近くの本屋さんで見つけた一冊だが、これが大変面白かった。Y字路について語った本があること自体何だか不思議な感じだし、本書の最初に「Y字路は好きですか?」と書かれていてどう答えて良いか戸惑うばかりだが、読み進めていくと何だか好きになってきている自分がいるように思えてきてしまった。また読んでいて、Y字路マニアが著者以外にも結構沢山いるらしいことが分かってきてびっくりした。本書の内容は、Y字路の定義と分類の説明があった後、Y字路の見た目の多様さ、Y字路が生まれた歴史的背景の考察などが200枚近い写真と地図によって解説される。特にY字路が多いところとして、京都の吉田地区(京大キャンパス付近)、東京渋谷駅周辺、宮崎県宮崎県庁周辺、これら3か所の事情が詳しく書かれている。宮崎県の県庁は日本でも珍しく全く何もないところを開拓して県庁が建てられたという事情があったとのこと。「わい、ジロー」という自己紹介で登場するジローという猫が写真や地図にコメントする一言が面白いし、「Y字路が生まれる時」と題された広い参道や雪道にできたY字型の轍の写真も秀逸。楽しさ満載の一冊だった。(「Y字路はなぜ生まれるのか」 重永瞬、晶文社)
(Y字路の定義) 鋭角、三叉路、アイストップあり
(考察方法)
路上の目:角地のオブジェ(ポスト,標識,祠,木,看板,自販機など)に注目
地図の目:地図からY字路が生まれた背景を考察
表象の目:Y字路のイメージ(分岐点,別れ,合流,単なるフォルムなど)
(分類)
地形トレース型:川などに沿って分岐
土木構築物トレース型:鉄道などに沿って分岐
勾配緩和型:斜角を緩くするための斜めの道
旧道切断型:網目+斜めの旧道
アプローチ型:参道,バス停,目的地への最短ルート