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ツナグ 辻村深月

少し前に読んで面白かった「凍りのクジラ」の著者による最新刊。「凍り‥」を読んだ時に感じた静謐な文章が本書でも冴えている。死者との一度だけの面会をアレンジする能力を持った「ツナグ」と呼ばれる主人公がいて、彼に死者との面会を依頼する人々の話を綴った短編集だ。面会を依頼する際にはいろいろなルールがある。そのルールは、ややご都合主義ではあるものの、この連作全体の面白さの根源となっている。連作の最後の短編では、その主人公自身の物語と、それまでの短編の依頼者の話が一つに繋がる。この部分、そんなに辻褄を合わせなくても良いのにと思うが、それがまたこの小説の面白さになっているのも確かだ。一見すると欠点のようにみえる部分が面白さでもあるという不思議な本だ。(「ツナグ」 辻村深月、新潮社)
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