2018年頃から日本郵政各社とその社員で構成されている局長会のブラックぶりを記事にしてきた著者が、その内容の詳細と記事が出た後に改善がみられたかを厳しく検証する内容の一冊。関連企業各社に蔓延るパワハラ、会社の経費を政治活動や私的に流用する不祥事の多発、郵便事業で得た個人情報の広範囲な不正流用など、その実態のあまりにも悪質かつ杜撰なことに驚かされる。営業職に課せられた根性主義的なノルマの強要、顧客を騙す「ダブル契約」「乗り換え潜脱」などの不法営業、会社経費で作成したカレンダーの政治利用、局長会の露骨な不法な政治活動などの背景にあるのは、ユニバーサルサービス、地域密着という美句を隠れ蓑にした一部の幹部の私利私欲で、それを可能にしているのが、局長職の世襲、転勤なし、自営局舎という前時代的な組織のあり方だと指摘する。読んでいてあまりにもモラルが低い実態に慄然とさせられる。個人的には、2年前くらいから年末の年賀はがきの訪問販売やしつこい保険勧誘などがなくなったという印象を持っているが、実態は何も変わっていないらしい。とにかく働く職員が不憫で気持ちが落ち込む一冊だった。(「ブラック郵便局」 宮崎拓朗、新潮社)