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ある日、あひるバス 山本幸久

本書の解説で「お仕事小説」というジャンルがあるのを知った。新人から中堅に成長しつつあるバスガイドさんを描いた小説だが、本書を読むと、何となく「お仕事小説」というのがどんなものかが判るような気がする。それは、組織や社会との対峙という感じの「サラリーマン小説」や「企業もの」とは明らかに違うもので、主人公が日々の仕事に悪戦苦闘する姿を描きながら、小さなミステリーあり、笑えるようなエピソードあり、恋愛あり、その職業に対する薀蓄あり、というところだろう。読者は、主人公の失敗や武勇伝を自分になぞらえて、応援したり、感情移入したりできる。本書では、これらの全ての要素が非常に上手くいっている。あまり大げさな評価はしたくないが、本書は読んでいて本当に楽しい「お仕事小説」の傑作だと思う。(「ある日、あひるバス」 山本幸久、実業之日本社文庫)
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