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バナナの丸かじり 東海林さだお

ネットで本を購入する時は6〜7冊くらいまとめて注文するのだが、その中に「丸かじりシリーズ」があると必ずそれを真っ先に読み始めることに気づいた。サクサク読めるし、当たり外れなく楽しめることが分かっているからだ。今回もいくつも面白い話があって、例えば「おもちすーぷ」というお雑煮のカップ食品を発見した時の話、「芋っている」という言葉を考案した話などが特に秀逸。「ひなあられを期間限定カラフルあられと改名して一年中売り出してはどうか」とか「大阪のおばちゃんは飴ってる」等、意表を突いた展開に唸ってしまった。本書ではそれ以外にも「ヌーハラ」「ポテチ」の話など、言葉に関する考察で面白いものが多かった気がした。(「バナナの丸かじり」 東海林さだお、文春文庫)
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宇宙の奇跡を科学する 本間希樹

宇宙科学の入門書。著者は宇宙科学の大きな謎の1つであるブラックホールを観測研究する第一線の科学者で、数年前に史上初のブラックホールの電磁波撮影に成功した国際研究グループのメンバーとのこと。著者の写真が帯に印刷されているが、何となくその時のTVニュースか何かで顔を見たことがあるような気もする。宇宙科学の研究者には観測主体の学者と理論研究の学者の2種類がいるとのことだが、著者は典型的な前者の学者。本の前半はこれまでに本やオンラインで学んだ宇宙創生に関する基礎的な解説で他の研究者の解説と内容はほぼ同じ。後半は自分の研究分野のブラックホールの話が中心で、ブラックホールについて何がわかっていて何がわかっていないかが非常にわかりやすく書かれている。また観測主体の学者ということで電磁波による観測の仕方も丁寧に書かれていて、こちらの認識もだいぶ深まった気がする。それぞれの銀河の中心に巨大なブラックホールがありそうという話は、全く解明されていない宇宙創世の瞬間にブラックホールが何らかの関与をしていると思わせるものがあり、素人にもとても興味深かった。(「宇宙の奇跡を科学する」 本間希樹、扶桑社新書)
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オンライン漫談 月刊ワンコイデ(10)

今日のテーマは「酒の肴」。営業のために全国を飛び回っていて、その上鉄道ファンなので、汽車に乗っている時間が長い彼ならではのテーマで、主に汽車の中で缶チューハイを飲みながら楽しめる「酒の肴」を色々紹介するというマッタリとした内容。駅のキオスクで売っているツマミの中のおススメ品、ちょっとした工夫で美味しさが増すテクニック、食べる時の注意点などで、今回もあっという間の30分。オススメの品は、ホタテ貝柱、つぶ貝、鮭とばなど大半が海の幸。駅で売っているホタテ貝柱は固そうなので買ったことがなかったが、聞いていて食べてみたくなった。
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お皿の上の生物学 小倉明彦

最近、読書傾向が数学、天文学、鳥類学などやや理系づいてきた流れもあり、生物学の本を物色していて面白そうな本を見つけたので読んでみた。大阪大学の先生による新入学一年生向け「5月病予防の楽しい授業」の講義録を中心にまとめた一冊とのことだが、これがものすごく面白い。ものの味覚、食材の色、料理の香り、盛り付けの食器、宴会料理などについて、ユーモアを交えて、それを物理学的、生物学的、化学的に考察し、色々な知見を与えてくれる。大学の講義らしく、時々「宿題」も出て、とにかく色々考えさせられることばかり。面白かった話は枚挙にいとまがないが、電気を持つ生物の生存戦略とは何か、何故味覚は甘い塩辛い酸っぱい苦い旨いの5種類なのか、刺身包丁の力学的利点とは何か、何故卵にはコレステロールが多いのか、といった話が印象深かった。また、ボーンチャイナの謂れとか、日本の季節料理やイベント料理の蘊蓄など知らないことも多く、知識を得たり、目の前の事物について色々考えてみることの楽しさを改めて思い起こしてくれる内容だった。(「お皿の上の生物学」 小倉明彦、角川ソフィア文庫)
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オンライン講義 宇宙論14

今回のテーマは「物理学者がみる宇宙」ということで、講義形式の新しい知識の披露や習得ではなく、質疑応答をしながら物理学者の関心事や思考パターンを汲み取っていくことに主眼をおいた内容。物理学者になったということはそもそも物理学者になりたいという似通った意思があったはずだし、1つの学問を勉強しているうちに自ずとその学問独特の考え方やものの見方が備わっていくはずで、そこに何らかの似たような性向が生じるのは当然といえば当然。問題はそれをそのグループの構成員が自覚しているかどうか、一般の感覚から極端にずれてしまっていないかどうかだが、今回の話を聞く限りはその辺りのグループとしての特殊性をちゃんと特殊性として自覚しているようだし、グループ構成員が危惧するほどには一般感覚からずれていないことも確認できた気がする。こうした事実は、学ぶ側の人間にとって、教える側との認識の共有や意思疎通が可能という意味で意義のあることだ。色々面白い話が聞けたが、特に面白かったのは、物理学者同士で「炎」について雑談したというエピソード。「炎」については解明されていないことが多いのだそうだが、生物の定義を「子孫を残す」「外部と内部の境界がある」「代謝がある」「酸素が必要」とすると「炎は生物」という結論になるという話で盛り上がったとのこと。奇抜さやオリジナリティを好み、論理を組み立てる明晰さをアピールする、子どものような無邪気さを持ち続けているというと褒めすぎかもしれないが、物理学者の性向がよくわかるエピソードだった。
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オンライン落語 三遊亭好青年独演会

スウェーデン出身落語家の独演会。知り合いのタイからの留学生が大学の落研に入り、1年間練習したという落語を聴かせてもらったことがあるが、独特の雰囲気を出していてとても面白かった。今回の落語会はスウェーデン出身の落語家ということで、どのような話が聞けるのか期待して視聴してみた。演目は古典落語を3席。日本語になったりスウェーデン語になったりで楽しかったが、演じる方はさぞかし大変だろうなぁと思った。全編を通じて演者の落語への愛と熱意を感じる内容。今度は古典落語ではなく創作落語を聴いてみたい。
①「ちはやふる」(日本語)
②「元犬」(スウェーデン語)
③「 夢の酒」(日本語)
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オンライン講義 天文学入門11

今回のテーマは「系外惑星」。惑星自体は恒星の付属品のようなもので光を発しない地味な存在だが、「宇宙と生命」という問題を考える場合には、俄然色々解明しなくてはならない重要な存在となる。今日に講義では、どのような方法で光を発しない系外惑星の発見や細かな観測が行われてきたかという歴史的経緯、現時点で見つかっている系外惑星の質量、公転周期、恒星からの距離の分布などを学び、さらにそうした系外惑星の発見や観測が太陽系惑星形成モデルに与えたインパクト(修正?)が示唆された。次回はその辺りの話になりそうなので楽しみだ。
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新謎解きはディナーのあとで 東川篤哉

人気シリーズの久しぶりの新刊。主人公を慇懃無礼な皮肉でおちょくる執事、迷推理で捜査を混乱させる上司に加えて、本作から厄介な部下の新人刑事が加わり、一生懸命捜査にあたる主人公のストレスがこれまで以上になってしまっていて笑える。謎解きの方は単純なので、まあ推理を楽しむよりも周囲のドタバタにめげずに頑張る主人公の奮戦ぶりを楽しむ一冊という感じが今まで以上に濃厚。とにかく気楽に読めるシリーズなので、シリーズ再開となってこれからも新作を読めるのであれば、読書の楽しみが増えて有り難い。(「新謎解きはディナーのあとで」 東川篤哉、小学館)
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ザリガニの鳴くところ ディーリアオーエンズ

今年の本屋大賞の翻訳部門第1位の作品。既に色々な賞を総なめにしていて、いつか読もうと思っていたが、ようやくネットで購入できたので読んでみた。色々な賞を受賞したということで、読む前から期待のハードルは高い。読後の感想としては、この小説は、殺人事件の犯人は誰かというミステリー、アメリカにいまだに残る闇を描いた社会小説、主人公の一生を描いた成長物語、アメリカの自然とその摂理が散りばめられた自然文学など実に多様な顔を持っているということだ。アメリカで大ベストセラーになったとのことだが、色々な読まれ方をしたのだろうと想像される。最後に明かされるある「詩」にまつわるサプライズが印象的だった。(「ザリガニの鳴くところ」 ディーリア・オーエンズ、早川書房)
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オンライン講義 宇宙論13

今回のテーマは「重力と宇宙」。重力とは質量や熱エネルギーが存在するところに生じる弱い力であること、重力がなければこの宇宙は永遠に水素とヘリウムの霧がたちこめるだけの空間だっただろうということなどをこれまで学んできたが、今回はその重力についてこれから解明しなければならない問題という観点からの解説。現在の重力法則によれば、物質が宇宙を満たしているという現実とアインシュタインの一般相対性理論から「特異点定理」(宇宙には端っこがある)という定理が導かれる。一方、様々な観測から導かれる「過去にインフレーションという現象があった」という仮説は、この特異点定理が成り立たない世界である。宇宙が物質で満たされているという厳然たる観測結果とこれまで積み上げてきて蓋然性が高いとされているインフレーション仮説の齟齬をどうやって解消するか、それが今の宇宙学のホットな課題とのことだ。重力法則が時間の経過で変化しているとか、色々なアプローチがあるらしい。今回の講義では、こうした最先端の研究成果の解説もためになったが、それ以上に、参加者と講師の質疑応答を通じて科学者特に宇宙論研究者の思考が色々わかって興味深かった。宇宙科学者は、科学者の中でも特に「世の中の偶然性というものを排除して背後にある必然性を見つけたい」「経験則をなんとか普遍的な法則にしたい」という気持ちが強いとのこと。確かに、一般的に科学というものはある時点で「経験則」と「普遍的法則」を同一視するという妥協を含んでいる気がするが、そこをなんとかしたいというのが宇宙科学の研究者の出発点のような気がした。
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オンライン講義 天文学入門(10)

月曜日夜恒例の天文学入門講義第10夜の今回のテーマは「太陽系の起源」。これまでの講義で宇宙に様々な元素が誕生してそれが宇宙空間に漂うようになりそれが重力によって星が形成されていったという道筋は理解済み。今回はそうした星の1つである太陽の周りに惑星群ができたプロセスの解説。18世紀くらいから色々な説が唱えられたり否定されたりを繰り返して、今の定説は「京都モデル」と呼ばれ、その提唱者が湯川秀樹博士の助手だった人とのこと。今回特に印象的だったのは、その定説とされる「京都モデル」でも天王星や海王星の成り立ちを完全に説明できていないというところ。両星の環境では両星が現在の大きさに成長するまでに46億年でも足りないという計算結果がある一方、生成の材料となる星間ガスは1億年で消失するという計算もあり、その矛盾の解消が天文物理学者の目標の1つになっているとのこと。どこまでいっても謎が続く天文学の面白さを感じた。次回のテーマは宇宙の生命と系外惑星ということで地球外生命の話になりそう。
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物理学者のすごい思考法 橋本幸士

宇宙論の講義を聴き続けていて分からないことが多いので、解説書を読んでみたがそれでもやっぱり分からない。自分の基礎知識の無さが露呈してしまったが、何かそれだけではなく、宇宙論の講師や著者と自分の間に思考方法の違いがあって、それが自分の理解の妨げになっているのではないかと思い立ち、読んでみたのが本書。結論から言うと、メチャクチャ面白いし、理論物理学を専攻している学者たちの奇人ぶりは十分に了解できたのだが、自分との思考のギャップは依然として謎のまま残ってしまった。それというのも、この本の著者はコテコテの大阪人で、関西人のノリと自分とのギャップの方が大きかったからだと思われる。本書の中で特に面白かったのは、冒頭で語られるエスカレーターの片側を空けて乗ることによる渋滞を香港がどうやって解消したかという「エスカレーター問題の解」、小学校1年で習う漢字と重力法則の意外な関係の話、アインシュタインや湯川秀樹博士が使用した黒板の話など。当初の目的は達せられなかったが、それ以上に収穫があった気がする。(「物理学者のすごい思考法」 橋本幸士、インターナショナル新書)
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オンライン講義 野生動物リハビリテーター

アメリカのオレゴン州で色々な事情で保護することになった野生動物を自然に戻す仕事(野生動物リハビリテーター)をしている方の講義。そうした仕事があることすらこの講義を申し込むまで知らなかった全くの門外漢だが、とても興味深い話が聞けた。受け入れられる動物が法律で厳密に決められていること(基本的に外来種はダメ、コロナに罹患する恐れのある動物もダメ)、日米の野生動物に対する認識の違い(野生動物リハビリテーションのことも比較的よく認知されている)、どのような教育プログラムを実践しているかなど、全てが初めて聞く話ばかりで面白かった。事前に送っておいた質問にも答えてもらって有り難かった。特に印象的だったのは、野生の動物の治療などで接触する際、人間の関与を悟られないように完全に無言、顔を見られないようにマスク着用、時にはその動物のお面を被って治療することもあるというお話。動物との関わりでは野生の動物と愛玩用の動物の違いを正しく認識することが重要だと感じた。
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オンライン講義 ミャンマー情勢

日本在住のミャンマー人による最新ミャンマー情勢の報告と意見交換会。テレビ情報によれば、国軍と対立する民主化勢力が地方の少数民族独立運動派と手を組む動きがみられるとのことで、その辺りの正しい情報を知りたくて参加してみた。会合前半はグループに分かれて日本在住のミャンマーの方への質問コーナー。今回のクーデターに対する仏教界のスタンスや大学の状況についてホットな情報が聞けた。後半はミャンマーの人がアウンサンスーチーさんをどう見ているかという話で、ロヒンギャ問題への彼女の対応などを質問してみたが、とても真摯に答えてもらえた。但し、グループ討議の時間が短すぎて、少数民族独立運動と民主化運動との連動などに関する質問や意見交換が全くできなかったのが残念。まだまだ聞きたいことも多いので次の機会があればと思う。
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オンライン講義 宇宙論⑤

今回の宇宙論は、これまでの講義で概要説明にとどまった「地平線問題」について深掘りする内容。これまでこの講義で宇宙創生の流れを聴いてきて、この部分は感覚的にしか理解できていない感じだったので、聞く方にとってはとても有難いテーマ。「地平線問題」とは、観測された宇宙マイクロ波背景放射が10のマイナス5条のレベルで均一という観測結果が学者を悩ませた問題で、それを説明する回答として蓋然性の高い回答が「インフレーション」ということになる。自分自身の理解は、2つの地点が同じ値なのだからそこに何らかの因果関係があったはずという程度のものだったが、講義ではこれを縦軸を時間、横軸を場所とする「時空図」という手法を使って明確に解説。この「時空図」という手法は宇宙論を学ぶ学生にとっては基礎知識とのことで、確かに今までの説明の中では格段に明快で分かりやすかった。言い換えるならば「地平線問題」とは、観測結果で明らかになったCMBの放射面から逆算する「粒子地平線」が計算上の全天をカバーしていないため、それだけでは全天のCMBが均一であることを説明できない矛盾ということになる。但し話はそこで終わらず、地平線問題解決のためにインフレーションを想定するのは良いとして、インフレーションの真空エネルギーを全て熱エネルギーに転換させないとインフレーションが終わらず物質も残らないはずだが、少しでも真空エネルギーが残るとまたインフレーションが起こってしまうという新たな問題が発生するという。ヒックス粒子の発見などによってインフレーションの証拠はどんどん確たるものになってきているのに、何故起きたのか、どう終わったのかは依然謎のまま。今の物理法則が何かを見落としているのではないかというモヤモヤ感が近年の物理学者の研究モチベーションなのだそうだ。その候補の1つが「重力法則」の再検討。講師の先生の関心もそこにあるとのことで、次回のテーマは「重力と宇宙」。
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