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平成大家族 中島京子

様々な事情から突然4世代が同居することになってしまった家族の物語なのだが、よくあるほのぼのとした物語とは対極にある、かなり悲惨な物語だ。長男の引きこもり、認知症のおばあさん、リストラによる娘婿の失職、学校での孫のいじめ、次女の離婚と、ひとつひとつはそれほど珍しい事件ではないのだろうが、それがほぼ同時にひとつの家族に降りかかると、大変なことになる。ただ、それでも当事者は、それほど悲壮な感じでもない。急に増えた家族の部屋割りで、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。そんなことをしている場合かと思うが、良く考えると、そうしたことの方が当面は問題だというのも判らないではない。最後の3ページにある仕掛けが施されていて、最後の1行でそれが判るのだが、それが何とも可笑しい。(「平成大家族」 中島京子、集英社文庫)
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