『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想243  黎明に起つ

2018-09-16 08:57:23 | 小説(日本)

 復興天守小田原城

読書感想243  黎明に起つ

著者      伊東潤

生年      1960年

出身地     神奈川県横浜市

出版年     2017年 

出版社     (株)講談社

☆☆感想☆☆

北条早雲のことを描いた小説である。少年時代から,関東に下り相模の国を獲得するまである。ここでは北条早雲とは名乗らず、伊勢新九郎盛時、のちに主筋にあたる堀越公方の足利茶々丸を攻め滅ぼしたことから、出家し僧形の早雲庵宗瑞と名乗る。この小説では、北条早雲の最新の研究成果を踏まえて、新しい宗瑞像、つまり早雲像を作りだそうとしている。史実で明らかになったことは、北条氏は2代目の氏綱から北条氏を名乗っていること。早雲は北条ではなく、伊勢だったこと。伊勢宗瑞の出身が、素浪人ではなく、足利幕府の政所頭人の伊勢氏の一族で備中伊勢氏であること。伊豆にいた堀越公方の足利茶々丸を攻めたのは足利幕府の管領細川政元や将軍足利義澄と連携した作戦だったこと。また享年は64歳で通説の88歳ではないこと。今ではこれが定説になっている。

この小説の中では下克上がすさまじい。応仁の乱で子供時代に実兄と一騎打ちになり殺してしまうことから始まる。そして関東に下ってからは連携していた細川政元や足利義澄が目先の利害のために伊勢宗瑞を裏切ったことから、生き残るために宗瑞も彼らと袂をわかって自立していく。裏切りのない関係は宗瑞が当主の座につかせた甥の竜王丸が率いる今川家とだけ。関東の情勢は目まぐるしい敵と味方の合従連衡で、戦につぐ戦の日々。合戦の地名もたくさん出てくる。津久井とか椚田とか。現在でも残っている地名もあるが、いまでは消えてしまった地名も多い。地理的に理解するためにも、現代の地名を(  )の中にでも付け加えてもらえればわかりやすかっただろう。伊勢宗瑞が編み出した新しい戦術や治国の方針は面白いが、重要でない(?)戦いの詳細とか一騎打ちは省略したほうが読みやすくなるのではないか。相模の国や武蔵の国には北条氏ゆかりの土地やものが残っている。そうした歴史散歩のお供になる本でもある。


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