石の存在感を放っていた。展示された作品数はどちらかというと少ない方だと思うが、内容の濃い展覧会だった。
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落語 白鳥彦いち二人会

大好きな落語家の二人会。遠路はるばる豊田市まで聴きに行ってきた。東京や横浜なら満員になる顔ぶれだが、お客さんの入りは4/5くらい。圧倒的に高齢者が多いが、子ども連れもちらほら。いつもの創作落語4席を満喫。遠くまで来た甲斐があった。高齢者と子どもが多いことを意識してか、最後の演目中、飛行機を上手く着陸させるために観客みんなで首の体操という趣向もとても面白かった。

①からぬけ 林家ひこうき
②ナースコール 三遊亭白鳥
③熱血怪談部 林家彦いち
④反対ぐるま 林家彦いち  
⑤最後のフライト 三遊亭白鳥
  
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絵画 岸田劉生展

かなり大規模な岸田劉生の展覧会。会場に入ってすぐ膨大な数の「自画像」があり、驚かされる。続いて色々な人の肖像画が並ぶが、ここでも「画家の妻」という題名の奥さんを描いた絵が目につく。会場の二階に上がるとようやく「麗子像」。こちらもかなりの数が並んでいる。風景画も何枚かあってどれも印象的。よくもこれだけを一か所に集めたなぁと、企画した人の熱意と手腕に脱帽。個人的には、油絵の合間に展示されていたペン画と日本画がものすごくてびっくりした。ひとりの画家の絵をこれだけの数同時に見ることでしか得られないものがあると実感した素晴らしい展覧会だった。
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犯人IAのインテリジェンスアンプリファー

シリーズ2作目。第1作目がかなり衝撃的な内容だったので期待が大きかったが、本作はまあ普通に面白いという感じだった。ロボット三原則に縛られ、しかも現実世界に実体を持たないAIが犯罪を企て、それに対抗するのがAI探偵というかなり荒唐無稽な設定なので、多少の強引な展開はやむを得ないところだ。前作のようにAI開発に絡む問題点が次々と出てくると嬉しいのだが、その辺りはもうタネ切れという気もする。続編への期待は大きいが、大丈夫かなぁと心配になるのも事実だ。(「犯人IAのインテリジェンスアンプリファー」 早坂呑、新潮文庫)
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寄席 コラアゲンはいごうまん、一之輔

ノンフィクション漫談のコラアゲンはいごうまんと、人気落語家春風亭一之輔の二人会。一之輔の2席は、古典落語を少しアレンジした得意のスタイル。コラアゲンはいごうまんは、認知症の母親を題材にしたほんわかした笑いの中に母親との接し方の参考になるものがあるいい話だった。
①オープニング挨拶
②蝦蟇の油 春風亭一之輔
③オカンと僕と時々右寄り コラアゲンはいごうまん
④火事息子 春風亭一之輔
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いい感じの石ころを拾いに 宮田珠己

文字通り、海岸や川岸に「いい感じだな」と思う石ころを拾いにいくという著者のエッセイ。石ころの成分とか学問的価値、市場価値などとは全く違う価値観で、とにかく自分の感性で良いと思った石を集めるという潔さが楽しい。こうした趣味はそれなりに同好の士がいるようで、拾った石を自分で眺めるだけでなく、仲間同士で拾った石を観賞し合うのも楽しみのひとつとのこと。簡単に始められるし、石そのものにかけるお金は不要だし、拾いに行くついでに旅行もできるし、ついでにその場所の美味しいものを食べてくることもできるしで、なんだか理想のヒマつぶしのような気がする。現在断捨離中の身ながら、自分も集めてみようかなとつい思ってしまった。(「いい感じの石ころを拾いに」 宮田珠己、中公文庫)
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音楽会 フラックス弦楽四重奏団

弦楽四重奏団による現代音楽のコンサート。客の入りは2/3程度だが、演奏家の熱意が伝わる熱演。現代音楽で、しかも5曲中2曲が日本初演ということで、演奏の比較とかは全くできないが、演奏の随所にこうした分野での第一人者なんだろうなぁと思わせる風格のようなものを感じた。席が前から3列目の舞台に向かって右側ということで、ビオラ奏者を間近に見ることができたこともあるが、ビオラとチェロのパフォーマンスが秀逸だったような気がした。途中で2曲めの作曲家が登壇しl日本初演の挨拶。また3曲めでは、何故かビオラ奏者が譜面台にスマホを置いて始める前に何やら操作していた。曲の途中で同じフレーズが延々と続くところがあり、繰り返しの時間を計る時計代わりに置いていたのではないかと推察。
①コンロンナンカロウ「弦楽四重奏曲第3番」
②エリザベスオゴネク「ランニングアットスティルライフ」 日本初演
③トムチウ(vn1)「レトロコン」 日本初演
④オリバーレイク「ヘイ・ナウ・ヘイ」
⑤バルトーク「弦楽四重奏曲第5番」
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習近平と朝日、どちらが本当の反日か 高山正之

相変わらず中韓米と朝日新聞に容赦のない内容。それによって日本を擁護するというよりは、人類全体あるいは民主主義を標榜する国家が如何に残酷で利己的であるかを浮き彫りにする。毎度のことだが、本シリーズは文庫化されてから読むと決めているので、時事的な話は約4年遅れで読むことになるが、あまり時間差を感じず古い話になっていないのは立派だと思う。(「習近平と朝日、どちらが本当の反日か」 高山正之、新潮文庫)
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不穏な眠り 若竹七海

不運な探偵「葉村晶」シリーズの最新刊。聞き込みの相手に殺されそうになったり、賊に襲われたりと、真相に行き着くまでに何度も危険に遭遇するというのが本シリーズお決まりのパターン。本書には4つの事件が収められているが、各編とも一度は気を失ったり病院に担ぎ込まれたりという徹底振り。それでもよく考えれば、予備知識ゼロからの捜査というものが如何に危ういものであるかを教えてくれて、不自然さを感じさせないのが不思議だ。それ以外にも、色々なミステリーの名作が話の中に登場するというのも本シリーズの特徴で、著者のミステリーファンへの大いなるサービス精神を感じるし、そして何よりも各短編の密度の濃さ、何層にも重ねられた真相の奥深さに読書の喜びを感じてしまう稀有なシリーズだ。(「不穏な眠り」 若竹七海、文春文庫)
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2019年ベスト10

2019年は読んだ本が155冊と前年に比べて大幅に減少、2011年以降の最低となった。減少した大きな原因は、落語や演劇に行く日が多かったこと、夜寝る前に読書することあまりなくなってしまったことなどだ。本を読みたいという気持ちはあるのだが、時間配分の考え方が以前と少し変わってきてしまったのかもしれない。読んだ本が少なくなったのに、読みたい本の数は変わらないので、部屋には読んでいない本であふれてしまい、ネット本屋のお気に入りリストも200冊近く溜まってしまって収拾がつかなくなっている。今年は何とかもっと読む時間を捻出したいと思う。さて、2019年のベスト10は以下の通り。
①三体 劉慈欣
とにかく突拍子も無い話でビックリ。
②言葉尻とらえ隊 能町みね子
2019年は著者の本を9冊も読んだが、どれも面白かった。本書はその中で最も著者らしい内容。
③70歳死亡法案可決
同じく2019年は著者の本を8冊読んだ。どれも現代日本の問題を浮き彫りにする内容。
④ノースライト 横山秀夫
待ちに待った著者の新作を堪能。
⑤ひと 小野寺史宜
著者の本はどれもこれぞ小説という感じ。今年も著者の本をもっと読みたい。
⑥カササギ殺人事件 アンソニーホロヴィッツ
久し振りに面白い海外ミステリーを読んだ気がして、海外ミステリーをもっと読んでみようというきっかけになった一冊。
⑦枕元の本棚 津村記久子
書評本だが、紹介される本がとにかく全部面白そう。読みたい本のリストが一気に増えた。
⑧ベルリンは晴れているか 深緑野分
国内ミステリーでここまで濃厚な話に出会ったのは久し振り。
⑨乗客ナンバー23の消失 セバスチャンフィツェック
大型客船の旅が心底怖くなった。
⑩横浜1963 伊東潤
地元本だが知らなかったことばかりで面白かった。

その他、白河三兎「ふたえ」、木内一裕「嘘ですけど、なにか」も忘れがたい作品だった。
ここまで書いてきて、2019年はノンフィクションが②と⑦の2冊だけということに気づいた。面白いノンフィクションも色々あったが、これぞというものには出会わなかった気がする。今年はノンフィクションもたくさん読みたい。

2010年132,2011年189,2012年209,2013年198,2014年205,2015年177,2016年218,2017年225、2018年211、2019年155

2018/12/31 カウント2248
(参考) 観劇など カウント 92
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