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夏光 乾ルカ

「女乙一」と言われる作家は何人かいるようだが、本書の著者もそのうちの1人だったような気がする。その著者の6つの短編が収録されている。前半の3作品が第1部、後半の3作品が第2部とされているが、この前半と後半で作品の趣ががらりと変わり、まるで別人の作品のような構成になっている。前半の3作品は、時代設定がかなり古く、内容も懐古的・叙情的な雰囲気なのに対して、後半では、時代は現在、不気味さが前面に押し出された作品が並んでいる。前半のような作品ばかりでは飽きるし、同様な作品を書く作者は何人もいる。逆に後半のような作品ばかりでは辟易だ。その辺がちょうど良いバランスで、飽きずに最後まで読めたような気がする。こうした話を書く作家はかなり多いので、著者としてこの作品のようなものばかりではすぐに飽きられるだろう。このあとどういうところへ向かっていくのかが楽しみな気がする。(「夏光」 乾ルカ、文春文庫)

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